62話 暗く悲しい過去
「これは…我の過去の話だ。そう身構えるな。話してる間は攻撃したりせん」
そう言うと、ダークルギアが語り出した。
━━我はルギア家の長男として産まれた。我は産まれた時からこの真っ黒な体色だった。親はこの色を気に入らず、我を嫌っていた。
千年程経つと、ルギアが産まれた。真っ白な体色で可愛かった。しかし、両親は我をルギアに近づけなかった。「理由は?」と尋ねたら「お前の黒がこの子に感染しないためだよ」と答えた。まるで我は病気のような存在だった。
それから500年が経つとルギアも喋れるようになった。その頃から我は家にはあまり帰らなくなり家から離れた深く、暗い海底で寝泊まりをしていた。ある日、ルギアが我を探しに来た。それが妹との初めての会話だった。
「初めまして。兄さん」
「こ、こちらこそ…」
我はしどろもどろになって話した。その日から毎晩毎晩ルギアは俺の寝床に来て一緒に過ごすようになった。ある時なんか俺の隣で寝たから朝早くに起こして家に帰らせた。しかし、ルギアの行動を疑い始めた両親はこっそりとルギアの後を追いかけた。そして、我と居るところを見られた。
「貴様ッ!ルギアをタブらかすな!」
「うるせえ!俺が呼んだんじゃねえ!ルギアが勝手に来たんだ!」
「ルギアも!こんな奴の所に来るんじゃありません!」
クズな母親に『こんな奴』と言われ我は頭に血が昇りカッとなって破壊光線を放った。光線は父親の首を消し飛ばし暗い海底を白く照らした。
「な、なんてことを!」
母親は恐怖に目を見開き震えている。
「エアスラッシュ」
波状の水圧が母親の首を切り落とした。
「兄さん…」
「俺を兄と呼ぶな…」
「で、でも!」
「お前も消されたいか!?」
ルギアは涙を目に溜めその場から立ち去った。
その後、我は神々の山に呼び出されアルセウスと話した。
「ふむ…お前の言い分はわかった…」
「だろ?」
「早急にルギアの跡継ぎを決めねば…」
「じゃあ…俺はこれで」
「ああ、達者でな」
我はアルセウスに別れを告げ再び寝床に帰り跡継ぎ発表を待っていた。しかし、俺の予想はハズレ、その座についたのはルギアだった。500歳のあいつが我を押し退けて。
我は猛烈に怒った。奴なら、アルセウスならわかってくれる信じていたのに!
我は神々の山の奴等に喧嘩を売った。それはそれは凄まじい戦いだった。大地は砕け、山は崩れ、村や町は火の海になった。
結局、我は数の差で負け、ここに封印された。
「これが我の過去だ」
「アンタの気持ちはよくわかったよ。だけど!関係ないポケモン達を巻き込むんじゃねえよ!」
「五月蝿い!我は2800年間待ち続けたんだ!復讐をしてもいいはずだ!いや、やる!」
なんか、幼児と話している気分になる。
「皆!好きに暴れろ!ソウタの奪還が最優先だぞ!」
『おう!!』
「《六道ノ幻影・人間道》!やっぱ人間には人間でしょ!」
ゾロアークの目が妖しく光る。するとソウタが急に倒れ、もがきだした。
「あ…!ぐあああ!…何…を…した」
ソウタは息も絶え絶えにゾロアークを睨んだ。
「これは人間道って言って身に覚えが無いダメージが襲いかかってくるのよ」
「早く…解け…あああ!」
「YADA☆《地獄道》!」
再びゾロアークの目が光ったが何も起こらない。
「ゾロアーク?」
ルカリオが心配そうに聞く。
「大きすぎる…」
「何が?」
「ダークルギアの罪が大きすぎて発動できない!」
「退いた退いた!捨て身タックル!」
ブニャットのタックルはダークルギアを狙ったが渦巻く風圧によって阻まれた。
「風で守るってずるい!どんどん蔓が切れてくよ!」
リーフィアは《草笛》で地面から蔓を伸ばしてダークルギアを拘束しようとするが風によって全て弾かれている。
「俺の《雷槍》も」
「私の《水弓》も届かないわ」
サンダース兄ちゃんとシャワーズ姉ちゃんの武器も雷雨の下により巨大になっているがそれでも効かないようだ。水が効かないならブースター兄ちゃんの《火爪》なんて役にたたないだろう。
「エル…ダークルギアの風の中に《空間回廊》だせるか?」
近くで迎撃体勢をとっていたエルを呼び、質問した。
「できなくも無い気がするけど」
「じゃ、頼んだ」
エルに頼みを、俺はダークルギアに突っ込む準備をしていた。
「できたよイーブイ」
エルが顔を伝う雨を拭って言った。
「行ってくる」
空間回廊に飛び込むと、目の前にダークルギアの柔らかそうな脇腹が見えた。
「い……けッ!」
ギガトンパンチをダークルギアの腹に当てた。しかし、柔らかそうな見た目とは裏腹に筋肉質でものすごく堅かった。
「ふむ…我に一撃与える者が居たか」
「くっそおおおぉぉぉ!」
風圧で押し出され振り出しに戻される。
「40日だ」
「は?」
「40日後、またここに来い!」
ダークルギアが叫ぶと空気が渦巻き、俺達は海に落とされた。そして、奴の言う通り40日後まで島に入れなくなってしまった。