03 3話 先行遊覧
「さて、開園は明日からじゃが、先に回らせてあげよう」
本部の応接室にて、三人は座っていた。
ミウはポケモン達に餌を与えに行っていていないそうだ。
「じいちゃんと一緒に?」
イブが尋ねるとセウスは残念そうに首を横に振った。
「すまんな、生憎ワシは最終調整をしなくちゃならなくての。代わりの者で許しておくれ」
おーい、とセウスの一声で二人の研究者がやって来た。
「何ですか博士?」
黒に赤が混じった髪を一つに結わえた女性が訊く。
目の色は目の覚めるような青で少しつり目だ。
声は高めで聞いていて心地よい。
「この子達の案内をしてもらいたいんじゃ」
「なるほど、じゃあこれも必要ですね」
彼女は一旦研究室に戻り、男性を連れてきた。
おっとりした目と濃い水色の髪。
「ロア、どうしたのさ」
「あたしと博士の孫と散歩に行くわよ」
「別にいいけど……」
「さあ、行きましょう! えーと……」
「俺はラキ。こいつが弟のイブ」
「ラキにイブ、ね。よろしく。あたしはロア。こっちはルリオ」
ロアとルリオに連れられて二人は観光用の車に乗り込む。
〜☆★☆★〜
「えー、左手をご覧くださーい。あれは集団で生活をするイーブイ達です。通称ブイズ。解説はめんどいからパンフレット読んでな」
ルリオが運転する後部座席で二人は貰ったパンフレットと車窓を交互に見ていた。
「右に見えるのは食虫植物の祖先的なマダツボミ、ウツドン、ウツボットだよ。近づくと喰われるからね。今までに烏が捕まるのを何度見たことか……」
ロアは身震いしながら語る。余程恐ろしい情景なのだろう。
「んで、次がトロピウス。比較的温厚な性格で顎の果物が美味い」
へぇ、と実物を眺めながら二人が感嘆の声を漏らした。
「左は水槽スペースになってて、カイオーガとかネオラント、コイキングにギャラドスとかがいるのよ」
時折、水面を巨大な赤い魚が跳ねる。その度にラキとイブはおお、と呟く。
他にもあるようだが明日のお楽しみ、ということで今日は本部に帰還。
〜☆★☆★〜
「どうじゃったかの?」
「すっげぇ、楽しかった。明日がマジで楽しみだわ」
「そうかそうか、そいつは良かった!」
豪快に笑ったセウスは二人の頭を撫でた。
「ほら、お風呂に入ってきなさい。そのあと夕飯にしよう」
「はーい」
ラキとイブが一緒に風呂に入るのは実に三年ぶりだった。
「明日も楽しみだねー」
「ああ……そうだな」
ラキは素っ気なく返す。体と頭を洗い終えると、湯船に浸からずに上がってしまった。
「ちぇっ、つまんないの」
イブが不満を溢す。しかしラキは答えない。
夕飯はステーキだった。
厚い肉を苦労して噛みきり、満腹になった頃には午後九時を回っていた。
「さあ二人とも寝る時間だ。明日は早いんだから早く寝なさい」
二人はダブルベッドに寝転がる。
ラキはセウスに部屋を分けてくれと言ったのだが、残念ながらここしか空いていないと断られたのだ。
溜息をついたラキはイブに背を向けて早々に眠りについた。
一方のイブは明日待ち受けるポケモン達に胸を膨らませていた。