日常T 〜リーフとユキナとライブ〜
ー???ー
???「あいつらは調子に乗りすぎだ。」
???「あいつらさえいなけりゃ俺達が。」
???「よし、あいつらに恥をかかせよう。俺にいい案がある。」
ートレジャータウン 広場ー
今日は凄くついている。何故かというと、『森の駅』でアダムとイブがまたライブをやるというからだ。
これはこの二匹にとっては、至極幸せ且つ幸運なことだ。
なんとかライブのチケットを取れた。
先着千匹までで、十分〜十五分ですぐに無くなってしまうが、この二匹だけはチケットを取れたのだ。(インターネットで)
生でライブを見られることをどれほど待ち望んでいたことか。
兎に角、リーフとユキナは『森の駅』へと足を運ぶ。
もうすでに沢山のポケモン達で賑わっている。
屋外ライブなので、実際にはチケットはなくても見れるのだが、かなり遠くからになってしまう。チケットを持っているからこそ間近で見れるのだ。
リーフとユキナはただ間近で見れるだけではない。一番前で見れるのだ。しかも、これまた幸運。ライブの最中にアダムとイブがコンサート台から降りて握手や、運が良ければ頬にキスまでしてくれるのだ。
リーフとユキナは、天にも昇る心地だった。
たっぷりとおめかしはしてある。
二匹は、鼻歌を歌いながら歩いていく。
ーライブ会場 舞台裏ー
アダム「なぁ、俺の楽器知らねーか?」
イブ「え?無いの?」
アダムが使おうとしていた数種類の楽器がいつの間にか無くなっていたのだ。
アダムは普段“影分身”を使い、楽器でメロディーを作っているのだが、その肝心の楽器が無いのだ。
イブ「仕方ないわね。ライブ開始まで後三十分だし、あれでいいんじゃない?」
アダム「ん〜、まあ、....マイク足りっかなぁ〜?」
ライブ開始まで後二十分のところでリーフとユキナの二匹は会場に着いた。
チケットを係員に見せ、指定されてある場所に行った。
アダムとイブがライブをやるときは、大抵アダムとイブの独壇場なんだが、今回は色々なグループが参加(参戦)する。そして頂点を目指す。いわば、今回のライブはトーナメント戦となっている。
だが、会場の観客全員が思った。優勝するのはアダムとイブのグループ“ボイス☆ミュージック”だと。
参加するチームは全部で五チーム。大きな大会ではないので、チームも少ない。
観客達はまだかまだかと期待を胸に、湧き上がる興奮を抑え、待っている。
そしてライブが始まった。
湧き上がる大歓声。観客達はかなり盛り上がっている。
最初に出てきたのはペラップ三匹兄弟の“オペラーズ”だ。アカペラでマイクなしでプロのオペラ歌手のように歌う。
綺麗な歌声だが、観客達はそれを理解しない。
欠伸をしたり、携帯をいじっていたりと。
歌が終わり、観客達は渋々拍手をする。“オペラーズ”は泣く泣くその場を退出する。
リーフ「ねえ、“ボイス☆ミュージック”はまだ?」
ユキナ「え〜っと....五組目ね。」
リーフ「え〜。長い。」
ユキナ「我が儘言わないの。あのチームだって出るんだから。」
あのチームとは“ボイス☆ミュージック”が生まれる前に人気だった“N4”のことだ。“N4”とは、カブトプス、ゴウカザル、ラティオス、ラティアスの四匹で構成されたグループだ。
歌と楽器で全ての観客を魅力する天才ミュージシャンなのだ。
でも、“ボイス☆ミュージック”が誕生してからというもの、その人気は激減。密かに恨んでいる。
二組目はその“N4”が出てきた。そこそこの大歓声。ラティアスが歌い、他は奏でる。曲のタイトルは「輝 〜ヒカレ〜」。
彼等の曲のタイトルは、明るいものが多い。生きる希望を与えるような曲を作る。
歌が終わると観客達は大いに盛り上がっていた。
三組目、四組目と続き、そしてとうとう“ボイス☆ミュージック”の番になり、アダムとイブが出てきた。
ただ出てきただけというのに、盛り上がり方が尋常じゃない。
イブが観客達の興奮を抑え、アダムが口を開く。
アダム「本日はこのトーナメント式コンサートにお越しいただきありがとうございます。本来俺達は新曲の「未来の旅」をやるつもりだったのですが、俺の楽器が何故か紛失してしまった為、出来なくなってしまいました。大変申し訳ありません。」
観客達はざわざわしている。
そんな観客達を見て、イブは
イブ「でも皆さんご安心ください。今日は特別サービスだと思ってください。普段はアダムが楽器で演奏し、私が歌うのですが、今回は違います。“ボイス☆ミュージック”の本気をお見せします。どうぞお楽しみください。曲名は、私達のデビュー曲「冷酷な悪魔のモーゼ」です。」
イブが話し終わると、アダムが“影分身”をし、皆マイクを持った。
リーフ「何をするんだろ?」
ユキナ「アカペラ....じゃない?」
リーフ「アダムさんがメロディー作ってイブさんが歌うってこと?」
ユキナ「じゃないの?」
そして始まった。
だが、楽器がないにもかかわらず、会場にはドラムやトランペットの音が聞こえる。
イブはただメロディーに合わせて歌っている。
わかっていることは、アダムが時々休みながらマイクを口に持っていき、恰も楽器を使っているような仕草、ジェスチャーをしている。
リーフ「え!何あれ!?どうやってるの!?」
観客全員は曲どころではない。どこからどうやって音を出しているかが不思議で気が気でない。
演奏している最中、アダムとイブが舞台から降りてきた。
そしてリーフとユキナの前に行き、握手をした。
握手をしたあと、リーフとユキナは声にならない声をだして、めちゃくちゃ興奮している。
他数匹に握手をしたあと、イブは舞台に戻ったがアダムはまだ残っている。
そしてリーフとユキナに追い討ちをかけるかのように、チュッと頬にかるくキスをした。
キスをされた二匹は倒れなかったものの、鼻血を出した。持っていたティッシュでふく。
アダムも舞台に戻り、曲を続ける。
曲が終わり、観客達は言うまでもなく、この上なく盛り上がっている。
この五組から一組だけ選ばれる。
まぁ、結果は当然の如く
司会者「優勝は“ボイス☆ミュージック”です!おめでとうございます!」
発表が終わると、観客達は至極喜んだ。中には、当然の結果だ、と納得しているポケモンもいた。
その後、“ボイス☆ミュージック”は小さな優勝カップが渡された。
ライブ終了後....
ー???ー
カブトプス「まさかあんなスゴ技を隠し持っていたとはな。予想外だった。これじゃ、隠さない方が良かったかもしれないな。」
ゴウカザル「まあ、まだチャンスはあるだろう。次だ次。」
ートレジャータウン 広場ー
リーフ「あぁ〜、超幸せ。もう死んでもいい。」
ユキナ「徳したねぇ〜、私達。」
リーフ「握手だけじゃなくキスまでしてくれたし。」
ユキナ「しかも、スゴ技まで見せてくれたし。ホント、流石ね。〈サウンドクリエーター〉は。」
リーフ「でも、あのスゴ技は一体何なんだろう?」
すると後ろから
イブ「ビートボックスよ。」
イブが話してきた。
リーフ「おわぁ!い、イブさん!」
イブ「あ、驚いちゃった?ごめんなさいね。」
ユキナ「え、えーと....なんですか?ビートボックスって。」
イブ「そうねぇ、まあ分かり易く言えば、口だけで色んな楽器の音を出す事が出来るのよ。それにアダムは仙降地で唯一ビートボックスが出来る“ポケモンビートボクサー”なの。」
リーフ「へぇ〜。イブさんも出来るんですか?」
イブ「あれはアダムが生み出した技だから。私も教えてもらう気もないから。だから私は出来ないわ。」
ユキナ「じゃあその、ビートボックスはアダムさんだけが出来るんですか?」
イブ「そうよ。」
ファンでも誰一人(いっぴき)としてビートボックスの存在を知らなかった。ましてや、アダムがビートボックスを出来ることなんて知る由もなかった。
イブ「まあ、ビートボックスは珍しくて、人気がかなりでるからあまり使いたくないってアダムが言ってたんだけどね。」
イブは軽く笑う。
記者「いたぞ!あそこだ!」
イブ「あらあら、見つかっちゃった。じゃあね。」
リーフ「あっはい。」
イブはかなりの速さで走っていく。
その後に記者達がのろのろと走っていく。
周りにいた野次馬も見送っていた。
とりあえず、充実し、幸せな1日を送ることの出来たリーフとユキナだった。