2話 買い出し
「ほれ、帰るぞ。……いや、行くぞ、なのか?」
ジャノビーは首を捻って考え出した。
「ええい! 考えると長いからさっさと行け! ジャノビーは二匹を送ったら帰ってこい。わかったな!」
「はあ……わかったよ」
溜め息をついてジャノビーは出ていった。
「さて、ミミロップ。船を造ってもらおうか」
「船? 材料さえあれば明日にはできてるよ」
ミミロップは自慢気に言った。
確かに1日で完成するのは凄いけど。どうやって造るのか気になった。
「なあ、どうやって1日で造るんだ?」
「むふふ。それはお楽しみ! 材料買ってきてくれれば教えないこともないよー」
上から目線にむかっとしたので行かないことにした。
「別にいいや。どうせ、いつかは知れるんだから」
「ごめんごめん! お願いだから買ってきて! はいこれ、メモだから。あとお金。なくさないでね」
「ちっ……ルカリオ、エル、ブラッキー、アブソル、ロコン。行くぞ」
「ええー!? か弱い雌に持たせるなんて最低よー!」
ロコンが文句を言う。
「お前のどこがか弱いだよ! 銀の宝玉の時のあれはなんだったの!? おもいっきり腹を殴られたのに立ち上がって倒したんだぞ! 普通だったら死んでるわ!」
「ぐ……むぅ……しょうがない。行くわよ、アブソル」
気迫負けしたのか嫌々だがついてくようだ。
「う、うん」
「で、イーブイ。紙には何を買えって書いてあるの?」
エルに訊かれ、俺は紙を広げた。
「えー……鉄が40kg、木材が120kg。だって」
「エルが《空間回廊》使えばどうにかなるよね」
ルカリオがちらりとエルを見た。
「まあ、どうにかなるでしょ。金も持ったことだし、行こうか」
「そもそもどこに行くか解ってる?」
ミミロップが出掛けようとする俺達を呼び止めた。
「知らん」
「いい? 町で一番大きな材料屋に行ってきてね」
「解った。じゃあ、行ってくる」
そうして、俺達……いや、少なくとも俺は久し振りに買い物に行った。
―材料屋―
「おう、いらっしゃい!」
店内から迫力のある声が聞こえた。
「どうも……」
ブラッキーがおずおずと挨拶した。それに続いて、アブソルとロコンもお辞儀した。
「俺は店長のカイリキーだ。今日は何のようだい?」
店長を名乗るカイリキーに訊かれ、エルが答える。
「えと、鉄を40kg、木材を120kgください」
「おめえらだけで持って帰れんのか? 何なら送料なしで送ってやるぞ?」
「大丈夫、大丈夫」
エルは自信満々に自分の胸をとん、と叩いた。
「そうか? ならいいんだけどよ……」
「はい、お金」
ルカリオが代金を支払い、換わりに木材と鉄を受け取った。
「エル。頼むぜ」
「はいよー。《空間回廊》!」
しゅるるると丸い穴が開き、ミミロップの部屋が出現する。
「おし、皆でこの中に入れてけ」
俺は木材(10kg)を持ち上げて、部屋に放り投げた。
「俺も手伝うぜ」
カイリキーの助けもあり、作業は5分にも満たずに終了した。
「はー。疲れたー」
その場にぺたんと座り込んだルカリオが呟いた。額から流れる汗を拭い、息を吐き出した。
「帰ろうか……」
俺は痛む腰に手を当てながら空間の穴に飛び込んだ。その後ろから皆がついてきた。
「ありがとう、カイリキーのおっさん」
俺は閉じ行く穴に向かって手を振った。カイリキーもそれに反応し、手を振り返した──と思う。
―家―
「ただいまー」
ミミロップの部屋、正確には研究室は地下にあるので階段を登ってきた。
「あれ? 何で、地下から?」
「《空間回廊》で帰ってきたんだよ」
「便利だねえ」
ミミロップが羨ましそうな顔をしてエルを見た。
「さて、買ってきたことだし。教えてもらおうか」
「いいだろうイーブイ君。実に簡単な話だよ。実は私、前々から3Dプリンターを作成していてだね……」
学者気取りに話だし、俺らを再び地下室に招いた。
「これだよ! この巨大3Dプリンターで、造るんだ! 投入口に材料を入れれば完成さ!」
俺の目の前にはミミロップの言う通り、巨大な機械があった。
「まあ、何はともあれすぐに完成か。後はジャノビーをチームに入れるだけだ」
そうして、俺はジャノビーの帰宅を待つことにした。