63話 40日後への準備
―ツヨイネの船―
「くそ…40日経つまで島には入れないのか…」
ツヨイネ、ジャック、ブニャットは輝く島から離れそれぞれの基地やら家に向かっていた。ダークルギアが出現してから相変わらずの雷雨だったが気にせずに各チームのリーダーは話し合っていた。
「40日って言うと相当時間があるぜ」
ジャックが風に包み込まれた輝く島を見ながら言った。
「その間に何をするか、が重要になってくるな」
「例えば、強い知り合いを集めるとか」
ブニャットが俺の意見に答えをだした。するとジャックが自分の船に戻りながら言った。
「俺はここで別れる。40日後…お前ら必ず来いよ」
ジャックが初めて会った時のような残酷な目をして俺とブニャットを見た。
「解ってるわよ」
ブニャットが頷き、俺も頷いた。
「俺はこの近くの島に用があるんだ。じゃあな」
「バイバイ」
俺とブニャットはハイタッチをして別れを告げた。
「イーブイ…着いたよ」
ミミロップが俺を呼んだ。
「パチリス!」
俺は嵐にも負けないぐらいの大声で叫んだ。数秒後パチリスは俺の前に来ていた。
「何?」
「君は家に帰るんだ」
「なんで!?」
「今回の戦いは本当に危険なんだ!村長とも約束したし」
「でも!」
「後10分程度で島に着く。文句は受け付けない」
終いにはパチリスは泣き出した。島には俺の予想通り10分でついた。
「じゃあな…」
「うう…」
「また会いに来るから…さ」
パチリスに転移装置を渡して、家に帰した。
「うん…バイバイ」
パチリスは俺達が見えなくなるまで手を振っていた。
「この島になんか用でもあったのか?」
ブースター兄ちゃんが俺の隣に立った。
「パチリスを家に帰したんだ」
「へー…え?なんで?」
兄ちゃんは困惑した表情で尋ねてきた。
「ダークルギアと戦いながらアイツを守りきる自信がないんだ…だから…」
「そうか…」
「だけど転移装置渡しといたからいつでも一緒にゲームできるようになるぜ」
俺は兄ちゃんを慰めるように言った。
「そうだな…世界が平和になってからだな」
それから約30分後。
「皆ー!ポケ海岸に着いたよー!」
ミミロップが叫び、俺達はぞろぞろと船から降りた。
「そういやさあ、ミュウとかってどうなったの?」
「ちゃんといるよ」
エルの質問に答える代わりにツタージャとリーフィアは6匹の幻を地面に下ろした。
「で…コイツらはどうする?僕達の家に居させるか、それとも別の場所に連れてくか?」
ブラッキーが考え深げに言った。
「俺が神々の山に連れてく」
俺は6匹を無理矢理担いで歩きだした。しかし、俺はエルに呼び止められ振り向いた。
「またあの3匹と戦うのかい?」
「そうなるだろうな。だけどなエル、俺は去年よりも強くなったんだ。大丈夫さ。じゃあ、皆は先に帰っててよ」
全員にしばしの別れを告げ、絶望岬へと向かった。早く着かないものかと考えていたらある英単語が記憶の底から浮かび上がってきた。
「《クイック》」
意味は確か、早いだったかな…
まあ、何はともあれこの新技のおかげでいつもより早く着いた。通常1時間程度のところ、なんと25分で着いたのだ。
「そういえば呪文というか合言葉みたいなのがあったな…えーっとぉ…」
顎に手を添え、考え込むこと数分。突然俺の頭の中の電球に光が灯った。
「砂糖は大好き!塩は普通、胡椒は大嫌い!」
ふざけた合言葉だが、ゴゴゴゴゴゴという時なりと共に地下に続く階段が現れた。
「さて…行きますか…」
よっこらせ、と再びマナフィ達を担ぎ階段を降りた。
―ブイズの家―
(語り手:三人称ver)
「あー…やっと帰ってきたぜ」
ダークルギアが降らせる豪雨に当たり続けたツヨイネのメンバー達は家に入る前にブースターロコンに乾かしてもらうことにした。
「イーブイは山に何しに行ったんだか」
アブソルが尋ねるように聞いた。
「うーん…ビクティニ達を背負ってたから預けに行ったんじゃない?」
クチートの意見に皆が納得した。
「私、今回の戦いにリーフィア、ニンフィア、ツタージャ、クチートを参加させたくないわ」
サーナイトが柄にもないことを口にした。
「なんで?」
「危ないから」
「クチート達ならわかるけど私達は歴としたメンバーよ」
「そうだよ!」
リーフィアの意見にニンフィアが便乗して騒がしくなる。
「なら!イーブイが帰ってきた時に決めてもらいましょ」
サーナイトの目は、ジャックと似たような目をしていた。ここで全員は、ああ…姉弟だったな…と思い出したのだった。