05 24話 消え行く秩序
―これまでのあらすじ―
壊滅状態の神々の山に、敵軍の王であるネクロズマが現れた。
ネクロズマはアルセウスを殺すためにポケトピアへやって来たのだ。
〜☆★☆★〜
「ゴリアス、ミレニィ、お前らはネーティブに戻れ」
ネクロズマは通信機に耳を当てながら言った。
「なぜです? 未熟だからですか?」
ミレニィが訊き返す。
「ネーティブの基地にいるヤトンから連絡がきた。ネーティブに侵入者だ」
「了解しました」
ゴリアスは指を軽く切って体液を流す。魔法陣を描いてネーティブ語の呪文を唱えた。
「帰るぞ、ミレニィ」
最大最強の敵と戦わせてくれないネクロズマを恨みがましそうに睨みながら帰ろうとする。
「そんな顔するな。ネーティブの方にはもっと強い奴等が集まっているらしいぞ」
それを聞いた途端、ミレニィの顔がパッと輝き、「ありがとうございますぅー!!」と叫んで魔法陣に飛び込んだ。
「やれやれ、あの子の世話は大変だ……」
「同感です。では、俺も戻ります」
「ああ、頼んだぞ」
ゴリアスも魔法陣に飛び込み、辺りは静寂に包まれる。
「さて、行くか」
ネクロズマは二匹が帰るのを見届けると、頂上へ続く階段を上った。
階段を上っている間、ネクロズマは悩んでいた。
アルセウスに会っての第一声はどうするか。
──久しいな。
と、少しかっこ良く極めるか。
──貴様を殺す!
またはいきなり殺しにかかるか。
──……。
はたまた無言でいくか。
「色々あるな──って考えてるうちに頂上かい」
ふぅ、と小さく息を吐いて、残りの約10段を上りきった。
「ッ!?」
ズッシリと重い空気が場に満ちている。これらは全て、アルセウスから発せられているものだ。
「久しいなネクロズマ。わざわざお前の方から殺されに来てくれるとは」
「……約束通り、この世界は我々が納めさせてもらう!」
素早い動きでアルセウスの喉元を狙うネクロズマ。
「遅いッ!」
アルセウスが咆哮と共に大地を踏み鳴らすと彼の目の前の地面が盛り上がった。
「グアッ!!」
宙に打ち上げられるネクロズマ。体勢の崩れたその腹を強く踏みつけた。
「グウッ!!」
内蔵が破壊されたのか派手に青い体液を吐き出すネクロズマ。
「まだ……まだ」
よろよろと立ち上がるネクロズマは、小さな丸薬を口に放り込んだ。
「天使の丸薬か!」
「その通り。これで全ての傷は癒え、力も強くなり、最強となる!」
天使の丸薬とは、世界のどこかにあると言われるミュウの家から彼女の衣類を材料に作成する秘薬である。
探すのに一生を掛けるもいるそうだが、盗み出すのは困難な上に、見つかったとしても容易に入れるものではない。
それゆえに、効果は凄まじいのだ。
「どこでそれを……」
「ネーティブには凄腕の発明家がいてな。そいつの発明品で盗ったのだ」
「下衆め……」
「ほざいている暇はあるのか?」
ひゅん、と空気を裂くような音がした。
「な!?」
アルセウスはたじろいだ。なんと、ネクロズマが眼前から消え去ったのだ。
「これが丸薬の力か……。素晴らしい!」
鋼鉄と同等の堅さと化したネクロズマの膝がアルセウスの頬にめり込む。
「グッ……」
頬骨が砕かれ、血が地面に滴る。
「ぐ……オオオオオッ!!」
全力で裁きの礫を放ったアルセウスは自分もろともネクロズマを殺そうとしているようだ。
「ちッ」
小さな舌打ちをしたネクロズマは降り注ぐ隕石を、まるで小石か雨のように手で振り払った。
「……こんなものか。つまらんな」
直後、疲労しきったアルセウスの胸に手を差し込み、心臓を握り潰した。
「これで神々の山は落ちた。あとはポケトピアの住民達を奴隷にするだけだな。この作業は兵士に任せても大丈夫だろ」
ネクロズマは神々の山の頂上に魔法陣を描き、ネーティブに帰った。
〜☆★☆★〜
「ここかぁ……」
俺は頭上高くに聳える城を見上げる。
「入り口もクリスタルなんだね」
エルがぺちぺちドアを叩く。
「どうやって入る?」
ソウタが彼の──というかアブソル属の──シンボルの角に薄紫色の光を溜めながら言った。
──壊す気満々じゃないですかー……。
「壊したいんなら壊せば?」
その一言がスイッチになってソウタが角を扉めがけて振り下ろした。
凄まじい轟音がしてクリスタル製の扉は崩れ落ちた。
「よし、行くぞ」
扉を開けた──いや、破壊したソウタが先陣をきって進む。
「待てッ! 貴様ら何者だ!」
当然ながらウルトラビーストが波のように押し寄せてきた。
「お出ましだぜ」
ソウタはニヤリと笑って、一番近くにいたフェローチェを叩き潰した。
「い、いきなりすぎいいいいい!!」
と、叫ぶエルだが、《空間箱》で12体まとめて始末する。
「さあ! かかってこいよ!」