探検隊ツヨイネの航空録










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三章 太陽の国
25話 脱出を試みるも……
 俺が檻から出た後、レシラムは一言も発さない。様子を伺っていると、大きな欠伸をした。
「イーブイ、私寝るから……。後で起こしてネ……」
 直に、すーすーと寝息が訊こえてきた。
 ──今しかない!
 そう思い、洞窟からこっそり出る。そして、自身に《クイック》をかけて、走り出す。草木を掻き分け、皆の待つ飛空艇が見えてきた。
「おーいいいぃぃぃ!!!」
 手を振って飛び出そうとしたが、何者かに──いや、レシラムに尻尾を掴まれて、森の中に引き込まれた。
「あらあら。逃げちゃ駄目じゃない」
「いつから……気づいてた?」
「最初からよ。実は私、他人の心を読むことができるのよ。だから、名前がわかったのよ」
 恐るべし、伝説。
 再び俺は檻に戻された。これは本当に逃げられなくなってしまったのではないか?
 ほろりと、俺の頬を涙が伝った。直に目元をごしごし擦って涙を拭く。
 ──こんな所で泣いてたまるか! 泣くなら欠伸の時だけで十分だ!
 と、自分を奮い立たせる。絶対に逃げる、という強い信念を持って。
 もう一度本を捲り、解決策をレシラムのページから探す。
「ん、もう一ページあったのか」
 呟きつつ、読む。

 ──レシラムは対象の心を読むことができる。実に厄介な能力だ。しかし、彼女は敵を見つけるためのレーダーのような能力は備わっていないようなので、一旦見失うと、暫くは見つからないはずだ。そこをついて逃げろ。だが、その際に物音をたてるべからず。奴の聴力は鋭いので、確実に感づかれる。

 これだ! 心の中で歓喜の声をあげる。が、これといったタイミングがない。
 様子を伺うように、きょろきょろ周りを見ていると、レシラムに声を掛けられた。
「何の本読んでるの?」
 バレるのを避けるために、体全体で覆い隠す。
「あ! 見られたくない本なのね。年頃の男の子なら当然よね〜。何ならお母さんは奥の方に行ってましょうか?」
「はあ!? 誰が……そん……な……こと……を……いや! するする! めっちゃする! だから洞窟の一番奥に行って!」
「ハイハイ。分かりましたよ」
 レシラムはどすどすと洞窟の奥に姿を消した。どうせ心を見透かされているのだから逃げることぐらいはバレているのだろう。
 檻の隙間は丁度俺が通れるくらいだ。すぽんと抜け、音もなく床に着地する。そして、出口逃げることぐらいは走り出す。
 今度は洞窟の上、モドリ草が生えているところに登る。
「イーブイ〜。どこにいるの〜?」
 やはり、レシラムが追いかけてきた。俺は屈んで草に隠れる。
 ひゅう……と爽やかな風が吹いた。まるで俺の勝利を祝福してくれるかのように──ではなく、まだこの風は俺の敗北の引き金となった。
風で草が揺れ、鼻に触れた。
「ふぇ……ふぇ……ぶえっきしょい!」
 ド派手なくしゃみ。運悪すぎだろと、自分を呪う。
「見つけた」
 レシラムの目が俺を捉えた。
「ちくしょー!」
 やけくそ気味に波導弾を連射する。が、全てレシラムの鋭い爪に切り裂かれた。
「抵抗するなら無理矢理連れて帰るわ!」
「うるせえ! 俺は帰るんだ!」
 リミッターを解き、水弓創り、三本纏めて放つ。三本とも翼に防がれ、貫通とまではいかなかった。だが、刺さった場所からは深紅の液体が溢れた。
 俺は手を休めずに撃ち続ける。絶対に、絶対に反撃されてはならない。
「ぐっ、ぅ……」
 十発を越えた辺りから手が痺れてきた。そして、遂に指が滑りあらぬ方向へ矢を飛ばしてしまった。
 当然ながらそこを狙われた。開かれた純白の翼は今や真っ赤に染まっている。その、血塗られた翼を大きく一振り。すると、熱気を含んだ強烈な風が吹いた。
「うおおお!!」
 体重の軽い俺はコロコロ転がって行く。もっと運の悪いことに、島の端まで来てしまった。あと、もう少しで落ちる距離だ。
「うわあああ!!」
 結局、落ちてしまった。が、ギリギリ突起した岩に掴まり事なきをえたが、まだ安心はできない。
「どこにいるの〜」
 ──バレませんように……。そう願ったのにあっさり見つかった。
「はい、捕まえた〜」
 ニコニコ笑っているレシラムに腕を掴まれた。
「さ、帰りましょ」
 再び、振り出しに戻ってしまったのだった。

だんご3 ( 2017/01/22(日) 00:08 )