66話 知人が強いと嬉しい
「はあ…はあ…か、勝った…」
家の前で寝起き半ギレルカリオと戦い、勝利をおさめるまで実に30分はかかった。最後はルカリオの首に肘を叩きつけて気絶させたのだ。
「夏だけども風呂入らねえと風邪引くな」
ルカリオを引きずって俺は風呂場に来た。ルカリオにキンキンに冷えている冷水を浴びせて起こす。
「おはよ」
「やあ…おはよぅ」
ルカリオはきょとんとした顔で周りを見ている。
「どうした?」
「なんで僕は風呂にいるのかなあ…って」
「それは…そのー」
「はっきり言って!」
「朝に修行してたらルカリオが起きてきて怒って俺と戦って気絶させた…」
「ふぅん…」
鉄拳制裁来るか!と思ったが何も来なかった。
「記憶がないしいいや!せっかく風呂に居るんだから入っちゃお!ね!」
「あ、ああ…」
ルカリオってややこしいな…さっきあんなに期限悪かったのに、もう直ってるよ。
そして、風呂から上がると皆が起きていた。
「あれエルは?」
俺はキョロキョロと周囲を見回しながら皆に尋ねた。
「さあ…?」
エーフィ姉ちゃんが答えた。姉ちゃんが知らないのならば出掛けているのであろう。
「いいや。俺だけで済む用事だし」
傘を持って外に出ようとしたらミミロップに捕まり、抱き抱えられた。
「なんだよ」
「朝御飯食べたの?」
問われた瞬間、俺の腹が答えるようにぐぅ、と鳴った。
「腹で返事とは器用だねえ」
ロコンとアブソルがクスクス笑った。
「食べる?」
笑いを堪えているのが丸わかりのミミロップに聞かれる。
「食う」
朝食をちゃっちゃと終わらせ、再び傘を持って外に出た。
「なんで着いてきた?」
「僕だって散歩したいさ」
俺の後ろにくっつくようにツタージャが歩いている。
「それと、どこ行くのかも知りたいしね」
「ふむ…じゃあヒント。お前が喜ぶ場所」
「僕が喜ぶ場所…?他にヒントは?」
「ヒントはこれだけ。後は着くまで我慢か、答えを導きだすかの2択だぜ」
「意地悪…」
そうは言ったものの真剣に考え込んでいる。はぐれないように俺の尻尾に蔓を巻き付けながら。
それから約1時間。歩き続ける間ツタージャは一言も…いや、俺に話しかけず一匹でぶつぶつ呟いていた。
「うしっ、やっと着いたな」
二階建ての家の前に立ち、インターホンを鳴らす。数秒後、ドアが開き中に招き入れられた。
「イーブイ君久しぶりですね」
「先生こそ。相変わらずお元気そうで…なーんてな。皆来てる?」
「もちろん。昨日の夜から集まってるよ」
「母…さん?」
ツタージャが首を傾げた。
「久しぶりね。あら、少し大きくなったんじゃない?」
俺はツタージャに小さくウィンクした。ツタージャは俺を見て微笑んだ。
親子愛を壊さぬよう、俺はチラチーノ、マニューラ、ジャノビーの待つ奥の部屋に進んだ。
「うーっす」
適当に挨拶して全員の顔を見る。懐かしいなぁ…としみじみ思いながら話しを始める。
「急な呼び掛けに集まってくれてありがとう。で、ここからが本題なんだ…」
マニューラがゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
「俺達と一緒に戦ってもらいたい」
「どういうことだ?」
ジャノビーが真剣な顔つきで俺を見た。その顔はどことなくツタージャに似ていた。
「ダークルギアっていう奴が甦ったんだ。ソイツをまた封印かはわかんないけど倒すために力を貸してほしいんだ」
「よっしゃ!そういうことなら任しときい!」
チラチーノが勢いよく立ち上がった。
「それで?いつが戦いの日なのよ」
ジャローダがドアの向こうから言った。
「39日後だ。その日のためにちゃんと訓練しとけよな」
「おう!」
ジャノビーがヤル気満々に言った。
「んじゃ、またなー」
別れを告げて玄関に来る、そこではまだツタージャとジャローダは戯れていた。
「あー。俺、帰るから。ツタージャも帰るぞ」
「ヤダー!まだ居たいのー!」
駄々をこねるツタージャを見て俺はため息を着いた。
「いいわよ、イーブイ。39日後に家に行くから」
「わかった。ツタージャ、迷惑かけるなよ」
「はーい」
「じゃあな〜」
俺は傘をさして自分の家を目指して歩き出した。
そして、いざ家に着いたがエルはまだ帰ってきてないようだった。
そのうち帰ってくるだろ、と呑気に考えた。