60話 輝く島に上陸
「暇だ!」
俺は船長室の椅子から立ち上がり甲板に出た。
「やあ、イーブイ。どこか行くのかい?」
ジラーチが前からふよふよ飛んできて聞いた。
「暇だからジャックの船に乗り込んでくる」
「行ってらー」
ジラーチが手を振って見送ってくれた。
―ジャックの船―
「やふぃー、ジャックー」
返事はなくジャックは頭に張り付いてるエモンガを引き剥がそうと躍起になっている。
「離れろ!」
「やだよー。私は船長のお嫁さんになるんだからー」
エモンガはえへへと笑い顔を赤く染めた。
「ほー!ジャック結婚すんのか!オメー!」
「ちゃうわ!俺は一生!独身を貫くんだッ!」
渾身の力で引っ張るとようやく離れた。ジャックはエモンガを放り投げ俺にパスした。
「お、アンタ中々可愛いな。特にそのリボンがグッドだよ!」
エモンガは俺の顔を見るなり言った。
「はあ…どうも…」
「お姉ちゃんが立派な男の娘にしてあげるからおいで!」
「うわわわわ!!」
俺は無理矢理エモンガに引き摺られて行った。
(哀れイーブイ…)
ジャックは近くで俺を哀れむ目で見ていた。
「まずは目から綺麗にしてこーか」
エモンガは化粧道具を取りだし、どれにしようかと悩んでいる。こっそりとドアノブに手をかけすぐに外へ逃げる。
「ジャック!助けて!」
「断る!」
「し、師匠!へるぷみー!」
ジャックと俺はユキメノコの後ろに隠れる。
(読者の方々は覚えてないだろうがユキメノコはジャックの師匠なのだ!)
「全く…いい加減にしなさい」
「えー?やだー。いつか船長をダーリンって呼ぶのー!」
「良かったな。ダーリンだってよ。あはははは!!」
俺は腹を抱えて笑った。
「うるせえ!自分の船に帰りやがれ!」
ジャックに強く蹴られ俺は自分の船まで飛ばされた。運悪く、ロコンの背中に着地してしまった。
「あらイーブイ!会いたかったよー」
ギューっと抱き締められ息がしにくくなる。
「ちょ!ロコンギブ!」
「あっとごめんごめん」
締める力は緩まったがまだ少し苦しい。どうにかならないかと考えているとソウタがファイルを丸めて作った即席のメガホンで叫んだ。
「邪海神の碑石についたぞー!!」
「ロコン離れろ!早く行くぞ!」
「お姫様抱っこして」
「はあ…」
深ぁいため息をつき仕方がなく抱える。
「ルカリオ!宝玉4つある?」
近くにいたルカリオに聞くと、どうやら彼が持っていたようで数え始めた。
「うん、あるよ。ってかなんで君はロコンを抱っこしてんの?」
「まあ色々事情があってな」
「そう。でもいいなあ…ロコンを抱っこできて」
「するか?重いぞ?」
「重いって何よ!」
ロコンに肩をきつく噛まれた。
「いでででで!!」
「違うよ。僕はゾロアークを抱っこしたいなあってね」
「じゃあ頼めば?させてくれって」
ロコンが俺の肩から牙を抜きながら言った。肩は涎でベタベタになっている。
「……サイアクダ」
ロコンに聞こえないように呟く。
「うーん…ゾロアークに僕が変態だって思われなければいいんだけど…」
―邪海神の碑石―
「ちっこい島だな」
ペルシアンが言った。確かにその通りである。円形の島の中央にポツンと碑石が一つあるだけだ。
「宝玉は7つあるな?」
『ああ』
各団のリーダーはソウタに宝玉を渡した。
ソウタがしゃがんで宝玉を嵌めるのを見守る。一つ一つがカチッ、カチッ、と嵌まる音がする。全て嵌め終えると島全体が揺れだした。
「何が…起こってるんだい!?」
ブニャットが立つのがやっとだ、という表情をしながら叫んだ。
「安心しろ。これは輝く島が浮き上がってきてるからだ」
ソウタ一匹だけ、涼しい顔で遠くの海を眺めている。すると、目を疑うような光景が飛び込んできた。
海の神殿の時同様に海面が盛り上がり自然豊かな島が浮かび上がってきた。
『……………』
誰も一言も喋らない。
「いくぞ」
ソウタがささっ、と先に進んでいったので俺達も後を追う。
―輝く島―
「あ…看板だ。なんでこんなとこにあるんだか」
シャワーズ姉ちゃんが看板を見る。
「『ようこそ、死と絶望の渦巻く島え』見た感じすげーハッピーそうだぜ?」
サンダース兄ちゃんが看板の文章を読み上げて鼻で笑った。
「いいか?この奥に財宝がある。全員で分けるぞ」
ソウタを先頭に俺達は財宝を求めて歩きだした。