70話 逮捕完了!
「君ん家はどこ?」
ヒートことバシャーモに尋ねられ、おぼつかない口調で答えた。
「デカイけーさつひょの前を真っしゅぐ」
「ああ、わかった」
バシャーモは走りだした。一刻も早く警察署の前を通り過ぎたいような雰囲気を漂わせながら。すると、警察署の入り口から3つの影が飛び出してきた。
「御用改め警察じゃあ!!」
アリシアが冷凍ビームを放ち、バシャーモの前に降り立った。続けてクロ、エルと二匹も着地してバシャーモと対峙する。
「誰……ですか?」
誰だかわからないとい言うかのようにバシャーモはすっとぼけた。が、バシャーモの胸にくっついている俺のみ耳には心拍数が上昇しているのが感じ取れる。
「惚けとも無駄よ。自分が何をしたか覚えているくせに」
アリシアがバシャーモを睨む。
「何?少女誘拐?」
「時空犯罪を行った。過去に行き、ダークマターを復活させて世界の破壊を目論んだ罪で逮捕要請がきてる」
クロが夕方の怠さを一切見せずに答えた。
「ふん……バレたか。いつから━━━がっはあ!」
俺は抱き抱えられるのにいい加減うざったくなったのでコイツの顎に蹴りをいれてやった。
「き、貴様!イーブイだな!?」
バシャーモは顎を押さえながら言った。
「ひょのとーりだ」
呂律が回らず上手く喋れない。
「ふふ、さては貴様酔ってるな?勝機と見た!」
バシャーモがブレイズキックで俺を焼き殺そうとしてくる。だが俺は急な眠気に襲われ、その場にペタンと座ってしまった。
「何ぃ!?」
バシャーモの足は俺の数センチ上を通り過ぎ、クロ達の近くに着地した。
「さあ、逮捕の時間だ」
エルがニヤリと笑うとクロとアリシアと共にバシャーモに飛びかかった。
「噛み砕く!」
クロの鋭い歯がバシャーモの肩に食い込む。
「ぎゃあああああ!!」
バシャーモの鮮血と叫び声が辺りに散った。追撃でアリシアの吹雪がバシャーモの顔を凍りつかせる。
「だあああああッ!!」
最後の一撃、エルの渾身の《シャイニングブロー》が奴の鳩尾に直撃した。
バシャーモはがくりと膝をつき、そのまま地面に倒れて気を失った。そして、アリシアに手錠をかけられる。
「やったねイーブイ」
エルがハイタッチを求めてくるが酒のせいでそんな気分にはなれず俺もバシャーモのようにその場に倒れ、眠ってしまった。
「……ハッ!夢……だったのか?」
俺は確認すべく首を振って周りを見る。そこには机が3つとソファーや床で寝ている3匹のポケモンがいた。
「夢じゃねえか……」
大きな欠伸をしつつ伸びをする。そして壁にかかっている時計を見た。
「8時か……寝よう……」
再び目を瞑り寝息をたてる。がすぐに誰かに体を揺すられた。
「起きてイーブイ。朝ご飯だよ」
声のトーンからしてエルだろう。
「アリシアとクロも起きてるの?」
「いや、ご飯作ってから起こす」
「頑張れ……俺はもっかい寝る……」
「あっそ、できたら呼ぶよ」
それから何分かはわからないが時間がたち再びエルに起こされた。目を擦りながら立ち上がりアリシア達とご飯を食べた。
「ふう……で?君は過去に……ああ、君にとっては現代だね。帰るのかい?」
「うん、37日後にさ、大事な戦いがあるんだけどさ。来てくれる?っていうか来い」
「戦い?」
アリシアがコーヒーを飲みながら聞き返した。
「ダークルギアとね。負けると……多分、世界が壊される」
そう俺が答えた瞬間ぷっ、とクロが吹き出した。
「何が可笑しいんだよ」
「いやあ、今こうして未来があるのに何を心配してるんだかってね」
「どういうことだ?」
「いいかい?イーブイの言うダークルギアに負けたら世界が崩壊するって話、あり得ないんだよ。というのもこの未来は君の過去から200年後の世界なんだ」
「つまり?」
「伝説のポケモンの寿命は1000年以上。だからたったの200年しかたってないから世界が壊れてたら今もそのダークルギアが世界を支配してるはずだ。で、結論としては世界は守られたのでしたー。はい拍手ー」
クロが自分自身に拍手を送った。
「確かにそうだな……だけど苦戦が強いられるから力を貸してほしいんだ」
「私はいいわよ。メイクさせてもらったし」
アリシアが俺にウインクした。
「僕は元からメンバーだし戦わないわけにはいかないしね」
「━━しょうがない。僕も戦うよ」
クロがため息をついた。
「ありがとう!じゃあ37日後に家に来てね!頼んだよ!」
俺はエルと一緒に、アリシアに開けてもらった渦に飛び込みながら言った。