02 1話 唐突な話
「ん……ふぁあああ」
爽やかな朝。一般市民達は会社やら学校に行っている時刻だ。
スカイランドの冒険から三年後、俺は中学卒業後は高校に行かず、探検隊一筋で生きることにした。
二段ベッドの下段から降りて、机の上にあるパソコンを立ち上げる。
ロード完了までの間に一階に降りて朝食をとる。
「パンがいいなぁ……」
下につくとエルがテレビを見て笑っていた。その後ろを通り、椅子に座る。
「おはようイーブイ」
「はよー」
気のない挨拶を返す。直ぐにエルはテレビに向き直った。
テーブルの上に用意されていたのはハムの乗ったパンだった。
手に取って口に運ぶ。だが、できたてのサクッという音はしない。
何故ならばこれは作り置きだからだ!
「さてさて、そろそろ動くかな?」
歯磨き等、一通りの事を済ませた俺は自室に戻る。既にパソコンは起動していた。
デスクトップの中にあるアイコンの一つをクリックする。
《ツヨイネホームページ》
と書かれた画面が開く。
そうこれは俺達ツヨイネ専用のホームページなのだ。一、二ヶ月前に作ったが大人気だ。
内容は『依頼』『日記』『チャット』『投稿広場』だ。
依頼は単純に仕事の依頼。救助だの脱獄犯逮捕とか……。
日記は毎日午後九時頃に更新される今日一日、何があったかを記す場所だ。これは毎日交代で書いている。
チャットはツヨイネメンバーと楽しく会話できるというもの。これも誰が入るかは日替わり。ブースター兄ちゃんが多い。
最後の投稿広場はファン達が作成した二次小説や絵等を送ってくれる。
小説に関しては特に条件は設けていないのでエロ、BL、GLが投稿されている。
絵はカッコいいものから可愛いものまで幅広くある。
「ん?」
ざっと眺めていると投稿広場に動画が送られている。
タイトルは【終わりの始まり】。何だか不気味だ。
俺はそう思いながら再生ボタンをクリックする。
ザザ……ガガッ……ピ───。
真っ暗な画面に耳障りなノイズの後、少ししゃがれた声が話し出した。
『ポケトピアの皆さん、初めまして。私達はUB軍団です。今日から一週間後にポケトピアに攻め込みます。ポケトピア最後の一週間をお楽しみください』
「悪戯か……?」
俺はその動画のコメント欄を確認する。どれもこれも「ありえない」「馬鹿みたい」等の批判的なコメントが多い。
「ま、悩んでもしゃーねえな!」
投稿広場の画面を閉じて依頼の画面を開く。
・助けてください
・助けてください
・へるぷみー
新規は三件。
今日中に終わるレベルだ。
中学校に行っているリーフィアとニンフィアを抜いたメンバーを三当分して行くか。
〜☆★☆★〜
難易度の高いダンジョンを攻略し終えてぐったりして帰ってくる。
「あー……疲れた……」
よたよた家に入るツヨイネメンバー。
「なあ、話があるからみんな集まってくれ」
サンダース兄ちゃんがリビングに集合をかける。
全員揃ったのを確認した兄ちゃんは口を開いた。
「えー、重大発表があります」
こほん、と咳払いして続ける。
「来週結婚します」
「……!?」
唐突すぎて話を理解できない俺達。まるで縛られの種を食べたかのように固まる。
「あ、相手は?」
数秒の沈黙を破ったのはルカリオだった。
「言わせるなよっ! わかってるくせにっ!」
急に照れ始める兄ちゃん。
大体の予想はつくが、まさか……。
「シャワーズね」
兄ちゃんの心を読み取った師匠が答える。俺達は軽蔑した目で兄ちゃんを睨む。
「お、おい! 何だよその目は! ブースターとかブラッキーだって──」
「まだ結婚までいってないし」
「来週だから……みんなよろしくね!」
罵倒を受けるサンダース兄ちゃんの代わりにシャワーズ姉ちゃんが叫ぶ。
「んー、姉さんの頼みならしょうがないかな」
「そうそう、姉さん! なら、ね」
エーフィ姉ちゃんの承諾にグレイシア姉ちゃんが便乗する。
「んで? 会費とかは決まってるの?」
「ぼちぼち、かな」
「しゃあねぇな。今回ばっかりは目を瞑っといてやるよ」
取り出した家計簿を閉じて新婚さん達に笑いかける。