探検隊ツヨイネの日常









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一章 中学校生活の始まり
5話 ダンジョンへ行こう!《後編》
―悲しみの森B10階―
「ここが…最深部か?何も無いぞ?」
俺は、少し驚いた。
なぜなら、ダンジョンの最深部には、そこのダンジョンで一番強い野生のポケモンがいるはずだ。
いわゆる、『ボス』っていうやつ?
それか、宝箱が置いてある。
宝箱の中身は、手にいれても定期的にもとに戻っているらしい。
これは、ダンジョン研究者にとって永遠の謎だとか。
「いや、イーブイ、あそこ見て。」
ルカリオの指の向いている方向には、俺達、全員が一度に映れるぐらいデカイ鏡があった。
「ちょうどいいじゃないイーブイ、反り血を浴びた体でも見てくれば?」
ボスも宝箱も無かったからか、シャワーズ姉ちゃんが苛ついた感じで言った。
探検が始まってからの喋り方とはかなり違っている。
姉ちゃんは時間を無駄にしないからなあ…
「ね、イーブイ、さっきのあれってどんな技なの?」
興味津々な顔でエルが聞きに来た。
「んーとねえ…リーフィアがさ、リーフブレード使うじゃん。カッケーな、って思って、尻尾に全神経を集中させて尖らせて斬っただけ。」
「へー!凄いねー!」
「あはは…ありがと。」
俺は照れながら言った。
「じゃ!みんなで鏡に映ってみよー!」
リーフィアが、さっきの階のときとは、変わって元気よく言った。
そうして、みんなで映った。
うわー…
俺、血がべったりだわー…
こんなこと思っていたら、ブースター兄ちゃんが「なあ、ここにいるの飽きたぜ。」
「そうだね。帰ろうか。」
俺が鏡の前から移動したら。
「うわあああああああ!!!!!」
「きゃあああああああああ!!!!」と聞こえた。
何事かと思って振り返ると、俺はここにいるのに、鏡の中の俺は消えずに鏡から出てきた。
こんなの、本当にあった怖い話しに投稿したら完璧採用されるなってぐらい怖い。
そして俺達の前には、誰かが降りてきた。
どこから出てきたのか、恐らく木の上で俺達のことを見張っていたのだろう。
何でかって?そりゃ、肩に葉っぱが付いてるからさ。
「やあ、ツヨイネの皆さん。僕はクロ。」
降りてきた奴は、ブラッキーよりも大人びた奴だった。
「ふふふ、まさか、こんな簡単に罠に掛かってくれるなんてね…」
クロとかいうブラッキー族の青年はにこにこ笑いながら話している。
「おーい、アリシアー、降りてきたらー?」
仲間に呼びかけているらしい。
上に居る仲間は「嫌。」という一言で返した。
「分かった。アリシアは、こんなかの誰かに一目惚れしたんだ。だから恥ずかしくて降りてこれないんだ。」
「はあっ!?そんなんじゃないし。」
「じゃ、降りてきて。」
「はあ…分かったわよ。」
そう言うと降りてきた。
「降りてこなかった言い訳は?」
「あたしと同じ目をした奴がいたから気に食わなかったのよ!」
全員がアリシアの顔をじっと見て、はっ、と何かに気付いたように、エルの方を見た。
「本当だ。エルとあのグレイシアの目が一緒だ。」
普段あまりリアクションをとらないエーフィ姉ちゃんが吃驚ながら言った。
「君、名前は?」エルが聞いた。
「アリシアよ。」
この名前を聞いた瞬間、エルは頭を押さえて倒れた。ぶつぶつと何かを呟いている。
「ア、アリシア?…未来…ううっ!頭が割れそうだ…!」
未来?
俺は、気になるワードを聞いた。
エルは未来から来た。
だけど、久しぶりにエルの口から、未来と聞いた。
「お前ら、何者だ?」
普通だったら最初に聞くはずの質問をした。
「僕達は…」「あたし達は疾風の星騎士の幹部よ!」
アリシアはクロのセリフを奪い取って自分の物にした。
ひでえな、と思った。
「アリシア!僕のセリフ取らないでよ!」
「だってえ、クロがカッコつけてんだもん。」
仲間割れか?
エルはどうなったんだ?
良かった、落ち着いてきてる。
ふざけてるけどあいつら幹部か…強いんだろうな。
「はあ…今日はもう帰るけど、また会いに来るから。じゃあね。」
クロは、ニコニコした顔で消えた。
「そいつを頑張って倒してね♪」
アリシアはそういうと後を追うように消えた。
俺はすっかり忘れていた、偽イーブイが居たことを。
「ルカリオ、師匠、ブラッキー、一緒に戦ってくれる?
」俺はニヤっとしながら聞いた。
ルカリオは「もちろん!」と師匠は「しょうがないわねー。」、ブラッキーは「任せて。」と答えてくれた。
さあ、このダンジョンでのラストバトルだ!
「師匠!サイコキネシスであいつの動きを止めて!ルカリオは波動弾の準備!ブラッキーは悪の波動を!一撃で決めるよ!」
『了解!』
珍しくみんな大声だすなと思った。
「悪の波動!」
「ぐぎゃ!」
偽イーブイが吹っ飛んだところを師匠が「サイコキネシス!」と言ってキャッチした。
そして、ルカリオが偽イーブイの背後から、波動弾を撃ち込んだ。
「ギャアアア!」
俺の方に飛んできた偽イーブイの顔面に、「これで終わりだ!アイアンブレード!」と言って、おもいっきり叩き斬った。
偽イーブイは「グギイイイイイ!!!」と叫んで消えた。
「やった!やったあ!」とルカリオと喜んでいたら、師匠が「勝って当たり前よ。」と言った。
「さあ、帰るか。」と言い、俺達は歩き始めた。
ここで俺は気になることが出てきた。
なぜ俺達がここに来ることを知っていたのか…
「ねえ、今日の朝、ポスト開けたの誰?」
ゾロアークが手を上げた。
「手紙入ってた?」
こくんとゾロアークが頷く。
「手紙になんて書いてあった?」「『大至急、悲しみの森に来てください!』って。」
「どっか、怪しいと思うところ無かった?」
「特に何も…」ゾロアークは、いつもと違い何か、おどおどしてた。
「報酬とか詳しい情報が無かったら、俺に教えてくれ。分かった?」
「うん。」となんだか申し訳なさそうに答えた。
「はあ、とんだ1日だったぜ。」
サンダース兄ちゃんがやれやれ、って顔で言った。
全然戦って無いくせに。
今日はいろいろと気になることが増えた。
エルの過去、疾風の星騎士の奴らのこと。
中学生なのに、超大変だなあ俺…と思いながら俺は帰った。

だんご3 ( 2016/03/09(水) 23:57 )