成り立ちの元・ブイズの先祖
ー本部ー
“ビッグディッパー”と“チームブイズ”が『愚者の谷』から戻ってきた五分後に“サザンクロス”と“ブイズ組”が到着した。
“チームブイズ”は〈粉塵爆発〉、ナイトメア四幹部、そして何よりもアダムとイブにあったことを。“ブイズ組”はナイトメアの下っ端と怪奇現象を肴にして話している。かなり盛り上がっている。
一方、“サザンクロス”と“ビッグディッパー”はというと、
ライザ「しかし驚きだな。まさかナイトメア四幹部の一匹、『瞬速の銀爪〈シルバークロウ〉』を倒して連れてくるとは。」
セル「いや、正確には倒したのは有名なバンドのリーダーのアダムだ。」
ライザ「アダム?あいつは探検隊でも何でもねーだろ。」
セル「事実は事実だ。」
確かにアダムがマニューラを倒したのは事実だ。
しかも、一般ポケモンとは比べものにならない強さを持っていた。
クロウ「そうだ、ライザさん。これ。」
クロウはバッグからあるものを取り出してライザに差し出した。
そのあるものとは、クロウが『幽霊の館』の子供部屋で見つけた〈仙降地伝記〉のことである。
その古びた見た目からは、時代の移り変わりが感じられる。
セル「おっ、お前らも任務を果たしたのか。」
クロウ「任務?」
クロウはその“任務”という言葉に対して疑問を持った。
その後にセルが「あっ。」と言った。恐らく口を滑らせてしまったのだろう。
ライザ「あ〜あ。」
ライザが若干呆れたような表情を浮かべた。
フィナ「ちょっといいですか?」
さっきまであっちで話をしていたフィナがいつの間にかこっちに来ていて、三匹の話に割ってはいった。
疑問を持っているから仕方がないのだろう。
フィナ「セルさんに色々と聞きたいことがありますが、あえて一つだけお聞きします。」
セル「なんだ?」
フィナ「究極三刀流派弐ノ舞、“トキサメ”。誰から学んだんですか?」
セル「........あれは俺のオリジナルだが?」
確かにそう考えるしかない。というよりその答えが妥当だろう。
変な間はまだいいとしても、まだ気になることがフィナにはある。
フィナ「私達が『地底の監獄』に行った時もその業を使ったポケモンがいました。でも、その時と声も速さも違いました。」
セル「あー....」
返答に困るセル。ライザもフォローしようとしているが、いい言葉が出てこない。だから
セル「仕方ねぇ。話すか。」
ライザ「話すかって、別に知られてまずい内容でもないけどな。」
いつの間にか、盛り上がっていたブイズ達も話を聞こうとしていた。
セル「究極三刀流派弐ノ舞、“トキサメ”。あれは先祖から代々受け継がれてきた業だ。まあ、もともとは仙人の業なんだがな。」
ライザ「俺も同じだ。ライジングショット、これは仙人の恋人から学んだものなんだがな。」
二つとも仙人関係の業らしい。通りで強いわけだ。
ボルト「いいなぁ〜。先祖代々受け継がれてきた業。俺も欲しいな〜。」
ボルトが物欲しそうな顔で言った。他のブイズ達も若干ではあるが、ボルトに賛同している様子が見られる。 その気持ちはわからなくはないが。
すると、セルが意外なことを口にした。
セル「いや、君達の先祖もかなりの実力者だったよ。なんせ、周りからは“八ブイ士”なんて呼ばれて尊敬されてた位だからね。」
“八ブイ士”....似たような言葉をどこかで。(それは置いといて)
で、それを聞いたブイズ達はぽかんとしていた。すぐに内容を理解するのもかなり大変だからわかるっちゃわかる。
これを聞いて色々と聞きたいことはあるが、まずは、
クロウ「“八ブイ士”とは?」
かなりの実力者以前にそっちが気になるブイズ達。
セル「これは親父から聞いたはなしなんだがな、君達の先祖は仙人の恋人、つまり〈六道咲霊奈〉の守護していて、しかも仙人も認める程の力を持っていたらしい。」
なかなか話についていけないブイズ達。ただわかったことは、自分達の先祖はかなりの実力者だったということ。そして仙人の恋人の守護をしていたこと。
そんな先祖を持っているのに何も感じないブイズ達。
ボルト「俺達何も聞いてませんが。」
ライザ「無理も無いだろう。本来ならば俺達と同じく、試練を乗り越えた時に始めて話すもんなんだがな。」
ブイズ達「試練?」
解決されていない疑問に上乗せするかのように、また疑問が降ってきた。
とりあえず、試練から聞いていくことにした。
セル「八つの宝玉を一つ一つ、それぞれ一匹で取ってこなくちゃいけないんだ。しかも、宝玉がある洞窟や塔の難易度はどこも“銅”だ。」
“銅”というと、ブイズ達は今“青”だから、そこから数えると三つも上のランクである。
“サザンクロス”と“ビッグディッパー”が“金”だから、この二チームでも多少苦戦するであろう。そんなところだ。
それを一匹で挑戦しても、とてもじゃないが突破出来ない。
それにまだ続きがあるらしい。
ライザ「宝玉にはそれぞれ伝説のポケモンが守護神としてついているらしい。そいつらに勝てば、宝玉を持つべき者として認められ、宝玉が渡される。」
セル「詳しくはこの〈仙降地伝記〉に記されている。誰がどの宝玉を持つべきか、どんな伝説ポケモンがいるのかなどがな。」
そしてセルは〈仙降地伝記〉を開いて、声に出して読み始めた。
(↓セルが読み上げています)
八つの宝玉を持つべき者八ブイ士なり。
其の木ノ葉舞う森林『仁』なり。
其の心優しい真摯の悪『義』なり。
其の絶対的超能力『礼』なり。
其の強かな清涼妖精『智』なり。
其の迅速で轟く雷鳴『忠』なり。
其の吹雪く絶対零度『信』なり。
其の潤い与える恵みの水『孝』なり。
其の焼き尽くす紅蓮の炎『悌』なり。
八宝玉の力解き放つ時、究極の技生み出す。
(↑ここで終了)
これをブイズ達は真剣に聞いていた。そしてみんな納得した。
更に誰がどの宝玉を持つべきかもわかった。
仁ーリーフ
義ークロウ
礼ーナギ
智ーフィナ
忠ーボルト
信ーユキナ
孝ーウォート
悌ーホムラ
となる。
その後に、ライザがあることに気付いた。
ライザ「なぁ、この宝玉が納められているダンジョンの名前、他のに比べて微妙に新しくないか?」
よく見ると確かに他の文字よりも少し字の色が濃い。それと字の形からして、書いたのは全く同じポケモンだとわかる。
セル「........どうでもいいだろ。同じ奴が記したんだろうし。」
クロウ「それで、俺達はどうすれば。」
セル「とりあえず、このダンジョンに行ってくれ。別に今すぐとは言わないがな。準備が整って、その気があるなら行ってくれ。」
クロウ「わかりました。」
セル「これを見て行くべきダンジョンに行ってくれ。」
そう言って〈仙降地伝記〉をクロウに渡した。
クロウ「ありがとうございます。....じゃぁ、一旦帰ろう。」
そしてブイズ達はクロウを先頭に帰っていった。
と、思ったらクロウが戻って来た。
セル「どした?」
クロウ「........任務って何ですか?」
先祖と〈仙降地伝記〉で話が進んでスッカリ忘れていた。
戻る途中で何とか気付くことができた。
セル「まあ、上の命令でな。俺らは『大爆発事件』の調査、コイツらは『幽霊の館』の怪奇現象の調査と〈仙降地伝記〉を見つけること。」
ライザ「不確かな情報だったが、まさかあるとは思わなかったんだがな。」
クロウ「そうだったんですか。ありがとうございました。」
本部の入口付近でボルトが呼んでいる。
クロウは二匹に軽くお辞儀をした後にみんなのもとへと走っていく。