16話 2度目の遭遇
―ヤハント城―
「ようこそ、ヤハント城へ。ご用件は何でしょうか?」
俺が城に足を踏み入れた瞬間、兵士がすっ飛んできた。
「えーと、ポケトピアから来たんで王様に挨拶しにいってこいって言われたんで」
「ああ、そういうことでしたか。どうぞお入りください」
兵士に通してもらい、中に入る。目の前にはどこかで見たことあるような奴が立っている。
「ようこそ、私は大臣のウォッカで……あ!」
「あ……」
気まずい沈黙。兵士さえも口を開かない完全なる静寂。この静けさを破ったのはルカリオだった。
ウォッカめがけてマッハパンチをお見舞いする。
「遅い!」
蒼色の閃光がルカリオの肩を貫いた。あの時、俺の太股を撃ち抜いた何かと同じだ。
「ぐっ!」
ルカリオが肩を押さえながら訊く。
「ふ、息子よ《波導銃》だ。弾は私の波導を使用する」
「叩き殺す」
流血する肩から手を離し、《波導棍》生成する。怒った顔で突進するルカリオをウォッカは涼しげな表情で見つめている。
「やめなさいッ!!」
強烈な突きがウォッカの首に直撃する一歩手前で誰かが威厳ある声でストップをかけた。
「アシレーヌ様こ、これは!」
「黙りなさい! 言い訳は無用です。客人よ失礼しました。何かご用ですか?」
アシレーヌと名乗る女性は上品な仕草で謝った。姉ちゃん達とは大違いだ。
「王に挨拶しに来たんですけど」
「あら、夫に会いに来たのね。どうぞこちらです」
先を行くアシレーヌの後をついていく。途中、ウォッカとすれ違い、目があった。俺はにやりと笑い奴を馬鹿にする。
―ヤハント城 王の間―
「よく来なさった! 私はラグラージ。ヤハントの王だ」
「よろしくお願いします」
ラグラージ王と握手をする。すると、別の部屋へ続く扉が勢いよく開き、誰かが走り込んできた。
「わぁ〜!! 退いて退いてー!!」
直後、俺は軟らかい青い壁と堅い床に挟まれていた。呼吸不能となり苦しくなってくる。
「ごめんね。怪我はない?」
優しい声と共に青い壁が無くなり、息ができるようになった。見上げるとお姫様だろうアシレーヌが申し訳なさそうに俺を見ていた。
「こらルミナ。行儀が悪いぞ」
ラグラージ王がルミナと呼ばれた子を嗜める。多分娘だろう。
「ごめんなさい。父さん」
「おい、ちょっと来い」
俺はジャノビーに腕を引っ張られ、皆の後ろに連れていかれる。
「なんだよ」
「俺の気持ち分かるか?」
「唐突すぎて、キモい」
「いいから当ててみろ」
時刻は丁度午後1時。昼飯を食っていないため腹が減ってきたところだ。
「腹減ったのか?」
「ちげえよ。ルミナちゃん、そして俺。分かるか?」
「超意味不明」
「はあ……これだからガキんちょは……」
「同い年だろ」
「精神年齢は俺の方が上なんだよ」
「そんなのどうでもいいよ! で、今の気持ちは何だよ!」
「一目惚れしたんだよ! ルミナちゃんに!」
「いいか、ルミナ、お姫様。お前、平民。分かった?」
「意味は?」
「身分の違い。だから無理」
「違うね。恋に身分やら年齢は関係ない!」
「あっそ。勝手にしろ」
会話を終了させて、最前列に戻る。
「王様ー!」
入り口が開き、ウォッカが入ってきた。すると、アシレーヌ女王が怒鳴り始めた。
「何のようですか! 出てきなさい!」
「客人ですよ! 姫様に!」
負けじと怒鳴り返すウォッカにアシレーヌ女王は納得したような顔をした。次いで謝罪を述べた。
「そうですか。すまなかったわね」
「いえ、怒鳴られるの慣れてますよ。女房がおっかなかったのでね」
「あー、入ってよろしいかな?」
ウォッカの背後から訊き覚えの無い声がした。まあ、ここに来たのは初めてだから当然だけどな。
「どうも、義理父様、義理母さま。そして我妻よ」
「ジュナイパー……」
「ルミナ。俺と結婚する気になったか?」
「誰があんたみたいな屑男に嫁ぐか!」
「そうか……ならば力ずくで!」
ジュナイパーがルミナに飛びかかった。が、ジャノビーが前に飛び出し《草双剣》で防いだ。
「悪いけど、お前に渡すわけにはいかない」
ジャノビーの目は本気だった。2年前、不幸の塔で戦った時の目だった。
「邪魔を……するな!」
ジュナイパーが怒る。そして、姫をかけた戦いが幕を開けた。