13話 理不尽
俺は優勝の嬉しさを噛み締めていた。こういったレース等に参加するとダントツで一位なので面白味がなかった。
が、このレースはどうだろう。パートナーと息を合わせて、飛ばなければ優勝は無理だろう。
「太陽のペンダントねぇ……何に使うんだか?」
ブースター兄ちゃんが呟いた。
「ただのアクセサリーじゃない?」
「あ!」
ペンダントを指に引っ掻けてぶんぶん回していたらグレイシア姉ちゃんに引ったくられた。
「ちょっとー。やめてよー」
もう一度姉ちゃんから奪い取り、誰に渡すか悩む。
「エーフィ姉ちゃん、あげるよ」
「なんで私?」
「いや、【太陽】ポケモンだから」
「ありがとー。ふふ、エル、似合う?」
「うん! 超似合ってるよ!」
エルがにっこり笑って答えた。
「じゃあ、なんか奥にある浮いてる城的な所に行ってみようか」
俺はこの村の奥の方に見える国のような所を指差した。
「おう!」
全員が声を揃え、船に向かって歩き出した。その時背後から声をかけられた。
「待ちな」
「あ?」
体を半分だけ向けて見る。そこには怒りに顔を真っ赤にさせたフォッコが剣を構えていた。
「なんだよ? 負け惜しみ言いに来た?」
「太陽のペンダントをよこせ!」
「は? 頭大丈夫ですか? 病院行きますか?」
俺はフォッコを馬鹿にするように頭をポンポン叩いた。
「五月蝿い! 五月蝿い! 俺はそれが欲しいんだ!」
ただいまこの場にいる全員が思ったこと、『理不尽』だ、と。
「そんなに言うなら取りに来てみろよ。返り討ちにしてやっから」
「言われなくてもだ!」
「皆下がっててよ。俺が殺るから」
リミッターを解除し、《氷雪剣》と《草双剣》をだす。因みに、草双剣は1本だけだ。
「オラッ!」
大きく振りかぶった上段切りを氷雪剣で受ける。2本の剣は激しくぶつかり、火花を散らす。
「腹ががら空きだぜ!」
力ずくで弾き返し、露になった胴へ体を捻ってアイアンテールを喰らわせる。
「がふっ!」
フォッコはぶっ飛び、地面に俯せに倒れた。
「もう終わりかよ。つまんねえの」
そう言った瞬間。俺の胸を何かで2度、叩かれた。
「? 何──!?」
直後、叩かれた所から盛大に血が吹き出した。
「な!?」
痛みに方膝をつき、胸を押さえる。が、血は止まらずに、地面を紅く染め上げていく。
「我流剣技《桜花》。切られた箇所から時間差で血が吹き出吹き出す」
「悠長に解説してる暇あんのかよ!」
今度は俺が斬りかかる。フォッコはただ中段で構えているだけだ。
「だあっ!」
横凪ぎに剣を払う。しかし、目の前に奴は居なかった。代わりに俺の腕が切れている。
「我流剣技《鏡花》。相手の攻撃を躱し、鋭い反撃を喰らわせる」
「癒しの……波導」
怪我をした箇所にヒーリング効果のある波導を流す。
俺は再び斬りかかる。フォッコが《鏡花》を発動させる瞬間、背後に回り込み、剣先を背中にツンツンと突き付ける。
「勝負あり、だな」
次の瞬間、フォッコの背中が輝き始めた。直感的にまずい! と思い、後退する。
「我流剣技《炎翼》。効果は短いが絶大な力を手に入れられるのだ!」
フォッコの背中には彼の倍以上ある炎でできた翼がはえていた。
俺はごくりと唾を飲み、更に強く剣を握る。が、感触が一切伝わってこない。
「剣が!」
「あははははは!! 氷は溶けてなくなった! どうやって戦う!?」
「こう戦う」
《水弓》をだし、初めて10本一気に引き絞る。
「な! そんなの見たことないぞ!」
「記憶力悪いな。レースの時見せたろ」
言いながら射った。矢はフォッコの羽を射止めた。そのまま彼は落下していき地面に激突した。
「よーし。次の島行くぞー」
気を取り直して行こうかと思ったがしっくりフォッコが付きまとってくる。
「待……て」
「しつけえ……」
こいつはどう対処したらいいのかさっぱり解らなかった。