57話 黄金の城は宝の山に
「それ!」
エーフィ姉ちゃんはサイコキネシスでブラッキーの開けた《黒ノ渦》に敵を放り込んでいる。ロコンは《ハデスワルツ》で雄達を誘惑して倒している。
「ゲームしようぜ」
はっ、と振り返るとルカリオが《ウォーラ》を発動させていた。相手はギャンブルが好きそうな顔したローブシンだった。
「ゲームはなんだ?」
低く、しゃがれた声でルカリオに聞く。
「おっさん、ウォーってしってるかい?」
「まあな、Aが一番強いんだろ?」
「うん、そうだよ。通常ジョーカーは使わないけど僕のゲームだと使うんだ。どのカードよりも強い、最強のカードさ」
「さっさと始めようぜ」
「慌てない慌てない」
ルカリオが波導で作ったカードを配った。
「いくよー」
パン、と場に出された彼らのカードは…
ルカリオ:10
ローブシン:9
「やった!僕の勝ちだね!」
十個の波導弾が出現して、ローブシンに襲いかかった。
「勝った者が攻撃できるのさ」
「ぐ…そういうことか…」
ローブシンはくっくっくっ、と笑った。
「よそ見してんじゃねー!!」
俺の背後にキノガッサが一匹殴りかかってきた。
「ギャンブル見てんのに邪魔すんな」
俺は頭めがけた右フックをしゃがんでかわす。ついでに足を払う。そして、立ち上がってキノガッサの尻尾を掴みまだまだ稼働中の黒ノ渦に放り投げる。
「さてさて、ルカリオ達は…」
ウォーラのプレイを見ようと振り向くが試合が終わったようでローブシンがボロボロになっていた。
「ちくしょー。終わってんじゃん」
キノガッサのせいだと思いながら仲間に当たらないよう、波導弾を連射する。
「クソガキがあああああ!!!」
怒声が響き、俺はすぐに後ろを見た。なんと、ローブシンがルカリオに襲いかかっているではないか。が、まだウォーラが発動しているようで見えない障壁に阻まれ、ダメージが本人に跳ね返った。もちろん相手は気絶。
「前もこんな終わり方だったな」
ルカリオが倒れているローブシンを見ながら言った。
「気にしない気にしない」
ルカリオは頭をぷるぷる振って敵を見た。戦いはまだまだ混戦状態だ。
「はっけい!」
ルカリオは近くにいるダゲキに技を繰り出した。だが、ギリギリのところで避けられ手が壁にぶつかった。
はっけいはぶつかった場所の金をくり貫き大きな穴を生み出した。
『ああっ!!』
敵味方一同が縛られの種を食べたかのように硬直し固唾を飲んで見つめる。
「崩れてこないよね?」
シャワーズ姉ちゃんが呟いた。
「ああ、多分大丈夫だ。敵味方問わず言うぞ、静かに外に出ろ。続きはそれからだ」
サンダース兄ちゃんが声を押し殺して言うと全員頷いてゆっくりと移動しだした。
「ハックション!ハーックション!」
リーフィアがくしゃみを派手に2連発した。
「おい、冗談だろ?」
敵の誰かが言った瞬間、まるで、それが発動の一言だったかのように天井が落ちてきた。
崩落から数分後一番最初に顔をだしたのは俺だった。
「いってー…」
たんこぶのできた額をさすりながら俺は周りを見渡した。先程のような薄暗い場所ではなく外にいた。城は崩壊したようだ。
「ははは…城が山に変わっちまったぜ」
俺は近くに散らばっている金塊をかき集めながら言った。
「売ったらいくらになるんだか…」
俺はぐふふ、と笑い皆を起こした。
「何が…あったの?」
ニンフィアが聞いてきた。
「リーフィアがくしゃみしたら城が崩れた。今金塊を船に積んでるから手伝え」
「まかせてちょうだい!」
ニンフィアはリボンを器用に使って船に乗せていく。ようやく敵を除く全員が起き上がった時には金塊は半分以上積んであった。
「ふいー。あ、お前らも手伝えー!」
金塊を全て積み終えたのはそれから10分後のことだった。
「さて…出航の前にソウタが乗ってるんですが。なんで?」
「ノリで」
ソウタは箱から金の宝玉を取り出しながら答えた。
「あと一つか…」
「だな…」
宝玉は全七色。俺達が4つ、ジャックが一つ、そしてソウタが一つ。
「あ、お帰りなさい」
マナフィが厨房から顔を覗かせて言った。
え?なんでマナフィがいるのかって?
実はあの後神殿がぶっ壊れたから俺達の旅に同行することになったのさ。
それで、マナフィはお姫様なのに俺達が探検してる間料理を作って待っていてくれるのだ。