15話 ヤハント城下町
風呂から上がり、定番の牛乳を飲みたいところだが、生憎周辺には売っていなかった。
諦めて飛空艇に戻り、フォッコとの戦闘の前に行こうとしていた国のような場所を目指し、飛び立った。
飛空艇に乗っている間、エルの視線が怖かった。
というのも、熱湯風呂に投げ込まれてからエルはずっと俺とルカリオを睨んでくる。
俺を睨み付けながら通りかかったエルに仕方がなく謝った。
「悪かったよエル。でも、エルもずるしたんだから、ちゃらってことな! 決まり!」
エルの背中をばしん! と強く叩く。するとすっとんきょうな声をだし、彼は背中を押さえ始めた。
「どうした? 強すぎたか?」
「……リするんだよ」
「え?」
ぼそぼそとしか訊こえない。
「ヒリヒリするんだよ!」
「ああ、ごめん」
「おーい! 見えてきたよー!」
ミミロップが操縦席から城を指した。見下ろすと城下町がある辺りやはり、国なのだろう。
「あ、ご親切に船止める場所あるね」
ゾロアークが船から身を乗り出して指差した。
「いやー、こんなでかいの入るかなー?」
確かに、と俺は納得した。鉄を40kg、木材を120kg使用したのでかなりの規模となっている。
まあ、外装は海に出た時とほぼ変わりはない。ただ、大きくなっただけだ。
細かいところをいえば限りなくあるが、一番分かりやすいところは帆だ。
前回は黒旗に骸骨。今回は汚れなき白になっている。
「到着したよー」
ぞろぞろと船から降りる。入り口には門があり、上部に吊るしてあるプレートには【welcome to ヤハント】と書かれている。
「ほほう、ヤハントっていう国名なのか」
プレートを見上げながら中に入る。踏み入れた瞬間、門兵のような奴が前に立ちはだかった。
「貴様らは何者だ!」
「ポケトピアから来たけど……入国申請とか必要?」
「下界の民ですか! 失礼しました! どうぞお通りください」
「どうも」
態度が急変したことに驚きだが、気にせず進む。
「下界の民にはちょっとした規則がありますのでお訊きください。と言っても1つだけですけどね」
門兵のガーディが羊皮紙を取り出して読み上げた。この羊皮紙も死刑囚のものだ。
「下界の民は城に行き、王に挨拶しなければならない。ということなのでよろしくお願いします」
ピシッと敬礼するガーディを後に俺達は城を目指すことにした。
「城はまっすぐ行けばつくよね?」
アブソルが奥に見える巨大な城を指した。
「だろうね」
シャワーズ姉ちゃんが答え、先頭を歩きだした。
「珍しいな。姉ちゃんが先頭を歩くなんて」
俺はサンダース兄ちゃんに耳打ちした。すると兄ちゃんはこくりと頷いた。
「確かにシャワーズが前を歩くのは信じられねえな。でも、やる気があるってことで良いんじゃねえか?」
「やる気ねえ……。俺にゃあ何か食いたいって顔してるように見えるんだけど」
シャワーズ姉ちゃんは落ち着きなくキョロキョロ周りを見ている。時折、口の端から涎が垂れそうになっていた。
「お、この和菓子旨そうじゃん」
兄ちゃんは話を中断して芋羊羮買った。俺も何か買おうと考え周りを見る。
「お?」
目が止まったのは古びた骨董品屋。ただのぼろぼろの店なのになぜか、惹かれる。
「イーブイ?」
「ん? やあ、グレイシア姉ちゃん。先に行っててよ。後からすぐ行くからさ」
俺は言い残すと小走りで骨董品屋に向かった。店の中はひんやりとしていて、壁には不気味なお面やら骨やらが飾ってある。
「いらっしゃい……」
「あ、どうも」
店長のルージュラも不気味だ。
「何をお探しかね?」
「特に何も……見に来ただけ」
「そうかい、残念だねぇ……」
深い溜息をつくが、そんなもんじゃあ俺の心は動かないぜ。
「お主14歳じゃな」
「はい、まあ」
年齢を当てられ、ドキッとしたが表情にはださなかった。
「お主ぐらいの子供が好きそうな物を探すから買っておくれ」
「物による」
「そうかい、そうかい、きっと気に入るよ。ほい」
店長が取り出したのは明らかにヤバそうな色をした木の実だった。
「大丈夫なのか? 効果は?」
「秘密じゃ。大丈夫じゃよ使い方さえ誤らなければな」
「効果を教えてくれなきゃ買わない」
「じゃあヒントをあげよう。その実の名前は『野獣の実』。ま、後は考えなされ」
「……わかった。買うよ」
危険な香りがする物は買いたくなる。それが俺。
「毎度あり。300ポケだよ」
俺は代金を支払い店を後にした。長々と中にいたようで、皆は城の門のところに居た。
走って階段を駆け上がり、30秒で登りきり、皆と合流する。
「はあ、はあ……。さ、入ろう」
息切れしながらも扉を力強く押し開ける。王様とちゃんと話せるか不安でしょうがない俺だった。