75話 嵐の中の決戦 4
(語り手:ブースター)
「…………?」
「あ、起きたみたいよ」
「よお、ソウタ。気分はどうだ?」
俺はソウタの前に座る。その隣にグレイシアが座った。
「頭痛が酷い……ってかなんで俺は船に乗ってるんだよ」
「お前、操られてたんだよ。アイツに」
俺はダークルギアを指差した。
「え……復活したのか!?」
急にソウタが慌て始める。
「どうした?そんなにまずいか?」
「アイツが復活したら……世界は崩壊する……!」
「それを止めるために私達が戦ってんじゃない」
「行け」
俺はソウタに命令口調で言った。
「ど、どこに?」
「この船の後ろにもう一隻船がある。そこにイーブイとかがいるから」
「お前らはどうするんだよ!?」
「俺達は残って戦う。少しでもダメージを与えられりゃ、イーブイ達が楽になるからな」
「行くわよ、ブースター」
「ああ。……ソウタ、後3秒であっちに行かなかったら殺す」
「……解った。絶対に死ぬなよ」
「解ってる」
ソウタは踵を返し、海上を走り抜け、イーブイ達の待つ船へ向かった。
「兄貴!加勢に来たぜ!」
しかし、待ち受けていたのは悲惨な状況だった。兄貴と姉貴は甲板に横たわりピクリとも動かない。
「……兄貴」
「そこの黄色の奴はまあまあ強かったぞ。そっちの雌は弱かったがな」
ダークルギアが翼に付着した血を舐めとった。
「さて……我はそろそろ貴様らには飽き飽きしてきた。ここはソウタに任せ……ソウタ?ソウタはどこだ!」
ダークルギアは辺りをキョロキョロ見回す。
「残念だったな……ソウタはもう元に戻ったぜ」
「ばかな!我の操りは完璧なはずだ!」
「本当よ。今頃最後の船で待ってるわ」
グレイシアがざまみろ、という感じで鼻を鳴らした。
「これでは……これではサタンの計画に支障をきたしてしまう!貴様らには死んでもらうぞ!《エアロブラスト・絶》!」
「うわあああああ!!」
黒い旋風によって俺らの体は宙に浮き、ダークルギアの追撃によって空高く打ち上げられた。この高さから落ちたら良くて全身骨折、最悪、死ぬだろう。
「グレイシア!」
せめてグレイシアだけでも守ろうと思い、俺は手を伸ばし、グレイシアを掴む。一気に引き寄せ、がっしり抱え込む。そして、俺は背中から海にダイブした。
そこで俺の意識は途絶えた。
―船 3隻目―
(語り手:イーブイ)
「ん?何か……白いのがこっちに走ってきてる」
「竜巻じゃない?」
ルカリオが俺の隣に立った。
「いや、違う……あ、あれはソウタだ!」
「何!?ソウタだと!?」
ジャックが慌てて駆け寄ってくる。
「全員戦闘準備!」
ジャックが声を張り上げる。数秒も経たないうちにブニヤット、ジャノビー、エルが駆けつけた。
「な、何!?ダークルギアが来たの?」
「違う。ソウタだ」
エルの質問にジャックが答えた。
「しょうがない、やることは1つだ。解ってるね!」
「後5秒!4、3、2、1……来た!」
皆が皆、自分の持つ最強の技をソウタめがけて撃った。だが、見事な回避によってすべて外した。
「待て!俺はお前らと争うつもりはない!」
「どうせ嘘だろ。俺達を騙そうとしてるな!」
ジャノビーがリーフブレードを構えながら叫んだ。するとソウタは意外な行動をとった。
手を上に上げ、降参のポーズをした。
「これで分かったろ?俺は味方だ」
「僕は信じるよ」
ルカリオが前に出てソウタの隣に移動した。
「ルカリオが行くなら僕もだ」
エルもソウタの横についた。
「じゃ、俺も」
「イーブイ!お前まで……」
「いいか、ジャノビー。今は少しでも戦力が居た方が良いだろ?」
「確かにね……」
「だな」
ブニヤットとジャックがこっち側にきた。残るはジャノビーだけだ。
「っ……。解ったよ。信じりゃいいんだろ!?ただし、変な行動してみろ。その首を切り落としてやる」
ジャノビーがソウタを脅すように睨んだ。
「ああ。解ってる」
ソウタは口元に微かな笑みを浮かべた。
「よし、とっとと準備するぞ!」
俺が皆を励まし、最後の戦いへの準備が始まった。