06 5話 戦友と再開
ウルトラホールを破壊しにワイワイ海辺に向かう俺達。
「貴様がイーブイか! 覚悟しろ!」
進み始めて三十分。森に入った辺りでいきなりカミツルギと遭遇する。
「ちッ、折り紙に会っちまったか」
舌打ちして《水弓》を作り出す。
「誰が折り紙だ!」
激怒したカミツルギは鋭く尖った腕をやたらめったらに振り回しながら突進してきた。
「邪魔だッ!」
俺が矢を放つよりも数秒速く、誰かがカミツルギを蹴り飛ばした。
「お、お前は!」
緑色の頭にキリッとした細目。そして性別が雄のサーナイト。
そう、彼は……!
「ジャック!」
雄サーナイトことジャックは「よう」と軽く挨拶をした。
「く……俺をなめやがってえギャアアア!」
次いで灰色の巨体がカミツルギを押し潰した。
「久し振りだね」
「ブニャット!」
怪盗cat'sの団長、ブニャットまでもが参戦した。
「あれ? ペルシアンとレパルダスは?」
ルカリオとエルが周りを探しながら訊いた。
「ああ、あいつらなら残ったツヨイネと一緒にいるさ」
「グギギ……馬鹿にしやがってえええ!」
怒りに燃えたカミツルギは素早く腕を振るってライトグリーンに輝く斬撃を飛ばしてきた。
「それぃッ!」
斬撃を全て打ち落とすと同時に、ジャノビーが俺の目の前に躍り出てカミツルギを真っ二つに切り裂いた。
風に乗って飛ばされて行く上半身と下半身を見届けた俺は、数年ぶりに会う友へと体を向けた。
「懐かしいね。対ダークルギアのメンバーが揃うなんて」
エルが嬉しそうに言うが一匹──いや、一人忘れている。
「それはそうとお前らはどこに行くんだ?」
「ウルトラホールっていうあの化け物達の発生源を破壊しに行くのさ」
「お! 面白そうだな! 俺も着いてくぜ」
「そんな簡単な話じゃないんだ! ホールの中に行ったら、帰ってこれないかもしれないんだぞ!」
「それでも私は着いていくよ」
「ブニャット……」
「俺だって行くさ」
ブニャットとジャックが加わった。なんて頼もしいのだろう。
「わかった。よろしく頼む」
それからというもの、進み具合は格段に上昇した。前衛の俺、ジャノビー、ブニャット、ルカリオが敵を殲滅して取りこぼしをジャックとエルが始末する、という戦法だ。
「待て! ここから先は進ませんぞ!」
筋肉質の体が立ちはだかった。こいつはマッシブーン。
「ずぅぇりゃああ!」
突如雄叫びと共に近くにあった樹齢何十年の大木を引き抜くと四方八方に振り回した。
「うおッ!!」
散り散りになって避ける俺達。茂みに隠れて様子を伺うのがセオリーだ──が、俺はそういうのは性に合わない。
「うおおおおッ!」
《三日月刀》を右手に持ちマッシブーンに突撃する。
「ふんッ!」
横凪ぎに振り抜かれた大木。俺はその上に飛び乗ってマッシブーンへの道を簡略化する。
「オアアッ!」
短い気合いを発して左斜めに切り上げる。刃はマッシブーンの腹部を浅く抉った。
「ちッ!」
舌打ちすると大木を投げ捨て、手刀に切り替えた。
「イェアアアアッ!!」
奇声を上げながら斬りかかってくる。初撃の垂直切りは難なく回避。
だが連続での右切り上げはスピードが乗っていてとても躱しきれるものではなく刀で受け止めた。
オレンジ色の火花が飛び散り、剣戟の激しさを物語る。
「……ッ!」
歯を食い縛ってマッシブーンの手刀を受け、噛み合う刃を無理矢理弾き返す。
両者とも大きくノックバックして多少の硬直時間を強いられるがそれは俺も相手もほぼ同じ秒数だろう。
が、予想に反し、仰け反る俺の脇を、緑色の閃光が駆け抜けた。
二刀流リーフブレードの使い手はジャノビーしかいない。
彼の右手に握られた剣はマッシブーンの六つに割れた腹筋をものともせずに突き刺さり、一気に切り上げた。
「ウガアアアアアッ!!」
虫の抵抗、とでも言うべきだろうか。マッシブーンは上半身を垂直に裂かれながらも両腕でジャノビーを掴もうとした。
「アアアアアアッ!」
怪物のような怒声を上げるマッシブーンを、冷ややかな双眸で見つめるジャノビー。
まるで、「そんなトロい攻撃俺には効かねえよ」とでも言うかのように。
二刀を逆手で握り直したジャノビーは伸ばされた手を串刺しにした。
そして後方宙返り蹴りを炸裂させ、とどめのリーフストームを放つ。
木の葉の渦に呑まれたマッシブーンは間もなく絶命した。
「けッ、口ほどにもねえんだよ」
《草双剣》を戻してかっこつけるジャノビー。
先程のシーンを見せつけられたせいか、『かっこつける』という動作が本当にかっこよく見えた。