04 30話 2/8
「こちら、ポケトピア制圧部隊。応答願います」
「こちら、ネーティブ会議場。その声は……レリックか?」
レリックと呼ばれたウツロイドは感嘆の声を漏らした。
「すげえな、声だけで当てるとは」
「何回お前を叱りつけたと思ってんだ、この悪ガキめ。で? 用件はなんだ?」
「ああ、ポケトピア最後の希望ツヨイネの殲滅に成功した」
「全員か?」
「あー、二匹ほど俺達のペットにしようかと牢獄に送り込んだ」
レリックはバレたか、と頭を掻いた。
「まったく……。まあいい、直に戦いも終わる。今、ティング様がツヨイネの精鋭と戦闘中だ」
「そうか。そしたら俺達はここに住めるんだな」
わくわくしながら周りを見渡すレリック。
血と死体しか見えない大地に、彼は何を期待しているのか……?
〜☆★☆★〜
痛みに苦しむルカリオ──の上に覆い被さるティング。
「え……? 嘘!? やめて! 嫌だああ──」
ルカリオに覆い被さったティングは、唇をルカリオの唇に近づけている。
俺達は動かなかった。否、動けなかったのだ。その光景に目が釘付けになって。
ポカーンとした表情を浮かべる俺達の目の前で、ティングはルカリオにキスをした。
30秒に及ぶ長い長いキスの後、白眼を向いた両者は動かなかった。
「お、おいルカリオ?」
駆け寄って肩を揺する。
「下がれ!」
「あ?」
ソウタが叫んだ。反応が遅れた俺は、ルカリオ同様、彼に乗り移ったティングに押さえつけられた。
「こうやって一匹一匹始末してくつもりか?」
「一番楽だからな」
くッくッくッ、と笑い口を近づけてきた。
「ちゃんと足まで押さえなきゃ駄目だぜッ!!」
リミッターを解いた蹴りをティングの腹に食い込ませる。
目を見開いた奴は体をくの字に曲げて呻く。ころんと横に転がって抜けた俺は波導弾をティングの頬に放つ。
「大丈夫?」
エルが心配そうに言った。俺はティングから目を離さずに頷いた。
「うーわ、あれで死なねえのかよ……」
しばらく悶えていたティングは、やがて何事もなかったかのように起き上がった。
「胃とか壊れたと思うんだけで……」
「ふふふ、僕の体は頑丈だからね」
ティングの口から、ルカリオの声で発せられた。
「ルカリオ?」
「どうやら、結合しやすいみたいだね。こいつは素直みたいだから」
ティングは言い終わると同時に床を蹴った。
「ラアッ!!」
近距離で突き出された《波導棍》は俺の右頬を掠めて背後の壁を穿った。
「ちッ、外したか」
再び振り下ろされる《波導棍》。それを左の手のひらで受け止めてマッハパンチを叩き込んだ。
威力は低いものの、弱点をついたためか、予想以上のダメージを与えた。
「ナイスだ!」
ソウタがティングの背中に辻斬りを放った。紫色に輝く角が、ティングの一番肉質の柔らかい場所を捉えた。
血が噴き出して、更なる追撃を加えようとしたのだろうか? 攻撃体勢をとったソウタだったが、直ぐに離れてしまった。
「次は僕だッ!」
「やめろエル!」
雄叫びを上げて飛び込むエルにもう制止は効かない。
俯せから仰向けに反転したティングはエルを抱き抱えた。
「寄生か!?」
違った。奴はルカリオの胸の棘にエルを押し当てて殺したのだ。
「こんな弱い体はいらない。次はイーブイかソウタがいいな!」
あはは、と不気味に笑うとエルを投げ捨てて突っ込んでくるティング。
ドサッとバウンドするエルの体。俺の全身の血がカッと熱くなる。
頭の中が、奴を殺せという言葉で一杯になる。
──もう、自分をオサエラレナイ……
爆発じみた轟音を轟かせてティングに飛び込む。
「何ッ!?」
《三日月刀》をティングの腹に突き刺して一気に切り上げる。腰から上を真っ二つに切断してほぼ瀕死に陥る。
が、まだまだ止まらない。
「アアアアアアアアッ!」
《雷槍》で足を凪ぎ払い、《水弓》で太股を貫く。
止まらない猛攻。反撃できないティング。
──このまま圧しきれる!
そう直感した俺は、《火爪》でティングをサイコロステーキ状にした。
「もうおしまいだ!」
後ろから誰かに羽交い締めにされて、俺の意識は戻った。
「……ッ。何で止めた!」
「見ろ、あいつは死んだ!」
ソウタが顎でティングの死体を指した──その刹那。
奴の肉片が動いて喋っているソウタの口に飛び込んだ。
「まだ生きてたか!」
無理矢理咳き込んで吐き出そうともがくソウタ。
しかし、間に合わなかったようで、彼はその場に倒れた。