41話 我慢の限界
「《氷雪剣》」
イミテーションGRが手から剣をだした。
──はは、お喋り機能もついてらっしゃるんですね。
こちらも《氷雪剣》で対応する。色々な武器に手を出しているせいか、剣捌きで姉ちゃん、ではなくイミテーションに勝てる気がしない。
「わりいな」
身を屈め、体勢を崩したGRの首にハイキックを喰らわせる。
首が吹き飛び、がしゃりと倒れるGR。振り返り、次の敵へ向かおうとした矢先、GRが立ち上がった。
驚きを隠せない俺の顔に剣が突き刺さる。しかし、血は一滴も流れない。
イミテーションでも流石におかしいと思ったのか首を傾げようとしたが、首がないのでできない。
「こっちだ!」
上空から首を失った体に垂直に剣を振り抜いた。真っ二つにきれたGRは二度と動くことはなかった。
「身代わりだぜ」
最後に言い残し、今度こそ別の奴に斬りかかる。
次なる相手はイミテーションBS。
「《火爪》」
「そっちが火なら、こっちは《水弓》だ」
氷雪剣を投げ捨て、水弓を構える。ひゅん、と風を切るように急接近してくるBS。
「速ッ!?」
失敗した。相性ばかりを考えていた自分を恨む。
BSの猛攻に、なすすべもなく後退する俺。背後からRFが参戦する。リーフブレードで俺を串刺しにしようとしているようだ。
前からは爪、後ろからは剣、残るは──。
「上しかねえ!」
ギリギリのところで飛び上がり二体の能天に矢をぶちこむ。
「《雷槍》」
「え──ぐあッ!?」
SDが突っ込んできた。着地していない無防備なままの俺に。
槍は深々と俺の腹に刺さった。
「あああああ!!」
ぐりぐりと槍を動かす。キリキリという痛みが全身を駆け巡る。
「た……す、けて……」
息も絶え絶えに呟く。
尻目に皆を見る。が、アブソルは床に叩きつけられて殺されそうになっている。エルはエーフィ姉ちゃんを庇って大ダメージを受けている。
──皆、死ぬのか? 成り行きとはいえ、折角最強に近いチームになったのに。
突然、体中が、かあっと熱くなった。この感覚、二年前にもあった、そうアルセウスの時だ。
「ぐ、ぅお、おおおおああああ!!」
自分のものとは思えないような雄叫び。力任せに雷槍をへし折り、SDの顔面を握り潰す。動かないように手足ももぎ取る。
──俺は、意識を手放し、怪物じみた力に、全てを委ねることにした。
〜☆★☆★〜
イーブイはSNの心臓に手を突っ込み引っ掻き回す。
続け様にZRの腹を殴り、風穴を開ける。続いてSWが水弓を乱射してきた。
後ろからリボンで首を絞めようとするNFを無理矢理前に引っ張り出し、盾代わりにする。
ドスッドスッ、と尖った矢がNFを貫く。死にかけのNFを地面に叩きつけ粉砕する。
「《三日月刀》」
BRが長刀を振り回して迫ってくる。イーブイはその手首を掴み、あらぬ方向へと曲げた。
果たしてイミテーションに痛覚があるのだろうか。手首を押さえて痛がっているように見えなくもないが、早めにけりを着けた方がいいだろう。
両手でBRの頭を万力のように挟み、一気に砕く。頭部を失った体をぐしゃりと踏み潰す。
RNがアブソルに火炎放射を放とうとしている。そうはさせじと波導弾で一撃玉砕。
「ありがと、イーブイ」
礼には答えずさっさと別の敵を壊しにかかる彼。
MRが銃の形をした武器を構えている。引き金を引いた直後、鋭い痛みを感じた。
しかし、イーブイはそんなことを気にせずに敵陣へ飛び込んで行く。近寄るイミテーション共を破壊していく。
例えそれが肉親の顔だろうと、友の顔だろうと容赦なく滅していく。
〜☆★☆★〜
「──?」
むくりと起き上がる俺。辺りを見回すと、赤黒い血液らしきものと、こちらは断言できる。イミテーションの破片が散乱している。
「何があったんだ? そういや俺、腹に槍刺されたのに……」
腹に手を添え、擦ってみたり、揉んでみたりする。
痛みは無し。気づけば体中の傷が無くなっている。一体何があったのか。
槍が腹に刺さったところから記憶が曖昧だ。
「アブソル達は……」
キョロキョロと状況確認する。近くに三匹共倒れている。
「うん。皆無傷だ……」
イミテーションと激闘の後にも関わらず全員無傷。
摩訶不思議なこともあるもんだ、と思い起こしにかかる。
揺すったり、頬を軽く叩いても意味がない。
「しょうがない。痛いだろうが、我慢してくれ!」
アブソル達に目覚ましビンタが炸裂する。朝、全然起きない子供にするような感じで叩く。
「んぅ……。ふぁああ……」
三匹揃って似たような欠伸をする。
「ほら、さっさと起きて! 城に突入するよ!」
寝ぼけ眼の彼らをおきざりにし、ずんずんと城に侵入する。