17 16話 蒼い太陽
―あらすじ―
エル達と別れたイーブイは単独でワイワイ海辺を目指していた。
しかし、ウルトラビースト軍団の妨害に遭うが、ギリギリの回避で助かった。
〜☆★☆★〜
「はぁー……危なかった……」
深い溜息をついた俺は、木に寄りかかって座った。
「あいつらちゃんと帰ったかな……?」
戦争のせいで黒ずんだ空を見上げる。
太陽の光も濁って、世界は薄暗いのだろう。
ガサガサ……
「……? 敵か?」
音のした方向を睨む。
ぴょこッと黒い角が見えた。
「アブソル?」
問いかけてみると、いつもの女子らしい声は返ってこなかった。
代わりに、十代後半の青年の声が返ってきた。
「ハズレ」
俺は、この声の主を知っている。
「ソウタ……?」
「当たり」
顔を出した青年はあの時よりも大人びていて格好よくなっている。
「お前だけか?」
ソウタはキョロキョロ辺りを見回した。
「ああ、みんな置いてきた」
俺は平然と答える。
「そう、か。目的地とかあるのか?」
「ああ、ここから南に進むとワイワイ海辺って所があるんだ。そこに奴等の本拠地がある」
「来たときから気になってたんだけどさ、あの空にある蒼い星は何だ?」
ソウタが天を指した。
「蒼い星?」
俺も空を見上げた。
「な、なんだあれ!?」
俺達の普段見ている赤く燃える太陽の隣に、かき氷のブルーハワイにも負けず劣らずな蒼い星が浮いていた。
「気づかなかったのか?」
「うん……。ずっと戦いっぱなしだったから……」
「だから血まみれなのか」
「まあ、何か仕掛けてくるわけでもなさそうだし、ほっといても大丈夫だと思う……今は」
残る不安を拭い去るように言う。
「ソウタ、危ないから俺の家に行って」
「は? お前なぁ、俺は助けに──」
「駄目なんだ。俺はソウタを殺しちゃうかもしれないし……」
「ふぅん……。できるもんなら殺ってみろよ」
「どうなっても知らないからな」
俺はソウタに背を向けて再び南下を開始する。
〜☆★☆★〜
「……どう? イーブイは近い?」
森の中でイーブイを捜し回るエル達。
「かなり近いよ。でもイーブイは誰かと一緒にいる」
「敵か?」
ジャックはルカリオに尋ねた。
ルカリオは目を瞑って数秒考え込んで答えた。
「いや、並列して進んでるから、味方だろうね」
「味方かー。誰だろうね」
「イーブイが着いてくことを許してるってことは相当の実力者だろうな」
ブニャットの問いにジャノビーが答える。
中々答えの出せない一同はうーん、と深く唸った。
「まあ、追い付きゃ分かんだろ」
ジャックがバッグから乾パンを取り出した。
「あ? 何だよ欲しいのか?」
全員がジーッと睨む。
ジャックはその意味を知らずに乾パンを口に放り込んだ。
「はは、呑気でいいね」
エルの辛辣な一言はジャックを驚かせた。
……ある意味。
「お、お前! そんな辛辣な話し方ができたのか!」
面白がってエルの脇に手を入れて頭上高くに持ち上げるジャック。
「ちょ、ちょっと! 降ろしてよ!」
「はい」
「わわわわっ!?」
言われた通りに離すジャック。
ストンと尻から固い地面に落ちるエル。彼は腰を押さえて立ち上がった。
「ジャック! ふざけてる場合じゃないんだよ!」
「ああ、わりぃ、わりぃ」
反省する様子もなく笑うジャックに、仲間は溜息をついた。