14 13話 勇者参戦
『来てくださいますか?』
妖精は颯太に問いかける。
「分かった。行ってやる……。もう一度戦ってやるよ」
『ありがとうございます。では、門を開くので暫くお待ちください』
すると部屋の中心に黄金に輝く小さな渦が出現した。
『ソウタさん。ポケトピアの状況はあまり良くありません。もしかしたら、帰ってこられない可能性があるので、ご家族や友人に挨拶をしてきてくださいな』
「いや、大丈夫」
颯太はベッドに座って少しずつ大きくなる渦を眺めていた。
『あの、見ていても当分終わりませんよ? 完成は大体……午後十時くらいです』
「あと、四時間か」
ちらりと壁掛け時計をみて呟く。
確かに、渦を見ても一向に拡がらない。
仕方ない、ということで渦が開くその時まで仮眠をとることにした。
〜☆★☆★〜
『起きてください。開きましたよ』
妖精が颯太に語りかける。彼はのそのそ起き上がって欠伸をした。
「うん……じゃあ行ってくるわ」
起き上がって制服姿のまま、光の渦に足を踏み入れた。
『健闘を祈ります』
シンプルな黒く平らなコンクリートの道を歩く颯太。
しかし、徐々に体の形が変化し、黒かった髪の毛は真っ白になっている。
「ッ……!」
こめかみの辺りに違和感がする。その違和感は皮膚を突き破って黒き角となった。
「この角、懐かしいな」
自分で触ってみて微笑むと、ぎょっと目を見開いた。颯タの手がアブソル族のそれに近づいているからだ。
「……足もか」
体がもさもさしてきて熱くなってくる。そウタが確認すると雪のように白い体毛が覆い尽くしていた。
「服も邪魔だ……」
誰もいないのを確認すると、身に付けていた衣服を全て脱ぎ捨てた。
体の七割五分がポケモン化している。
「出口か?」
尻尾も生えて完全にアブソルとなったソウタは二足歩行から四足歩行に切り替えて、光る渦に飛び込んだ。
「ここは……。初めて来た時の場所か?」
雑草が大量に生えている野原にソウタは一人ぽつんと立っていた。
「ていうかイーブイどこだよ」
キョロキョロ辺りを見回しながら状況確認する。
がさがさっ……。
「ん?」
草の揺れる音がした方向を向くと、カミツルギが歩いてきた。
「な、なんだこいつ!」
「お、獲物はっけぇーん♪」
口笛を吹いたカミツルギはジリジリとソウタに近づいてくる。
「なるほど、こいつが敵か」
敵と認識されたカミツルギは、ソウタの異常な速度の辻斬りを躱すことができずに、首を切断された。
「イーブイを探さなくっちゃな」
カミツルギの死体を無表情に眺めて呟く。
そして、三年前よりも速く、ポケトピアの大地を駆けた。
〜☆★☆★〜
「危なかったー……」
俺は今、絶賛逃亡中だ。敵はフェローチェ率いるウルトラビースト軍団。
対して俺は一匹。
見つかる寸前に木の上に登ったからギリギリバレなかった。
「……何か、匂うわ」
フェローチェが俺の隠れる木の近くで言った。
「まだ若くて初々しい雄の匂いが!」
そう叫んだフェローチェの視線は、赤い軌跡を宙に描いて俺を捉えた。
「見ぃつけたぁ」
稲妻のような速度で放たれたフェローチェの蹴りは、俺のいる木の幹をへし折った。
「うわわわわっ!?」
ばたーんと倒れた木から投げ出された俺は敵軍の目の前にいた。
「手柄はとったもん勝ちだああああああッ!!」
一匹のウルトラビーストが吼えた瞬間、周りも活気づき、襲いかかってきた。
「《ストップ》!!」
両手を高く掲げて唱える。水色の衝撃波が発生し、ウルトラビースト達を包み込む。
「当分動けないぜ」
それだけ伝えると踵を返して森の中へと身を潜めた。