64話 彼が操られるまで
―強者の道―
「よお…久しぶりだな」
俺はちゃんと挨拶したが相手側は会っていきなり破壊光線を撃ってきた。
「い、いきなり!?」
気絶している6匹を投げ捨ててアイアンテールで弾き返そうと頑張る。しかし、力及ばず吹き飛ばされて壁にぶつかった。
「ぐあ!!」
俺が壁にぶつかった衝撃で周囲にもくもくと砂埃が巻き上がる。
「《シフトチェンジ》!」
指をパチン、と鳴らして真ん中にいるレジスチルと入れ替わった。右にレジロック、左にレジアイスがいる。普通のポケモンなら驚いた表情をするのだろうが、この二匹はわからない。
「喰らえ!」
アイアンテールを横に凪ぐ。尻尾は二匹の腹に当たり、巨大な凹みを作る。そして、ズズーンと倒れた。
「さて、後はお前だけだ」
レジスチルを睨み付け、突進する。
「《登竜門》!」
ギガトンパンチと見せかけて、竜の波導のこもった拳を地面に叩きつけた。青色の波導がレジスチルに当たる。一撃では終わらず、何度も追撃する。
「波導弾!」
波導系の技二発でレジスチルは崩れ落ちた。
「おしっ、先に進めるな」
もう一度6匹を担ぎ、現れた階段を登った。
―神々の山―
「よー。ミュウツー」
「やあ…外は凄い雨だな」
「アグノム達居る?」
「いつもの所に居ると思う」
「サンキュ」
山の住人達に敵意はなく、逆に友好的だった。登りながら挨拶してアグノム達の居る部屋にやって来た。
「お、イーブイじゃないか!元気だったかい?」
エムリットが笑いながら寄ってきた。
「なんの用?」
ユクシーもふわふわ寄ってきた。
「こいつらの面倒を見てほしいんだ。今は…気絶してるけどさ…」
「うん!任せてよ!僕達はプロだから!」
アグノム言った。
っていうかなんのプロだよ?
「まあ、よろしくな」
俺は手を振って3匹に別れを告げて来た道を戻っていった。
「や、ディアルガ」
「私に何か用かな?」
「うん、まあね。ところで…パルキアは?」
ディアルガは少し考えた後、「知らん」と答えた。
「で…用件は過去の事を見せてほしいんだ」
「過去の事?」
「ああ、ソウタっていう元ニンゲンがいるんだけどさ。そいつが操られてるんだよ」
「で、私に操られるまでを見せてくれと」
「そゆこと」
「よかろう。では、過去を見に行こうか」
ディアルガの力によって俺の体が浮き上がり不思議な光景が見えてきた。
「あ、ソウタだ」
まず一番最初に確認できたのは走っているソウタだった。だが、彼は地面ではなく海の上を走っている。
「どおりで船が無いわけだぜ」
俺は苦笑いをしながら続きを見る。
「なあディアルガ。こーやってソウタ眺めるのも良いけど操られる直前までスキップできる?」
「わかった」
ディアルガが答えた瞬間、俺の見ている光景は物凄い速さで流れて行く。そして、突然元の速度に戻った。
「夜か…ソウタが寝てるな」
本当に何にも無い島でソウタが寝ているのを発見した。しかし何かに魘されているように顔が苦痛に歪んでいた。
「恐らくここで操られたんだろうな」
俺が呟いた直後、ソウタがバッ、と起き上がった。しかしまたすぐに倒れた。
「なるほどね」
俺とディアルガは過去を見終わり現実へと戻ってきた。
「ありがとうディアルガ」
「帰るのなら家まで送っていこうか?」
「頼むわ」
数秒後、俺は家の前に突っ立ていた。
―家―
「ただいま」
「お帰り」
アブソルがタオルを投げてきた。それで体を拭けっていうことだろう。
「お兄ちゃん!私達参加してもいい?」
「イーブイ!ダメよね!」
リーフィア、ニンフィア、師匠がぐいぐい寄ってくる。
「何に参加すんだよ!?」
「ダークルギア戦に」
「えー…俺別に保護者じゃないしなんとも言えないんだが」
「なら私が権限を貰ってもいいかしら?」
師匠が俺を見下ろしながら聞いた。
「でもなあ…一応コイツらも戦力なんだよな」
「じゃあいいの?」
「知らん!師匠とじゃんけんで決めりゃあいいだろ!」
「いいわよ」
リーフィアと師匠が睨み合いじゃんけんが始まった。
「━━ポん!」
リーフィア:パー
師匠:グー
「っしゃあ!!」
少女に似つかわしくない喜び方をする二匹を俺は眺めていた。すると、師匠に頭をがっしり掴まれて強く握られた。
「いだだだだだだだだ!!!」
「なんで私は負けたの?」
「知らんわ!!師匠が負けたのを俺のせいにするなよ!」
「…そうね…理不尽な暴力はよくないわね」
師匠は俺を離して言った。
「そうそう、よくわかり━━」
「でも、弟子へのお仕置きならいいでしょ!」
その後、俺は尻が腫れ上がるほど叩かれた。