59話 宝玉争奪戦 その2
―純白の森 B2階―
「ちくしょー!なんであいつがいるんだい!?」
ジャックが現れた事によって私は怒っていた。
「宝玉の噂を聞いて来たんだろうな」
「うう…寒いなぁ…」
レパルダスが身を震わせて呟き、ペルシアンを見た。ペルシアンはそれに気づかず黙々と歩いている。
「寒いなぁ!」
レパルダスはペルシアンにタックルした。
「うお!なんだよ」
「寒いの」
「だな…」
「ちょっとは察しなさいよ!」
レパルダスがペルシアンの背中を引っ掻いた
「いてえ!わかんねえよ!はっきり言えや!」
ペルシアンはキレて大声で言う。私の怒りがふつふつと沸き上がってくる。五月蝿いったらありゃしない。
「寒いんだから温めてよ」レパルダスは顔を紅潮させて言った。
「なんだよ…そんなことならもっと先に言えよ。こんな時のためにコート持ってきたんだからな。あ、団長もいる?」
レパルダスに渡しながら、私に聞いてきた。
「一応貰っとくわ」
コートを着ると体が温かくなってきた。
「さあ、ジャックに負けないよう張り切って行こう!」
レパルダスはコートについているフードを被って言って。
それから私達は順調に進んだ。敵との遭遇は5回だけだった。そして、遂に宝玉の守護者の前に着いた。
「我はマンムー!白の宝玉のしゅぺらんか!!」
敵が喋ってる最中に私は《ワンダーステップ》を使い、巨大な腹で突き飛ばした。速度×威力で相当なダメージを負ったようだ。マンムーの足はぷるぷる震え、立っているのがやっとのような感じだ。
「ひ、卑怯だぞ!不意討ちだなんて!」
マンムーが叫ぶ。
「卑怯?私の辞書にそんな言葉はないわよ。さあ!レパルダス、ペルシアン!殺っちゃいなさい!」
「《コントロール・アイ》!」
レパルダスの目が赤く光マンムーと視線を合わせる。
「ぐ!か、体が…動かん!」
「私と目が合ったら5分間動けなくなるのよ。更にアンタの考えも読めるのよ!えーっと…『彼女欲しい』」
「ふんだ!我は一生非リアだ!ほっといてくれ!」
「なんならいい相談相手紹介するわよ?」
「ほ、本当か!?」
「ええ、そいつは周りに雌がいすぎてその子達の気持ちに気づかないし、好きな子もいない永遠の非リアなのよ!」
「そ、そうなのか!」
「あんたケータイか固定電話ある?」
「あるぞ」
「なら、後でここに連絡しなさい」
レパルダスはマンムーの毛に一枚の紙切れを入れた。
「あんた、あの紙どっから出したの?」
「マジックでーす」
私の質問にレパルダスは軽くウィンクして答えた。
「じゃあ終わりにするか」
ペルシアンの乱れ引っ掻きで勝負は着いた。ズズーンと大きな音をたて、マンムーは倒れた。
「宝玉を取りにいくわよ」
マンムーを避けて歩き出したその時、後ろからゆっくりとしたリズムの拍手が聞こえた。もしや…と思い振り返るとジャックと仲間達がニヤニヤしながら立っていた。
「いやあ、守護者を倒してくれてどうもどうも。おかげで楽に宝玉がいただけるぜ」
ジャックが走り出した。
「あんたらは先に穴抜けの玉で帰ってな!」
私は叫ぶと同時に走り出した。ワンダーステップの効果でジャックに追い付き足を引っ掻けた。
「うお!?」
「宝玉は私のだあーーー!!!」
宝玉の入った箱に飛び付き、掴む。背後からジャックが襲い掛かって来るのがわかる。くるりと振り向き穴抜けの玉を地面に叩きつけた。
「ばははーい」
ほくそ笑み私は青い光と共に入口に戻った。船に飛び乗り操縦者のチョロネコにすぐ出航するよう促す。
「行き先は?」
「とにかくこの島からとっとと離れて!全速力で!」
「はいよー。お任せあれ。野郎共、出航だ!」
チョロネコが船員に錨を上げさせ出航した。ジャックの船が遠くに見える。私はほっ、と息をつき箱を開けた。
「これが宝玉ね」
中には真っ白な玉が入っていた。
「船長ー。前方と後方に船が。前にツヨイネ、後ろからはジャックが」
チョロネコが緊張感の欠片もない声で言った。宝玉から目を離し前後を確認する。
ツヨイネは私達に気づいたのか止まり、ジャック達は猛スピードで追いかけてくる。
「よおー!ブニャット!」
ツヨイネ船からイーブイが手を振ってくる。遂にジャックが私達の船に乗り込んできた。
「クソババア…俺をコケにしおって!許さん!」
ジャックがムーンフォースを放った。しかし、それは白い悪魔ことソウタによって止められた。
「お前らちゃんと宝玉持ってんだろ?」
私とジャックは頷いた。
「なら俺の船についてこい。宝玉は7つ全部揃った。邪海神の碑石に行くぞ」
そう言い残すとアイツは船に戻った。っていうかソウタの船じゃなくてイーブイ達の船だろ、と心の中で突っ込んだ。
ジャックは何も言わず、自分の船に帰った。
しかたなく、私とジャックはツヨイネについていくことにした。