56話 ソウタと金の宝玉
俺はソウタ。元人間で今現在はアブソルだ。
「ここに金の宝玉があるのか」
目の前には黄金で作られた巨大な城がある。中には沢山の罠があると聞いている。
「道具の個数も足りてるな。よし…行くか」
鞄の中を確認し、ガサゴソ掻き回す。
―黄金城 内部―
「おお…こいつぁすげえ。持って帰れば主も喜ぶだろうな」
俺は感嘆の声を漏らした。一面びっしりと金がレンガのように積み上げられ道を作っている。辺りを見回しながら足を踏み出した俺。カチッという音がして反射的に一歩下がる。俺の鼻先を掠めて毒矢が壁に刺さった。
「あぶねえあぶねえ…」
毒を受けたのでモモンの実を鞄から取りだしかじる。
「こりゃ罠見えの玉の出番だな」
鞄からもうひとつ道具を取りだし地面に叩きつける。
「………一体どうしろと…」
玉を砕き、罠が見えるようになった。しかし一歩歩くごとに罠がある。どうしてよいか分からず、俺は強行突破作戦にすることにした。
「いくぜ…」
持ち前のスピードを駆使し、目にも止まらぬ速度で進んでいく。カチッカチッカチッと罠を踏むがひとつも当たらない。幸い一階層目は真っ直ぐな道で助かった。
「よし!階段だ!」
俺は階段を降り、黄金城の地下2階に来た。そこには地下牢のような場所で拷問部屋もあった。ブルッと身震いして奥を目指す。主によればこの城は3階そうでできているらしい。
「うん…罠は無かったな」
早々と地下3階に続く階段を見つけ用心して降りる。
「来たな!」
降りた瞬間、かなりの速度の十万ボルトが飛んできた。さっ、と横に飛び回避する。
「俺はライチュウ!金の宝玉の番人!エル勝負だ!」
エル?もしかしてあいつか?いっつもイーブイにくっついてる。
「どうした!?ビビった…か…エ…ルじゃねえええ!!だだだた、誰だテメエ!」
ライチュウはひどく驚きしりもちをついた。
「俺はソウタ。エルがどうかしたのか?」
「うん、まあ色々あった。去年のことだったんだよ」
(急に語り出した!?)
俺は呆気にとられたが仕方なく聞いてやることにした。
「エルは俺のアチャモをかけて勝負を挑んできた。俺はぼろ負けしてアチャモを盗られた。全部!あい、つの!せいだ!」
ライチュウは床をバンバン叩きだした。
「だぁがしかぁし…俺は探検家としての実力を認められ宝玉の番人になったのだ!」
「え?有名な探検隊のリーダーがギルドに集められて宝玉を集めろだのなんだの言われたんじゃあ…?もしかしたらギルドの上層部は一流の探検隊のみ残して二流の探検隊は潰しちまおうって作戦か?」
「何ぃ!?俺が二流だと!?」
こけにされ怒ったライチュウはボルテッカーで突進してきた。
「そーやって激情に流されるから二流なんだよ!」
単調な速度で、フェイントの欠片もない技を見て俺は溜め息をついた。
「あいつらのお友達なら殺さないどいてやるか」
峰打ちを首筋に当て、一撃で気絶させる。
「やれやれ…さっさと宝玉をいただいて帰るか」
ライチュウが守っていた扉を開け、奥の小部屋に入る。中は歯ブラシや寝袋、その他の生活用品が散らばっていた。
「ここで夏の間ボッチだったのか…」
俺は宝玉の入った箱を取りながら呟いた。
「そういや、エルがあいつのアチャモ盗ったとか言ってたないつか聞いてみよ」
箱を鞄にしまい、3階をあとにした。2階を過ぎ、1階に差し掛かった辺りで話し声が聞こえてきた。
「誰か来るな…」
俺は牢屋の影に身を隠した。
「3階に宝玉があるそうだな」
「そうらしいですね」
ボスらしきカイリキーが言った。するとそれに賛同するように部下達が返した。
相手は全員格闘タイプ。俺だけだと分が悪い。
「ま、ツヨイネの奴等は足止めしてし大じょぶえらっ!?」
「イーブイ参上!足止めってコイツらのことか?」
イーブイとその仲間達はぼろぼろになったエビワラーやサムワラーを見せびらかした。
「貴様!そんなになるまで何をした!?」
ゴーリキーが驚きと恐怖の混じった声で聞いた。
「コイツらで罠を作動させて俺達の道にした」
ブラッキーがニヤリと笑った。
「よお、イーブイ」
影から身を出しツヨイネに加勢する。しなくても大丈夫だろうが俺のプライドが許さない。
「ソウタ!…がいるってことは宝玉は…」
「ゲットだぜ」
「くっそー!!」
イーブイは一番近くにいたニョロボンに飛び蹴りをかました。
「皆!久し振りにガチで殺り合っていいぞ!」
イーブイの指示にメンバーは歓喜の声で敵陣に突っ込んでいった。