1話 お酒って怖い
両親はまだ生きている。と、ジラーチは言った。そんなことがあり得るのだろうか?俺が生まれた時からいないのに。だから、リーフィアとニンフィアは親について何一つ知らない。
「スカイランドってどうすれば行けるんだ?」
ブラッキーが訊いた。
「確か……飛行石が必要だった気がする」
「飛行石? それ何? どこにあるの?」
俺が一気に質問するとジラーチは首を捻って考え始めた。十数秒後、ジラーチは口を開いた。
「飛行石は【空の架け橋】って所にあるんだ。でも、超強い奴が守ってるらしいよ。で、飛行石は何かって言うと、通常、飛行機とかで空へ昇っていくと宇宙に行くだろ? でも飛行石があれば雲を突き抜けて、スカイランドに行けるんだ!」
「へー。で、【空の架け橋】はどこにあるの?」
ニンフィアが更に質問する。
「えっと、神々の山の北にある【地の渓谷】を抜けて【果ての海】の先にある……と思う」
ジラーチは自信無さげに答えた。
「めんどくさいから一気にそこまで飛ばせ」
ブースター兄ちゃんが命令口調で言った。
「うん、別にいいけ━━」
「キャーー!!」
了承しようとしたジラーチの声はゾロアークの悲鳴によって遮られてしまった。
俺達は急いで現場に向かった。すると、ゾロアークの胸にビクティニが顔を押し付けていた。
直後、俺の背後から凄まじい殺気を感じた。恐る恐る振り返ると、鬼のような形相でルカリオが立っていた。
「ああ……飲みすぎだな」
ジラーチが冷めた笑いをした。
「どういうことか説明してくれるかな?」
ルカリオは顔をひきつらせながら言った。
「ビクティニは酒が入ると雌好きになるんだ」
「へえ、そうなんだ」
ルカリオは納得した声を出しながらビクティニをゾロアークから引き剥がし後方に放り投げた。
「んぎゃ!?」
すっとんきょうなミミロップの声。
「むふふふ……ええ乳しとるのをお」
鼻の下を伸ばしながらビクティニが言う。しかも、言葉遣い可笑しくなってるし。
「こっちの乳も……む? ダメじゃな」
ビクティニは師匠の胸にダメ出しをした。
「小さくて悪かったわね!」
師匠の蹴りがビクティニの顔面にめり込んだ。派手に吹っ飛び、窓を突き破って地面に激突した。
「やれやれ……僕らは帰るよ。【空の架け橋】に行きたくなったら言ってね。当分は神々の山に居るからさ」
ジラーチは地面で気絶しているビクティニを担いで去っていった。
「……お酒って怖いね」
リーフィアがぼそりと言った。それに同意するように俺達は頷いた。
「さて、ジャック達はいつまでここに居るんだか」
シャワーズ姉ちゃんがどんちゃん騒ぎ真っ最中の彼らを見た。
「気になるなら訊けば?」
「あのねえブラッキー。私はあいつらとはあんまり仲良くないのよ? 一番親しい奴が行けばいいじゃない」
すると、全員の視線が俺に集まった。
「お、俺!?」
「そ、行ってきなさい」
シャワーズ姉ちゃんが俺の背中を押して無理矢理向かわせた。
「なあ、いつまで居るんだよ」
俺はジャックに訊いた。
「ん? そろそろ帰るぞ。アジトに仲間が待ってるしな」
「あー、私も帰ろ。ペルシアン達が心配してるだろうし」
決断早すぎるだろとブニャットに心の中で突っ込んだ。
「そうか……じゃあな」
俺が別れの挨拶を告げると二匹は少し悲しげな表情をした。
「また、会えるよな」
「ジャック、どうしたんだよ急に」
「いや。お前らと戦うのが楽しくてな」
「なんか連絡手段が必要ね」
ブニャットがうーん、と唸った。
「電話あるか?」
「ん、まあな。海賊も手紙だけじゃきついしな」
「怪盗もトランシーバーだけじゃねえ……」
「だったらお互いの電話番号、メアドを登録しとけば大丈夫だろ?」
この案には両方とも大賛成だった。登録終了後、ジャックとブニャットは徒歩で帰っていった。
「で、ジャノビーはいつ帰るんだ?」
俺はドアを閉めながら尋ねた。
「俺はツタージャとクチートと帰る」
「兄さんロリコン?」
ツタージャが軽蔑した声で言った。
「いや、全然違うから! むしろ年上の方が……」
ここでジャノビーはしまった、という顔をした。
「ごほん! つ、つまりだな、どうせお前らは旅に出るんだろ? そうなるとツタージャ達が危ないから母さん達の所に連れてく」
「成る程。ここでツタージャとクチートとはお別れになるのね」
エーフィ姉ちゃんが言うと皆が白い目で見た。
「な、何よ! 私可笑しいこと言ったかしら?」
「いや、別に、はは……」
ロコンはエーフィ姉ちゃんを馬鹿にしたように笑った。
「なあ、ジャノビー」
「あ?」
「俺のチームに入ってくれないか?」
「それは俺がツヨイネに入るってことか?」
急な申しでにジャノビーは驚いた表情をしている。
「うちのチーム雄が少ないし。巷じゃ『ハーレム探検隊』なんて呼ばれてるからな。それとお前強いし」
「……考えとく」