59話 母親からの贈り物
「ねえ?氷雪の霊峰にどうやって行くか知ってるの?」
リーフィアが訪ねてくる。ミュウに連れてかれたのは俺とリーフィアだけだから知ってるのも俺達だけ。
「おい、イーブイ。氷雪の何とかって何だ?」
ブースター兄ちゃんが聞きに来ると皆も聞いてきた。
ほらな。誰も知らない。
「俺も知らん。だからミュウに連れてってもらう」
「ミュウって誰?」
ロコンがきょとんとする。
「ミュウは俺を連れてった奴だよ」
「神々の山にいるかな?」リーフィアがうーん、と首を捻る。
「何とかなるだろ。じゃ、レッツゴー!」
―神々の山《頂上》―
「あっ、アルセウス。ミュウはいる?俺達氷雪の霊峰行きたいんだよね」
「ミュウ?今日は来てないぞ。何なら俺が連れてってやろうか?」
「あ、じゃあ頼むわ。皆、アルセウスに乗って」
皆がドカドカ乗り込む。
「よし、全員乗ったな?行くぞ!」
アルセウスが空に舞い上がり風が耳を切り裂かんばかりの勢いで通りすぎる。
「あははは!!サイコー!!」
アブソルが叫ぶ。
「着いたぞ」
俺達は数分間のフライトを楽しんだ。
―氷雪の霊峰―
「ぶえっくし!」
サンダース兄ちゃんが派手なくしゃみをした。
「大丈夫兄さん?」
シャワーズ姉ちゃんが心配して聞く。
「ああ、大丈夫だ。寒いけどな」
「お〜い!キュウコ〜ン!いるかー?」
声を張り上げて言うと奥からキュウコンが歩いてきた。
「あら、イーブイ。それにリーフィアも久しぶりね。で?今日は何しに来たの?」
「えーっと…キュウコンは物知りだよね?」
「当たり前よ。何年生きてると思ってるの」
「疾風の星騎士についてなんだけど…」
「疾風の星騎士ね…」
「あいつらの目的は何?」
「お父さん達が何と戦ったか知ってる?」
「ダークマターでしょ?」
リーフィアが口を挟む。
「そうよ。今回の封印は失敗して、あまり長く持たないのよ。で、突如現れた疾風の星騎士が復活させようとしてるのよ」
「復活すると、ゲームみたいに太陽に吸い寄せられて地球は無くなっちゃうの?」
ロコンが質問する。
「その通りよ。前にも話したけど━━」
「あの〜…僕達は聞いてないんですが…」
エルが恐る恐る言う。
「ああ、すまなかったな。そこにいる九匹は宿命を背負っているんだ。その宿命とは、世界危機に危機が訪れる時その大元と戦うことになるんだ」
「どうして?」
グレイシア姉ちゃんが一言。
「それは、大彗星が迫ってきた時から始まった、呪いのようなものかな…誰が決めたのかもわからないものだがな」
キュウコンは俺達を見てフッと笑った。
「で、今回はダークマターと戦うと」
「そういうことだ」
「ダークマターの居場所とかわかる?」
ルカリオの質問に対してキュウコンは少し唸って言った。
「多分…ポケ王国…?」
「嫌よ!私行きたくない!」
ロコンが急に喚き始めた。
「ど、どうしたの!?」
アブソルがなだめるがロコンは一向に聞かない。
「!…そういうことか…」
キュウコンがぼそりと呟いた。
「キュウコン?」
「いや、何でもない」
「そう?…ロコン!何なのか話してくれよ!」
「い、言えないわ…」
「なら、無理矢理引きずってでも連れてく」
「ッ…!好きにしなさい!」
「じゃね、キュウコン」
「じゃあね。…あっ!待て!渡すものがあったんだ!」
キュウコンが尻尾からなにやら取り出した。
「なにそれ?」
俺は訝しげにそれを見る。
「これは《八色リボン》って言ってイーブイのお母さんが作った物よ。この子が一番苦労するだろうって作ったのよ」
「でも、何でキュウコンが持ってるの?」
俺はリボンを受け取りながら聞いた。
「旅に出て帰れなくて時が来たら渡してってシルクに頼まれてな」
「着けてみてよ!」
ニンフィアが急かす。
「えーっ?どこに着けろって言うんだよ」
「しょーがないな…私が着けてあげるよ」
グレイシア姉ちゃんが寄ってくる。
「はあ…よろしく」
「んー…これをこうして…よしっ!出来た!」
キュウコンから鏡を借り、リボンを探した。腕や足、尻尾にも無かった。
顔を見ると耳に蝶々結びで可愛らしく着いていた。
「わあお…可愛いじゃない」
師匠がニヤッと笑った。
「取っていい?」
『駄目!』
皆がニヤニヤ笑いながら言った。
「まあ、ありがとう…」
耳を弄くりながら御礼をした。
「ねえ、そろそろ行こう」ミミロップが肩を叩いて言ってきた。
「うん。じゃあ、行くよ。じゃあね、キュウコン」
「また、おいでよ」
「うん。また来るね」
そうして俺達は氷雪の霊峰を後にして、ポケ王国に向かおうとしたが帰り方がわからない。
「どうしたの?」
エルが訪ねてくる。
「ポケ王国の行き方がわからない」
『ええー〜!!!』
「ど、どどどうするの!?」
リーフィアが慌てる。
「キュウコンがどうにかしてくれるはずさ」
俺達は来た道を戻っていった。