一章 事の始まり
3話 過去を見る
「あー、皆に集まってもらったのには訳があるんだ。……まず、非常に言いにくいんだけど、ジャローダな野生化した」
 言った瞬間、全員がざわつきだした。みんなを静かにさせてから次の話に進む。
「それと、ウィンディも野生化した。ウィンディの時は部屋のガラスに穴が空いていただから、銃で撃たれたものだと思う」
「それと、野生化に何の関係があるんだ?」
 サンダース兄ちゃんが沈痛な表情で呟く。
「この事から、おそらく銃弾にダンジョンに満ちている障気を混ぜ込んだものだと思う」
「ダンジョンからカタレグロを取り出すことなんて可能なのかしら?」
 師匠が腰に手を当てて言った。徹夜明けなのか、目の下にくまができていた。
「一応できるわよ。でも、莫大な費用がかかるしカタレグロを取り出しても特に利益はないからやらないけどね」
 白衣を纏い、黒縁の四角い眼鏡をかけたらミミロップが答える。こちらは、しっかり眠っているのか、肌には張りがあり、くまもない。
「まあ、そんなわけでこれから各地区に別れて調査をしてもらいたい。そんなわけで、相性を考えて俺が独断で決めさせてもらう。まず──」
 南地区、常夏の地域だからサンダース兄ちゃんとエーフィ姉ちゃん。
 西地区、砂漠が広がってるからシャワーズ姉ちゃんとリーフィア。
 東地区、険しい山が多いから身軽に動けるルカリオとゾロアーク。
 北地区、極寒の環境だからロコンとブースター兄ちゃん、それからグレイシア姉ちゃん。
 中央地区、ポケ通りが多いから警察官のエルと目敏いブラッキー、それとニンフィア。
「以上、このメンバーで行ってくれ。質問は無いな?」
 ぐるりと一同を見回すとミミロップが手を上げた。どうぞ、と許可すると師匠を指しながら言った。
「私とサーナイトそれからイーブイはどうすんのよ?」
「まあ、師匠とミミロップは野生化の原因を突き止めてくれ。俺は──取り敢えずネットから情報を探しだしてみる」
 自宅待機のようなことを言ったら周囲から大ブーイングの嵐が舞った。しかし、その勢いに圧倒されることもなく手をパンパン! と叩いて静める。
「この事件が解決したらなんか、奢ってやるから! 文句言わずに行ってこい!」
 それは、奢りではなく外食だろ? と、聞こえたが聞こえてないふりをする。
 文句、溜息、罵声を飛ばしながらも、みんな渋々調査に出発するのだった。
「さて……行ったか」
 全員が目的地に向かったのを見てから、自分の部屋に戻ろうと踵を返した。
 しかし──。
「あんた、何か考えがあるんでしょ?」
 背後から我が師匠のサーナイトに言われた。
「分かってたなら何で黙ってたんだい?」
「そうね、あんた何も言わずにどこかに行くのは大抵危険が待ち受けている。故にあんたは誰も傷つけたくないからやっかいばらいをした、と。どうかしら? 完璧に当たってるでしょ?」
「はー……その通りだよ。で、そんなこと言うんだから連れてってほしいんでしょ? 」
 目を見つめてニヤリと笑う。師匠を見て顔を綻ばせて、ええ、と答えた。
「そうと決まれば早速行こうか」
 探検鞄にオレンの実と穴抜けの玉、縛り玉にリンゴを詰め込む。彼女達も同様の持ち物を鞄に詰めて玄関先に立った。
「よし、まずはジャローダの家に行くぞ」
「どうしてよ?」
 戦う気満々の師匠が不満そうな顔をする。
「まあ、慌てるなや。ジャローダの家に行って《過去視》するのさ」
「過去視?」
 二匹揃ってきょとんとした顔で説明を求める。
「あっちについてからのお楽しみだな」


〜☆★☆★〜


道なりに歩いてジャローダの家に着く。ドアは壊れていて中が丸見えだ。堂々と家に入って中央辺りまで進む。
 師匠とミミロップがくるくる回りを見回している間、俺はしゃがんで床に手をついてしゃがんだ。
 それに気づいた彼女らの視線を感じながらも集中する。全神経を張り巡らせてこの場で起きたことだけを読み取ろうと時間を巻き戻す。
 視界に星がちらつき、頭痛がし始める。次第に激しくなり、終いには目の前でスパークが弾けた。
「──ッ!!」
 周囲にうっすらと影が現れた。五匹分だ。
 ジャローダてマニューラ、チラチーノそれからツタージャにクチート。
 チラチーノが手に何かを持っている。おそらく朝食だろう。それをテーブルに置いた途端、チラチーノが倒れた。すぐにジャローダ達が駆け寄るが、チラチーノ同様に倒れた。ツタージャが安否の確認をしに行こうとするのをクチートが止めた。
 そのまま引っ張っていきクローゼットの中に二匹で隠れる。
 しばらくすると、倒れ伏した三匹が起き上がり、家具をやたらめったらに破壊し始めた。
 クチートとツタージャの隠れているクローゼット以外を破壊し尽くすと、彼女らは揃って家を出た。俺はその影の後ろをゆっくりとついていく。
「ちょ、ちょっと! どこ行くのよ!?」
「え? ジャローダ達についていくのさ……」
 ふらふらと歩きながら影を追う。しかし、過去を見るにはまだレベルが足りなかったようで肉体の限界が近づいてきた。
 遂に足柄傾き、バタリと倒れた。大丈夫? とミミロップに抱き抱えられながら指示をだして影を追跡する。
 一時間ほど歩いただろうか、俺達は一つのダンジョンに辿り着いた。多種多様な種族が入り乱れるとてつもなく広いダンジョン。
 《エデンの園》に。

■筆者メッセージ
─ツヨイネ雑談たいむ─
作者「ども、おひさです」
アブソル「やあ、元気してたかな?」
作者「んー……なんとも言えない」
アブソル「なんかあったの?」
作者「強いて言えば、高校とスマホゲーに時間を盗られて全く執筆できないことかな。あ、あと友達できてないの」
アブソル「ふー……そんなの私欲の問題じゃないの」
作者「はい、しっしかりします」
だんご3 ( 2018/04/29(日) 23:22 )