40話 アジト
「さあ、これからどうする?」
円になって座りながら話し合う。
「僕達は、君らの所に来る前に和風の城を見つけたよ」
「ど、どこ!?」
「あっち」
エルが指差した方向には、ピンクの空と赤い橋しか見えない。
「お前らどんだけ歩いて来たんだよ」
「わかんない。でも、一度見てるから《空間回廊》で行けるよ」
「おお! 流石だな! 早速行こうぜ!」
「でも、一つ問題があるんだ」
「問題?」
エーフィ姉ちゃんがはたと止まった。
「入口に大量のイミテーションがいるんだ」
「任せろ。全部ぶっ壊してやるよ」
ぱきぱきと指を鳴らし、準備運動をする。その間にエルが回廊を開く。
輪の先に見えるのは城──ではなく何の変鉄もない十字路。
「エル、出る場所違くない?」
「いいんだよここで。もしも真ん前で回廊を開いたら大量のイミテーションが迫ってくるでしょ」
「それもそうだな」
回廊を抜け、周りを見渡す。五つ橋を渡った先に、城が見える。
「あれか。イミテーションが守ってるってこたあ、敵の城だな」
「そうとは限らないわよ。自分の家を守るためかもしれないじゃない」
「そうか。でも、邪魔者は叩き潰すぜ。予想以上の数だったら助けてくれよな、アブソル」
「わ、私!?」
「嫌ならエル──」
「いや、私がやる! 私に任せて!」
「じゃあ、エルは姉ちゃんを守ること。いいね」
「わかってらい!」
ピシッと敬礼するエルの後ろで姉ちゃんが俺にウィンクした。多分、ありがとうって意味だと思う。
「行くぞ」
事前に《三日月刀》を生成しておく。段々とイミテーション共の顔がはっきりと見えてくる。その無機質な顔には、一点の表情もない。
「!!」
最後の橋に差し掛かったところで、先頭にいたルカリオ型のイミテーションが殴りかかってきた。
開戦だ。
最初に来たイミテーションRK(ルカリオイミテーションは長いので頭文字を最後につけることにした)の腹を水平に切り裂く。
「まず、一体!」
続いて二、三体目の眉間を一直線に突き刺し、纏めて始末する。
「やべぇ……。洒落にならねえ程の数だぞ……」
苦笑する俺に五体のイミテーションが攻撃を仕掛けてきた。もう、どれが誰の顔だか分かったもんじゃない。
「ぐぅッ!?」
背中に鋭い痛み。
全く気づかなかった背後からの攻撃。作戦でもあったかのような完璧なタイミングで俺の背中を引っ掻いた。
「砕けろ!」
後ろ蹴りを見舞い、上空からくる奴らに波導弾を放つ。ガラスを割ったような耳障りにノイズ。
「耳がいつか可笑しくなるかもな……」
俺の周りのイミテーションは粗方片付いた。が、アブソルやエル、エーフィ姉ちゃんに群がっていた奴らが攻撃の手を止め、一斉に標的を変えた。
「何で俺なんだよ!?」
言いながら、十万ボルトを撃つ。雷撃はイミテーションSNの心臓を貫く。
あいつらに心臓があるとは思えないが。
「リミッター、解除!」
力が湧き上がる。負ける気がしない。
「うおおおお!!」
咆哮しながら、床を蹴る。我ながら凄まじい速度でイミテーション切り伏せていく。
「てめえで……最後だ!」
イミテーションIBの首を刎ね落とす。自分の死に顔を見るのはあまり気持ちのいいものではない。
「私の助けなんて要らなかったじゃない」
アブソルが溜息混じりに言った。
「でもな、結構傷ついたんだぞ」
背中の引っ掻き傷、頬の切り傷等々。受けた傷は小さいものが殆どだが、数が数なのでかなりボロボロの容姿だ。
「とっとと城に入るぞ」
扉を開けようとエルが近づいたその刹那、勢いよく開いた扉がエルを弾き飛ばした。
「ルカリオ!」
城の中から出てきたのはルカリオ、ロコン、その他諸々。とにかく皆だった。
「大丈夫だったか?」
駆け寄り、話し掛ける。顔をよく見ると、表情は無く、目には一切の光も無い。
まるで、イミテーションのようだ。
「おい、何とか言え──」
ルカリオの強烈な蹴りが俺の腹に叩き込まれた。吹っ飛ばされた俺は床に背中から落ちた。
「何すんだよ!」
訊く耳を持たず、どんどん攻撃してくる。
『あはははは! 本物だと思ったかい?』
どこからか甲高い、気分を害するような声が響いた。
「誰だ!」
『んふふふ。まだ明かせないわ。そうね……この城の天辺までこれたら教えてあげるわ。でも、その前に私の最高傑作を倒さなくちゃね!』
「つーことは、こいつらもイミテーションか」
『その子達は本物と同等の力があるから頑張ってね。あと、こっちには素材があるから時間を掛ければそいつらを幾らでも造れるから。頑張って!』
ぶつん、という音で放送は終了した。
「まあいいや。俺、全員とガチの大喧嘩してみたかったんだよね!」
一秒後、敵味方全員が地面を蹴った。