19話 アブソルとの出会い《ツヨイネが有名になったわけ》
「わーい、皆久し振りー!アブソルだよー!」
「誰に向かって言ってるの?」
ルカリオは周りを見ながら聞いた。
「誰でもいいでしょ。さっ、始めるよ。私が来たのは去年の10月だったかな。」
―10月―
「おはよー。」
「あら、イーブイ。やけに早いじゃない。」
師匠が驚いたように言う。
「昨日ずーっとポケチューブ見てたらさあ…ふわあああああ…寝れなくて。」
大きな欠伸をしながら話す。
ついでに近くにあるカゴの実を頬張った。
「師匠、朝御飯作ってえ…」
「自分で作りなさい。これも修行の内よ。」
「ケチ…」
文句を言いながら俺はトースターにパンを入れ、焼いてる間にポストを見に行った。
どうせ空だろと思いながら蓋を開けると一枚の手紙が入っていた。
「は、入ってる…やったあーー!!師匠!手紙がきたぞー!」
「ただの広告かもよ。」
「うっ…それもある。けど見なくちゃ分かんないでしょ!」
手紙を見ると内容は救助依頼だった。
「っしゃあ!どーだ師匠!依頼だったぞ!」
「へー、良かったじゃない。依頼人は?場所は?」
「んーと、依頼人がアブソルで場所は、地獄山。」
「地獄山?どこだっけ?」
「確か極楽峠を越えた先にあって所々マグマが吹き出してるらしいよ。全員クリスタルランクが必須だったけな。」
「じゃあ何でブロンドの私達に頼んだのかしら?」
「分かんない…とにかく送ったら家に来たんじゃない?」
「早く行かないとヤバそうね。」
「皆起こしてさっさと行くよ!あっ、パン焼けた!」
数分後皆寝ぼけ顔で立っている。
師匠はため息をつき、念力で全員の口にカゴの実を詰め込んだ。
シャキッとした表情ではないが一応起きている。
「で?こんな早い時間に起こしたわけは?」
リーフィアがブスッとした顔で言う。
「久し振りの依頼が来た。早く支度して、地獄山地獄山行くよ。」
俺はバックの中を確認しながら言った。
「で、でもあそこはクリスタルランクしか入れないんじゃないの?」
ロコンが怯えたように言った。
「誰かの命が懸かってんだ。クリスタルだろうがブロンドだか関係ない!みたいなこと言おうと思ったでしょ?イーブイ。」
ルカリオがニヤッとしながら言った。
「その通り。10分で支度してここに集合だよ!」
8分後俺達は予定より少し早く出発した。
目指すは地獄山。だがその前に極楽峠を通ることになる。
そこには『仙人』と呼ばれる奴がいるらしい。
だがただの噂にすぎないが用心するにこしたことはないだろう。
そう思い縛られの種3つと爆裂の種を5つ持っていくことにした。
「ふう、やっと着いたな。」
家を出たのは朝の5時半。
ここに着いたのは9時半。
4時間かけてここまで来たことになる。
「よし、皆行くよ。」
俺達はドキドキしながらダンジョンへと入っていった。
―極楽峠―
内装はふかふかした雲のような床と天使の絵が書かれた壁だけの一本道だった。
道具も何も落ちていなく敵も出てこない。
あるのは目の前の看板だけ。
「看板だな。何でこれだけ?」
サンダース兄ちゃんが困ったような顔をしている。
「えっと、『先に進みたければ己の秘密を打ち明けよ…』だって。」
ゾロアークが声に出して読む。
「はあ?そんなの言わなくても通れるでしょ!」
グレイシア姉ちゃんはすたすたと歩き始めた。
そしてゴン!という音と共に姉ちゃんは踞った。
「だ、大丈夫!?」
姉ちゃんの回りに俺達は集まった。
「やっぱ秘密を言わなくちゃいけないらしいね。」
姉ちゃんは頭を擦りながら言った。
「じゃあ、俺からいくぜ。」
ブースター兄ちゃんが軽い咳払いをする。
「2、3日前の話しだったんだか、リーフィアが昼寝をしていて涎を垂らしていたんだ。俺はそれを手で拭ってやった。それで俺は涎を……したんだ。」
最後の方は何か聞き取れなかった。もう一度聞こうとしたら俺より先にリーフィアが迫る。
「お兄ちゃん。私の涎をどうしたの!?」
「うっ…そ、それは…」
「早く言いなさいよ。」
師匠も加わる。
「だぁああ!分かった言うから!これ以上寄るな!…よ、よし言うぞ…涎を…」
「涎を…?」
全員が喉をゴクリと鳴らす。
「舐めたんだ…」
数秒間の沈黙…
そしてついに兄ちゃんが発狂した。
「うわあああああ!!やっぱ言うんじゃなかったあああ!!」
「変態。」と口々に言われる兄ちゃん。
俺も同情したいけど妹の涎を舐めるってなあ…
兄ちゃんをワーワー責めていたらどこからともなく声が聞こえてきた。
『汝の秘密…しかと受け取ったり…先に進むが良い…』
「じゃあ次は誰がいく?」
エルが聞く。
「あたしが言うわ。」
ロコンが一歩前に出て皆の方を向いた。