04 4話 開園
翌日、待ちに待った開園日だ。早朝から客が門の前に並び、長蛇の列を作っていた。
「本日はお集まりくださり、誠にありがとうございます! それでは開園です!」
アナウンスと共に門が開け放たれた。
それより一足先にラキとイブは園内を歩いていた。
今日はロアもルリオも忙しいそうで、代わりにコンという焦げ茶色の髪の女性がついた。
「あれなんていうポケモン!?」
イブが幸せそうに果物をかじるポケモンを示す。
「あれはベイリーフよ。比較的穏和な性格で争い事は好まない。……だけど、ベイリーフの頭部の葉からは闘争心を煽る香りがするのよね」
「じゃあ、あれは?」
今度はラキが尋ねる。
「あの子はアシレーヌ。水のバルーンと美しい歌声が彼女の自慢よ。好物はお魚」
ふと、ラキは人が増えたことに気がついた。檻の前には物凄い人だかりができていた。
イブはそれに圧倒されて、不思議とラキの手を握った。
いつもは嫌がるラキも何も言わずに握り返した。
〜☆★☆★〜
「まったく……こんな所に呼び出して……」
「おお、ティーン!」
赤い帽子に半袖ジーンズの堅そうな髭を生やしたおじさんが本部にやって来た。
セウスが駆け寄って握手する。
「で? 何のご用?」
「うむ、君の動物と仲良くする能力を見込んで頼み事があるのじゃ」
セウスに案内されながら本部の特別管理棟に入る。
「詳しい説明は彼女に聞いてくれ」
「はじめまして、レイシーです」
「俺はティーンだ。よろしく」
軽い握手を交わして本題に入る。
「ではまず、こちらの窓をご覧ください」
レイシーに勧められて強化ガラスを除きこむ。
そこは高さ10メートルを軽く越えた壁に囲まれていた。
キョロキョロと巨木の生えた壁の内側を見回すがポケモンは見当たらない。
「……何もいないぞ?」
「それならば、こちらの熱感知器を搭載したカメラで確認してください」
レイシーがガラスの下のパネルを操作する。
パッと九つの画面が出現し、色々な角度から壁内を映している。
熱感知器の効果によって草木は低温の青で映っている。
だが強い熱反応はどこにもない。
「いないじゃないか」
「そんなはず無いんですけど……」
と、ここでティーンはあることに気がついた。
10メートル強の壁に爪痕がついていることに。
「外に逃げたって可能性は?」
「あり得ません。10メートルの壁ですよ? 羽がない限り……」
レイシーはティーンの指す方を見て絶句した。
「しょうがない。俺が見てこよう」
非常用のドアから壁の中に入る。
「危ないですよ!」
「大丈夫だ。俺逹が見張っとくから」
二人の警備員がショットガンを構えて言った。
「よし、行くか」
鬱蒼と茂る草木の間をずんずん進んでいく。周りの檻から聞こえるポケモンの声以外、何も聞こえない。
「やっぱり、逃げ出したんじゃないか?」
警備員がショットガンが下ろした瞬間、相方が宙に浮いた。
「な、なんだ!?」
腹には屈強な手が巻き付いている。その本体は、二足歩行の巨大なポケモンだった。
「た、助けてくれぇ!」
じたばたと暴れるが一向に脱出できない。巨大ポケモンはおもむろに口に運び、頭部を噛み砕いた。
悲痛な叫び声も無く、相方は絶命した。
そして、ポケモンが吠えた。ようやく恐怖と驚きから解放された二人は正面のポケモン用出口目掛けて走り出した。
警備員がネームプレートを機械に翳すと、ゆっくりとドアが開き出した。
人一人が通れるようになると、二人は駆け出した。
急いで閉めようともう一度翳す。
だが、ポケモンの大きな頭が僅かに挟まった。低い唸り声と共に鉄の扉が押し開けられていく。
そして、大音響と共に扉は破壊され、ポケモンが園内に放たれた。