日常X 〜フィナと弟子〜
ートレジャータウン 広場ー
広場を歩くポケモンがいた。
そのポケモンは、アダムとイブのライブのチケットをとれなかったことを、心の中で悔やみながら歩いていた。
顔では怒っていなくても、心の中ではイライラしていた。
だから
ヘルガー「よう、ねえちゃん。今から俺といいことしない?」
フィナ「....悪いけど今はほっといて。」
もしもナンパしようとするポケモンがいれば
ヘルガー「そういわずにぃ〜」
フィナ「........。」
ヘルガー「なぁ?」
フィナ「うるさい」ドンッ!
ヘルガー「うがあぁ!」
こうなってしまう。
因みにヘルガーは今、広場で気絶している。
フィナはまた歩き出した。
数分後、野次馬になっているところがあったので、気になったフィナはそこへ行ってみた。
何があるのか見て見ると、二匹の小さなポケモンがいかにも悪そうなポケモンに何か文句を言われているみたいだった。
もう少し近づいてみると会話の内容が聞き取れた。
マリル「本当にすみませんでした。」
エレブー「いや、ぜってー許さねー!金返せ!」
他のポケモンに話を聞いてみると、自動販売機で飲み物を買おうとしていたエレブーに、はしゃいでいたルリリがぶつかり、二十円を自動販売機の下に落としたらしい。
フィナ「........あんたさぁ、」
エレブー「あんだ?てめぇは。」
フィナ「ほんっと小さい奴ね。」
エレブー「んだと?」
フィナ「....ただそれが言いたかっただけ。じゃ。」
フィナはエレブーの横を通り過ぎようとする。
勿論エレブーはフィナを止める。
エレブー「待てよ!」
エレブーはフィナの尻尾を掴んだ。
尻尾は、フィナの逆鱗であり、更に今はかなり機嫌が悪い。だから、今は最悪の条件が整ってしまった。
その後エレブーは、ボコボコ....じゃ済まないくらい無様な姿になっていた。
そしてフィナはまた歩き出した。
しばらく歩くと小高い丘の上にいた。
少しばかり大きな木があり、小さい日陰を作っていた。
フィナは気を落ち着かせる為に、日陰に入り、寝る体制に入った。
その様子を草陰から覗いているポケモンがいた。
それに気付かないフィナではない。
フィナ「いつまでも隠れているつもりなら、ぶっ飛ばすよ。」
マリル「ご、ごめんなさい。」
ルリリ「ごめんなさい。」
草陰から先ほどエレブーに絡まれていたルリリとマリルが出てきた。
フィナ「........私に何か?」
マリル「あ、あの、さっきは助けていただきありがとうございました。」
フィナ「?助けて?」
フィナは何のことだかさっぱりみたいだ。
マリル「はい。エレブーに絡まれていたところを....」
フィナ「あぁ、あれ?あれは思ったことを言っただけだけど。」
ルリリ「あ、あの、これ。お礼です。」
そう言ってマリルの隣にいたルリリはフィナの近くに行き、小さなお菓子を三個程渡した。
渡したルリリの表情は、少し硬いが笑っている。
フィナは「ありがとう。」と軽く微笑みながら一言言った。
するとマリルが
マリル「....あの、いきなりで失礼だと思うんですが、あなたにお願いがあります。」
フィナ「何?」
マリル「私を....私をあなたの弟子にして貰えませんか?」
フィナ「弟子?」
マリル「はい。私達の母は病気で亡くなり、父は母が亡くなる前に出て行ったきりで、今は二匹だけで暮らしているんです。だから私が少しでも強くなって、妹を守りたいんです。お願いします!」
フィナ「............。」
フィナは少し考えた後、結果を出した。
フィナ「....悪いけど寝かしてくれる?後私、弟子はとらないから。」
マリル「えっ?何でですか?」
フィナ「私は相手に教える程強くはないし、第一面倒くさい。」
マリル「お願いします!」
マリルが頭を下げると、フィナは起き上がり、マリルのもとへ歩いて行くと
マリル「?」
マリルが頭を上げた瞬間、フィナのリボンがマリルに直撃した。
マリルは「うわっ!」と声を上げ、軽くぶっ飛ばされた。
ルリリはマリルを心配して、駆けつける。
フィナは呆れている。
マリル「なっ、何するんですか!?」
フィナ「こんなのがかわせない奴には何を教えても無駄。」
そう一言残してフィナは帰ろうとした。
だが、そうはいかなかった。
エレブー「待てよ。」
あの時フィナがボコボコにしたエレブーがフィナを止める。
エレブーの後ろからは、ナンパしてきたヘルガーがいた。
ヘルガー「あの時はよくもやってくれたな。」
フィナ「あれはあんたが悪い。」
ヘルガー「へへ、あん時は油断していたが、今度はそうはいかねーぜ!」
マリル「(ここで私がやれば....)」
マリルは立ち上がり、フィナの加勢に入る。
マリル「私も戦います!ヘルガーくらいなら相性がいいので倒せます!」
ヘルガー「威勢がいいじゃねーかよ、お嬢ちゃんよぉ。」
フィナはマリルを止めようとするが、マリルは聞かずに突っ込んで行く。
マリル「ルリリを守る為に幼なじみと特訓して身に付けた技!アクアジェット!」
マリルは体に水を纏わせ、ヘルガーに突っ込む。
ルリリは少し心配そうにみている。
ヘルガー「....ばーか。」
フィナ「!危ない!」
マリル「え?」
気がつけば、マリルは木にぶつかっていた。
マリルがヘルガーにぶつかる寸前にエレブーが“かみなりパンチ”を繰り出し、マリルをぶっ飛ばしたのだ。
マリルは気絶寸前の状態だ。
ルリリは心配してマリルに駆け寄る。
フィナ「........。」
エレブー「ふっ、くずが。」
フィナ「............ねぇ。」
エレブー「なんだy....ぐあぁぁ!」
フィナは少し大きめな石を投げつけた。
石は見事にエレブーの顔面に命中した。
当たる直前にフィナの方に振り向いた為、もろにくらった。
エレブーは悶絶していて戦意喪失だ。
だが、
ヘルガー「後ろががら空きだぜ?」
フィナ「!!」
いつの間にかエレブーの近くにいたヘルガーがフィナの後ろに回り込んでいた。
フィナは突然のことで反応が鈍くなっていた。
ヘルガー「終わりだ!」
ヘルガーがフィナに飛びかかった。
その時
マリル「うぉぉぉぉぉ!!」
ヘルガー「何!?」
エレブーに吹っ飛ばされて気絶寸前だったはずのマリルが“アクアジェット”でヘルガーに突っ込んできた。
ヘルガー「ぐあぁぁ!」
“アクアジェット”は見事に命中。
ヘルガーはフラフラしている。
そしてとどめは
マリル「ハイドロポンプ!」
ヘルガー「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
マリルの“ハイドロポンプ”はヘルガーに直撃した。
マリル「や、やった。」
フィナ「マリル」
マリル「はい!」
マリルが振り向いた瞬間、フィナのリボンが振りかざされた。
マリルはギリギリでかわしたが、二発目はかわせず当たってしまった。
だが、なんとか受け身をとり、即時に体制を立て直す。
マリルはその小さな足で自身の体をギリギリではあるが支えている。
マリル「ハア....ハア....」
フィナ「........今のを喰らっても立ってられるって事は決意は本物のようね。さっきは助けてくれてありがとう。それにしても、あなたは気絶寸前だったはず。どうして戦えたの?」
マリル「はい、実はこんなこともあろうかとオボンの実を持参していたのです。」
フィナ「そう............弟子、考えておくわ。」
マリル「ほ、本当ですか!?」
マリルはルリリと一緒に喜んでいる。
だが、その二匹に対しフィナは真剣な面持ちだ。
フィナ「あなた達に話さなきゃいけないことがあるの。聞いてくれる?」
マリル・ルリリ「?」
フィナはこれからのことをマリルとルリリに話した。
マリル「そうなんですか..じゃぁ、もし生きて帰ることが出来たら私を弟子にしてもらえますか?」
フィナ「ええ。私も帰ってこれるってことは、強くなってるってことだから他人に教える程の実力はあると思うから。」
マリル「ご武運をお祈りしています。」
フィナ「ありがとう。」
フィナはマリル達に背を向け、家路へと足を運んだ。
その途中でマリルがフィナに一言
マリル「明後日の正午、見送りに参ります。」
フィナはマリル達に対して軽く笑顔を見せ、家に帰っていった。
それを見送ったマリル達は後から家に帰った。
因みに残されたヘルガーとエレブーは、その日の夕方に目を覚まし、少々無様な姿で大人しく家に帰っていった。