06 25話 六隊長
「雷鳴よ! 地を駆け巡れ!」
《雷槍》を選択した俺は真っ赤な絨毯に矛先を突き立てて叫ぶ。
槍から放たれた雷撃は床を駆け、数匹に命中して感電死させた。
「やりぃ!」
ガッツポーズしたその刹那、背後から忍び寄るマッシブーンのウッドハンマーを空中回避して、雷槍を脳天に突き刺す。
「うぇー。きったねー」
降りかかった青い体液を払う。
「余所見してんなよ!」
ジャノビーが《草双剣》でウツロイドを細切れにした。
「その通りよッ!」
ブニャットの巨大な腹がカミツルギの紙の体をぺしゃんこに押し潰す。
「ふふ、お前らの未来を占ってやろうか?」
サタンが少し離れた場所で《未来剣》をくるくる回しながらウルトラビースト共に尋ねている。
「お、教えてくれ!」
「俺も俺も!」
敵意が消え、サタンの周りに集まりだすビースト。
「未来はみんな一緒さ。つまり、《死》ってことだよ。今、お前らが立ってるところは俺が切ったから」
「はぁ? 何をいって──」
最後まで言い終わらなかった。何故ならば、突然テッカグヤの強靭な肉体が縦横に分断されてしまったからだ。
「言ったろ。切った、って。俺のこの剣は、七秒先の未来を見通し、三分先の未来を切り裂く。……ほら、時間だ」
サタンが逃げるように真上へ跳躍した瞬間、ヒュバババババ! という鎌鼬じみた音が炸裂する。
それと同時に彼の周りに群がっていたウルトラビースト達は腹や、頭を切り裂かれ、自らの体液に染まって絶命していった。
「あー、疲れた。どうだ? すげぇだろ」
自慢気にふんぞり返るサタン。いつか俺もこんな奴になるのだろうか?
──いや、そうはさせない。俺の代で終わりにするんだ!
心に固く誓った俺は城の奥へと歩を進めた。
「こんな状況じゃなかったら城内探検も楽しかったんだろーなー」
ジャノビーは、はぁーと深い溜息をついた。
「痛ッ!?」
ルカリオが肩を押さえて踞った。手の間から鮮血が腕を伝って床に滴り落ちた。
「誰だ!」
「ふっふっふー。ネーティブ六隊長参上だぜ」
フェローチェがピースサインをしながら俺達の前に現れた。
「は、速すぎンぞお前……」
その後ろにはデンジュモク、マッシブーン、テッカグヤにウツロイド、そして最後にカミツルギが走って来た。
「六隊長を集結させるなんて貴殿方やりますわね。あら申し遅れました、私ルナミと申します」
ウツロイドが敵ながら天晴れな角度のお辞儀をした。
「俺の声に聞き覚えがあるはずだぜ」
カミツルギが前に進み出る。
「誰だっけ?」
「さあ? 初耳だよね」
口々に囁き合うと、カミツルギの怒りが爆発した。
「俺だよ俺! 警報鳴らしてアナウンスした俺だよ! 名はヤトンだよ!」
「はぁ……。よろしく」
「ロボクルデス。ドーゾヨロシク」
機械じみた喋り方のテッカグヤが言った。
「俺はゴリアス。こいつは──」
マッシブーンがフェローチェを指差すとフェローチェの方が俺に近寄ってきた。
「私はミレニィ。ミミロップって君の仲間かな?」
「そうだけど?」
「ふふ、そう。ごめんね、心臓潰して殺しちゃったよ」
キャッキャッと子供のように笑うミレニィに殺意が湧き始める俺。
「レイルだ──」
デンジュモクが言い終わる前に、俺はミレニィに《氷雪剣》を手に突っ込んでいった。
「よくも! ミミロップをッ!」
斜め上に切り上げるが、体を少しずらしただけで避けたミレニィ。
「せいッ!!」
サマーソルトキックで顎を蹴りあげられて吹き飛ぶ俺の体。
「久々にキレたわ……」
リミッターをフル解除して研ぎ澄まされた感覚の中で《ストップ》発動させる。
「俺が解除するまでは動けないぜ」
ピクリとも動かない敵味方に語りかける。
「まずはこのクソババアからだな」
ミレニィの細くしなやかな体に手を置き、どう殺すか悩む。
「ミミロップと同じ殺し方をするか……頭を消し飛ばすか、達磨落とし状に足から切ってくか……。──え!? そ、そんな! ストップが破られる!? でもせめてこいつだけでも!」
思考を放棄してミレニィの喉に手を突っ込み首の骨を掴む。
生暖かい感触に背筋がぞくぞくするが形振り構ってられない。
「お、おおおああああッ!」
ありったけの力を込めて引き抜くと、背骨もろとも抜け出た。
「ぐッ!!」
ストップが破られた衝撃で俺は後ろには弾き飛ばされる。
そして、核となる背骨を抜かれたミレニィはヒラヒラと舞う桜のように床に倒れた。
「まずは……一匹だ」
ミレニィの骸を敵に放り投げる。
「き、貴様いつのまに!」
レイルの顔が──といっても表情で判断しづらい──険しくなった。
「ガチで殺っていいの?」
ルカリオが《波導棍》を杖代わりにしながら訊きに来た。
「当たり前だ。微妙な生き残りは出すなよ。絶対に息の根を止めろ」
リーダーとして一応全員に伝える。