03 7話 銃弾飛び交う戦場
ティーンはバイクに乗って走っていた。管理者用の裏コースを抜けてガチゴラスの待つ場所に向かう。背中にはアサルトライフルとグレネードランチャー、腰には手榴弾か3つ。
肩にはレイシーが掴まっている。ヘルメット無しの二人乗りは危ないというレベルではないが、今はそんな事を言っている場合ではない。
パーク内では既に十人以上死者がでていて客達はパニックに陥っている。
「くっそ! どこにいるんだ!?」
声を荒げてティーンが辺りを見回す。
その時だった。目の前に二人組の子供が出てきて危うく轢くところだったのだ。
「危ねえなクソガキ!」
こちらもこちらで転倒しかけたティーンは怒りを露に二人に詰め寄った。
「ちょっと待って!」
怒鳴ろうとするティーンを押し退け、レイシーが前に出た。そして、二人の顔を見て涙を目に溜めて呟いた。
「イブ……ラキ……」
「おばさん誰ですか? 僕達はじいちゃんの所に急がなきゃならないんで」
ラキか丁寧に伝えてイブの手を引く。
「え、ええ、気を付けてね」
レイシーは去り行く二人の後ろ姿を眺めながら手を振った。ティーンは裏コースを通ってきた二人がセウスの孫であったことを漸く理解した。
それと、先程怒鳴らなかったのも正解だった。
「さあ、ガチゴラスをこ、殺しに……行きましょう」
自身の最高傑作を破壊しに行くことに抵抗があるレイシーは声を震わせながらバイクの後部座席に乗り込んだ。
「ああ、さっさと終わらせよう」
再びバイクを走らせ、裏コースを抜ける。職員用ルートはここまでで次は一般客が利用する大通りだ。
バイクを降りてさっ、と銃を構える。逃げ惑う人々の波を躱しながら懸命に進む。
ずしん……と地面が揺れるのをティーンは感じた。しかしそれは逃げる人々の足の振動だと自分に言い聞かせる。
周囲のゲージの中にいるポケモン達は皆一様に同じ方向を見て怯えている。
まさか、と思ったティーンはアサルトライフルのスコープを覗いてみる。
「大変だ! レイシー、こっちにガチゴラスが向かってる。どうにか皆を逃がしてくれ」
「あ、あなたは!?」
「俺は……ちょっと戦ってくる」
「死ぬわよ!? あなた最初特殊部隊にも行かせなかったじゃない!」
「大丈夫だって遠くからスコープで狙い打つから。上手くいけばここで終わるだろ?」
「ばか! やめなさい!」
「じゃ! 後は頼んだぜ!」
人混みを掻き分けてバイクに乗り、ガチゴラスを迎えにいった。
「全く……バカなんだから。──皆さん!良く聞いてください! こちらの管理者用のルートからも脱出可能です!」
レイシーがあらんかぎりの声で叫ぶと、上手い具合に波が二つに割れた。そこからスムーズに事が進み、完璧かと思われたが……。
「あの人……大丈夫かしら?」