07 26話 八対六の戦い
「潰れろ!」
《空間箱》の対象をルナミに向ける。
「軟らかい……。まだまだですわね」
アシッドボムを投げつけたルナミ。
効かないよ、とでも言いたげなエルの表情は驚愕に変わった。
「だから言ったでしょう。軟らかい、と」
アシッドボムがぶつかった箇所はどろどろに溶けて正方形を維持できずに崩壊した。
「だったら!」
ルナミに背を向けて逃走するエル。
「待ちなさい!」
すれ違い様にソウタの肩を軽く叩いた。
首を傾げて振り向いたソウタは迎撃するしかなかった。
「うわッ!?」
避けられる距離でもないし、迎撃した方が一体殺せて楽になる。
彼の角がアメジスト色に閃き、薄紫色の斬撃を飛ばした。
真っ二つに裂かれたルナミは徐々に高さを失って床にぺちゃ、と気持ちの悪い音をたてて命を散らした。
「流石ソウタ! ありがと!」
「あぶねぇだろ!」
「余所見だなんて、嘗められたもんだぜ」
ヤトンの鋭い刃状の腕がソウタに迫る。
負けじと角で受け止めた。そこから熾烈な鍔迫り合いが始まった。
「…………ッ」
無言で押し込んでくるヤトンに力負けしながらもソウタは思考を巡らせる。
「う……らあッ!」
一瞬、後ろに退いてヤトンの体勢を大きく崩す。そしてサイコカッターで上半身と下半身を寸分の狂いもなく真っ二つにした。
〜☆★☆★〜
「うわああああああッ!!」
ルカリオはレイルの遠距離攻撃になす術もなく、必死に逃げ回っていた。
「い、イーブーイ! た、助けてぇええー!!」
「はっはッはッ! 情けないぞ少年!」
「ごめーん! 俺もゴリアスの相手で忙し、いッ!?」
かなり離れた場所でイーブイとゴリアスは戦闘を繰り広げていた。
「くあッ!」
イーブイの事に気を取られて隙を見せたルカリオにレイルの高圧電流が直撃した。
広間の端に吹き飛ばされるルカリオ。
「こんなんじゃ彼女なんかできないぜ、少年よ。ま、できたとしてもブスだろうけどな」
ヒャハハハッと嘲笑するレイルに、ルカリオは殺意を覚えた。
心にコールタールのようなどす黒い何かが覆い被さる。
──ゾロアークは、ブスなんかじゃない。むしろ、美人だ。僕には勿体ないくらいの。
「少年よ、さらばだ!」
レイルの電気を纏った腕がルカリオの頭蓋を叩き割ろうと振り下ろされた。
しかし、晴天の青空のように澄んだ水色のオーラを体全体に纏ったルカリオの腕がレイルの腕を掴んだ。
電流が彼の体内を駆け巡るが、今はどうってことない。
「ゾロアークを……馬鹿にするなあああッ!」
《怒り》+《波導》の籠った拳は、レイルの胸骨を砕き、心臓に振動を伝えて爆発させた。
「……」
ふらりと傾いたルカリオは、そのまま床に倒れて死んだように眠りだした。
「ったく、こんな時に寝れるなんて羨ましいぜ」
イーブイはゴリアスの右ストレートをサマーソルトで蹴りあげた。
大きく仰け反ったゴリアスの腹に体を捻って溜めたアイアンテールをぶつける。
腹がひしゃげてぶっ飛んだゴリアスはジャック&ジャノビーと戦闘中のロボクルもろとも壁に激突した。
「……ふん」
「まだ、まだぁッ!」
ゴリアスが大魔王に立ち向かう勇者のように突っ込んできた。
──これ、俺の方が悪者みたいじゃね?
自嘲気味に笑いながらゴリアスを迎え撃つ。
「はあッ!」
手に溜めた波導弾を突進してくるゴリアスの顔面で爆破させた。
「なッ!?」
爆風を耐え、強烈なアッパーカットが俺の下腹部に叩き込まれた。
「が……ッ……」
床に叩きつけられた俺は血と共に胃に溜まった物を吐き出した。
「よくもミレニィを殺したな」
ゴリアスが俺の胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「なら……逆に、言わせて、もらう、けど……。よくも、ミミロップを、殺したな……」
キリキリと痛む腹を庇いながら途切れ途切れに言う。
「俺は、ミレニィが好きだった。なのになぜ貴様はぶち壊した!」
「知るか、てめぇらが戦争なんか吹っ掛けてこなかったらこうはならなかったんだぞ!」
「俺だってこんなことはしたくない!」
「じゃあ何でやるんだ!」
俺は語気を強めて問い詰める。
「ネクロズマ王の側近であるティングの命令だ。千年前の約束を果たす時だ、と王に言った」
「何で反対しなかった」
「あいつには誰も勝てないんだ。絶対に」
「だったら俺らが殺しに言ってやるよ」
「本当か!?」
「ああマジだ。だからてめぇらも着いて来い」
「ああ、分かった」
ゴリアスと俺は互いに意気投合して仲間に状況を伝えに行った。