32話 グラードン・カイオーガvsエル・ニンフィア《前編》
―始まる前にちょっとお知らせ
今回は久し振りにエルを主人公にしたいと思います。
イーブイはルカリオにおんぶしてもらいながら階段を上がった。ミミロップはサーナイトに癒しの波動で治してもらった。イーブイは次にやってもらうそうだ。
「うー…腰いてー…」
イーブイが呟く。新しい階層に着くとイーブイはサーナイトに渡された。周りを見渡すと驚きの光景が目の前に広がっていた。スイクン達のいたフロアの5倍はある。それと大きな湖みたいな所と煮えたぎったマグマの入った場所もあった。僕は一瞬揺れたような気がした。
「…?」
急に皆が辺りをキョロキョロ見始める。そしてグラグラと地震のような揺れが起きた。更に湖とマグマが盛り上がり二匹のポケモンが出てきた。それと同時に揺れはおさまった。
「だ、誰だ!」
イーブイはサーナイトに治してもらった腰を擦りながら聞く。
「俺はグラードン」
「私はカイオーガ」
二匹は同時に答えた。
「出たな!よし!作戦会議だ!今回戦い奴!」
「僕!」
勢いよく手を伸ばす。他には誰もおらずイーブイが勝手に決めるかと思われたが誰かが手を上げた。
「おっ!やってくれるのかニンフィア!」
「じゃエルとニンフィアで頑張ってきてね」
ブラッキーが僕の耳元で「ニンフィアに何かあったら殴るよ」と言われた。
「了解しましたよ。シスコン兄貴殿」
「シスコンじゃない!」
ブラッキーの反論を無視して僕達はカイオーガ達の前に歩み出る。
「聞く前に決めるなんて偉いじゃないか!」
グラードンが豪快に笑う。
「だけど勝負は勝負よ」
カイオーガは冷ややかに言った。
「行くよ!」
ニンフィアがグラードンにムーンフォースを撃つ。グラードンは足を踏み鳴らしマグマを噴き出させる。ムーンフォースは弾かれた。ここで僕は一つ疑問を見つけた。
グラードンの特性は『日照り』対してカイオーガは『雨降らし』。両方とも天候に関わる特性なのにこのフロアの中には雨は愚か太陽が照りつけるかのような暑さも感じない。
「天気が変わらないことを疑問に思っているな?」
グラードンがニヤリと笑いながら言った。
「俺達の特性は天気に影響するが今はしていない。なぜなら一つ上の階層にはレックウザがいる。あいつの特性は『エアロック』。つまりこの山全体で天候を変える技や特性が無効になるのだよ!」
カイオーガは話しを聞きながら憎々しげに舌打ちをした。気がつくとニンフィアがいない。よくよく見ればカイオーガの後ろにいるではないか!ニンフィアは超特大ムーンフォースを溜めカイオーガの頭に投げようとしている。
「ねえ!ちょっとこっち向いて!」
ニンフィアが呼ぶとカイオーガはクルリと向きを変え驚いたような表情を浮かべる。カイオーガが迎撃しようと口を開け冷凍ビームの準備をする。
「残念でした!じゃあね!」
ニンフィアはムーンフォースをカイオーガの口に撃ち込む。冷凍ビームは爆発しカイオーガに大ダメージを与える。ニンフィアも爆風で若干ダメージを受ける。
「大丈夫!?」
「うん大丈夫!」
ニンフィアはニコッと笑う。
「倒せたかなあ?」
ニンフィアは不安そうな顔をする。見たところ気絶しただけだ。
「まだだと思う。だけど今はグラードンを狙おう。」
「じゃあ、エル。気を付けてね!」
「へ?…っわ!?」
僕の腹にニンフィアなリボンが巻き付けられる。ブラッキーの方を見ると物凄く恨めしそうな顔で睨んでくる。別に僕は悪くないのに。そう思っていると体が宙に浮いている気がし始めた。いや、『気がした』のではなく本当に浮いていた。ニンフィアが僕をブンブン振り回しているようだ。
「飛ばすよ!」
「まって!心の準備があああ!!!」
ニンフィアは僕の意見を聞かずに放り投げた。僕は覚悟を決め技を出すことにした。
「《列空斬》!」
アイアンテールのままくるくる縦回転しながら突っ込んでいく。
「大地の力!」
グラードンは地面からマグマを噴き出させる。
「うわああああああ!!!」
死を覚悟して飛び込む。意識を集中させ尻尾硬化させる。ジュウと鉄の溶ける匂いがする。歯を食い縛り、回転速度を高める。グラードンの頭が見えそこに連続ヒットさせる。攻撃を終えて戻ってきた時には尻尾は焦げていた。
「熱っついいい!!!」
僕はその場を転げ回った。
「ちょっと来なさい」
サーナイトが僕を呼ぶ。行くと癒しの波動で回復してくれた。
「ありがとう!じゃあ先に進もうか!」
「まだ…まだ終わってなどいない!!」
グラードンは雄叫びをあげる。カイオーガも起きて叫び出す。
『原始回帰!!』
カイオーガとグラードンを光りが包み込む。出てきたときには先程の倍位の大きさになっていた。
「さあ!第二ラウンドよ!」
カイオーガは吠える。
「一筋縄じゃいけないみたいだね」
「そうみたいだね」
ニンフィアは大きなため息をついた。