星の戦士と共に 北斗七星side
二日後・・・
セル「ほいじゃ、行こうか、チームブイズ。」
ライザ「俺達も行くか、ブイズ組。」
ブイズ達「はい!」
(ここからビッグディッパー編)
ー愚者の谷 入口ー
セル「あ、そういえば、紹介を全くしてなかったけど。わかるよね、こいつら。」
メラク「こいつらって失礼じゃない?いくら一緒に過ごしてきた仲間とはいえ、こいつって何よ。」
セル「わりィ、わりィ。」
ホムラ「....えっと、“ビッグディッパー”はセルさんを中心にメラクさん(マフォクシー)、ミザールさん(ダーテング)、アリオトさん(フタチマル)ですよね?」
ミザール「うむ、知っているなら大丈夫だろう。」
アリオト「あ、因みに君達のことはセルから聞いてるよ。よろしくね。」
チームブイズ「よろしくお願いします。」
セル「んじゃ、そろそろ行くか。」
そして“チームブイズ”と“ビッグディッパー”は『愚者の谷』の中へと入っていった。
その近くには気配を消したポケモンが一匹....
ー愚者の谷ー
『愚者の谷』はその名の通り、世の中で忌み嫌われた愚か者達が集まる谷である。深い霧が立ち込め、嫌な空気が漂っている為、誰も近付かない。“ビッグディッパー”や“サザンクロス”でさえもあまり行きたがらない場所だ。
それは今仙降地を騒がしている“ナイトメア”でさえ、この場所を嫌っている。
それに『愚者の谷』のポケモン達も、時々挑戦してくる探検隊を嫌っていて、見つけ次第、理由は何であれ直ぐに攻撃してくる。
因みにこのダンジョンのランクは「悪」である。探検隊ランクでいうと「藍」に等しい。
ベトベター「消え失せろ!“ヘドロ爆弾”」
スカタンク「死ね糞野郎共!」
マタドガス「今すぐ帰れ!」
そんな罵声が飛び交う中、敵の攻撃を華麗にかわしていく“ビッグディッパー”、敵の攻撃を自分の攻撃で相殺したり、時々敵に攻撃を当てながら進んで行く“チームブイズ”。
すると....
ガブリアス「お前ら、ここへ何しに来た?」
左胸から右腹部にかけて大きな傷があるガブリアスが奥から出てきた。
ガブリアス「ここから先は神の怒りに触れる。今すぐ立ち去れ!」
セル「....この谷で最も愚かなポケモン、ガブリアス。」
ガブリアス「神はお前たちにお怒りだ。神の力は底知れない。怪我をしたくなければ立ち去れ!」
ボルト「っせーなぁ。神って何のことだよ?」
セル「ちょ、ちょっといいかい?」
ボルト「はい?」
セルはチームブイズを連れて小声で何かを伝え始めた。
セル「君達、この『愚者の谷』の最奥部で大規模な爆発が起きた事は知ってるよね?」
フィナ「確か、死者が86匹もいて、怪奇現象かとも言われた大事件ですよね?」
ウォート「そうそう。しかも事件の手掛かりになるものが使用済みのマッチ一本だけっていう不思議な事件なんだよね?」
ボルト「そ、そうそう。(汗)」
ホムラ「そういえば最近ニュースで、白い粉が微量見つかったって言ってたよ。」
セル「あぁ、そうだ。この谷のポケモン達はその事件は神様の仕業だと思っている。だからあれ以来、この奥に行くことを禁じているんだ。なんせ、神様の聖域だからね。」
その〈事件〉とは、今から数十年前に起きた出来事で、『愚者の谷』の最奥部に納めてあると言う財宝を盗みに、百匹近くの盗賊が押し掛けて来た。最奥部に着いた盗賊達は、財宝を盗もうとした。すると、突然白い粉が周りに散り始めた。そして急に大爆発を起こした。
....と言われているが、これはあくまで仮説である。
『愚者の谷』のポケモン達は〈神様〉と言っているが、周りのポケモン達は〈呪い〉だとか〈祟り〉だとか言われている。
ホムラ「....って何でこんな所で力試しをしにきたんですか?」
セル「あー、え、えーっと....」
アリオト「もう誤魔化しは効かないみたいだぞ。」
メラク「仕方ないから全て話したら?」
ミザール「....やむを得んだろう。」
セル「........フゥ」
フィナ「やっぱり訳ありだったんですね。」
ガブリアスは無表情だが何もしてこない。
周りには『愚者の谷』のポケモン達が集まっている。
霧は少し晴れている。
そんな静寂な環境の中、“ビッグディッパー”のリーダー、セルはゆっくりと口を開いた。
セル「....力試しというは本当だ。だが」
ボルト「?やっぱりまだ何か?」
セル「あの事件の調査を一緒にさせようとしたんだ。」
フィナ「やっぱり裏があったんですね。」
ガブリアス「....そろそろ時間だ。消えろ。」
ガブリアスの合図で周りのポケモン達が一斉に襲いかかってきた。
中には特殊攻撃を仕掛けてくるポケモンもいる。
前後左右上に死角はない。
かわしようがない。数も多すぎる。
これは....絶体絶命!
セル「....あれを使うか。」
セルが不思議な構えをとった。
セル「いけるかどうか分からないが....」
小さな旋風が起きた。
セルの尻尾が緑色に光り始めた。
セルはかなり集中している。
セル「....究極三刀流派弐ノ舞、“トキサメ”!」
フィナ「!?」
セルの姿が一瞬にして消えた。
そして敵が次々と倒れていく。
だが、次の瞬間....
ボコッ
セル「!しまった!」
セルが方向転換の為に、岩壁に足を着き、勢いをつけようとしたのだが、その岩壁の岩が脆かったようで、岩が崩れてバランスが崩れてしまった。
セル「くっ!ここまでか....」
ミザール「セル!....流石の俺達でも、この数相手だと....」
すると、どこからか声が聞こえてきた。
???「やれやれ。僕と同じランクなのに、ホント情けないな〜君達。」
話が終わったと同時に、ボルトの横を『何か』が通ったようで、風が起きたことを感じた。
それはボルトだけでなく、皆も同じだった。
その『何か』は音を全くたてずに敵を蹴散らしていく。
その中で、セルは黒い部分があることに気づいた。
更に、驚いたのが、この数相手に一匹で倒しているということだ。
“ビッグディッパー”でも諦めていたのに対して、迅速で敵を倒している一匹のポケモン。
気がつけば、『愚者の谷』のポケモン達はガブリアスをはじめ、皆倒れている。どうやら片付け終わったようだ。
だが、その『何か』はどこにも居なかった。
ウォート「....何だったの?」
セル「とにかく先へ進もう。その件についてはまた後で。」
“チームブイズ”と“ビッグディッパー”は先に進んでいく。
奥に進んで行くにつれ、段々と霧が晴れていく。
静寂な時間が過ぎていく。
すると、光が見えてきた。
ー愚者の谷 最奥部ー
そこは、円形に開けた場所で霧も晴れていてさらには上から陽の光が差し込んでいる。崖の上には木々が並んでおり、案外自然豊かなところであった。
奥には小さな祠がある。
そしてもっと不自然に思ったことは、謎の大爆発事件が起きた現場はここだというのに、かなり整地されている。
神の聖域と言われているこの場所がここまで綺麗なのはおかしい。祠の設置はわかるが。
その時、崖の上から声が聞こえてきた。
???「やっと来た。遅いよ〜。待ちくたびれちゃったよ。」
崖の上から話し掛けてきたのはマニューラだ。話終わると小石をセルの足下めがけて投げてきた。ギリギリ足下の近くに当たった。
アリオト「....どうやらこっちはハズレみたいだね。」
マニューラ「神様に対してハズレは失礼じゃない?」
皆〈神様〉という言葉に対して反応した。
ボルト「神様ってどういうことだよ、おい。」
マニューラ「あれ?わからない?案外鈍いんだね。」
マニューラはニヤニヤしながら話す。
マニューラ「いいかい?四十三年前に起きた『怪奇大爆発事件』。あれを起こしたのは外でもない、僕だよ。」
一同「!?」
マニューラはさらっと凄いことを言った。
マニューラ「ま、あの大爆発の方法を教えてくれたのはボスなんだけどね。」
ホムラ「そのボスっていうのは誰なんだ!」
マニューラ「そうだな〜....“蘇ったマッドサイエンティスト”、と言ったところかな?」
セル「蘇ったマッドサイエンティスト....」
この世界のマッドサイエンティストと言ったら一人しかいなかった。それは、かつて仙降地を襲った人間(最初に来た人間)のことだ。
だが、それは今から約五百年前のこと。
普通に考えて、妖怪でない限り生きていることは不可能。
マニューラ「とにかく、だ。よっと。」
マニューラは崖の上から降り立った。音も立てずにスッと静かに着地した。
マニューラ「これ以上我々の計画を邪魔するというのなら、全力で潰させてもらうよ。」
表情が一気に変わった。マニューラの殺気が禍々しい妖気のようになった。
更に気付いたことがある。
フィナ「....“ナイトメア”。」
マニューラ「あ、やっと気付いた?本当に鈍いんだね。」
ウォート「うわぁー、連続で“ナイトメア”戦とかマジ死ぬ。」
マニューラ「フフフ........じゃあ死ね!」
マニューラの姿が一瞬にして消えた。
あの時と同じだ。
フィナ「....(北北西約五・七メートル、右足を軸にして三八度回転。からの二三五キロのスピードで東約四・九メートル。あの構えは!?)東方面!“あくのはどう”がくる!」
マニューラ「........。」
フィナはマニューラの動きを予測した。それによって皆それぞれ対処出来た。
ミザールはかわした後に“かぜおこし”を繰り出した。マニューラは一瞬動きが鈍くなるも、すぐに体勢を立て直し、また姿を消した。
フィナ「........(さっきの動き、スピード、癖、軸足。そしてガブリアス戦での動きと照らし合わせると、次に止まる場所は)............セルさん!五秒後、真後ろに“リーフストーム”を!」
セル「お、おう!」
そして五秒後
マニューラ「(もらった!)」
セル「リーフストーム!」
マニューラ「何!?ぐあっ!」
セル「今だ!たたみかけろ!」
皆容赦なしに強い技をばんばん当てていく。
攻撃が止んで砂煙が立ち込めたまま動きがない。
皆様子をうかがっている。
メラク「動きがないみたいだけど、やったの?」
セル「この程度でやられる訳がない。なんせあいつのランクは二番目に強い....」
マニューラ「ふぅ。」
ぺきぺきという音を立てつつ、マニューラの姿が露わになる。
どうやら足下の石ころとセルの“リーフストーム”を瞬時に凍らせ、厚い壁を作ったようだ。
マニューラ「そ。僕は“ビッグディッパー”のランク〈金〉と同等のランク、〈闇〉なんだ。こんな簡単に終わる訳ないよ。」
実はマニューラは“ナイトメア”の中でも『四幹部』と呼ばれるポケモン達の一匹だ。
『四幹部』のランクは皆〈闇〉。“ビッグディッパー”や“サザンクロス”と同じ強さで、単独行動が多い。ボスの命令は絶対。
マニューラ「にしても君、凄いね。僕の動きをほぼ正確に見切るなんて。どうだい?うちらの組織に入んない?」
フィナ「....答えるまでもないけど、入る訳ないよ。」
すると崖の上から声が聞こえた。
アダム「よく言った。流石八代目。」
一同「!?」
アダムがマニューラのように崖っぷちに座っていた。逆光もあってか、なんかかっこいい。
マニューラ「これはこれは有名なバンドのリーダー的存在のアダムさんじゃないか。何のご用かな?」
アダム「まあ、なんだ。とにかく上においでよ。景色が綺麗だから。」
マニューラ「そう。だったらお邪魔するよ。こっちが飽きてきたところだから。」
そう言って軽々と崖を登っていく。手は使わず足だけで、僅かな出っ張りを上手く使って器用に登っていく。
マニューラ「よっと。確かに景色はいいね。で?」
アダム「まぁ、本性を表しちゃうと君を誘い込んだ。」
マニューラ「まあそうなるよね。」
強い日差しが差し込む中、二匹は話す。
アダム「君達もおいでよ。危ないからさ。」
その言葉に従い、“ビッグディッパー”と“チームブイズ”は崖を登っていく。
....“チームブイズ”は登るのに苦戦したが。
アダム「じゃ、始めようか。」
マニューラ「ハンデはいる?」
アダム「面白い冗談だね。」
マニューラ「それじゃぁ....」
そしてまたマニューラの姿が消えた。
フィナだけはある異変に気付いた。
フィナ「(何コイツ!?さっきよりも速くなってる。動きが全く見えない。)」
マニューラ「あ、そうそう。」
気付くとマニューラはフィナのすぐ後ろに立っていた。
マニューラ「君が見切った僕の動きは大体五割程度。言いたいことはそれだけ。じゃ。」
そしてまた姿を消した。
アダム「............戌!」
アダムは西北西に向かってナイフを数本投げつけた。
マニューラ「おっと。危ない危ない。(僕の本気の動きを見切っただと!?)」
マニューラは表情こそ変えないが、どこか焦っているようにも見える。
アダム「後三分といったところかな?」
マニューラ「カップラーメンでも作ってるのかい?」
アダム「ああ、そっか。作れば良かったね。」
そんな会話をしつつもマニューラは本気で殺しにかかり、アダムは華麗にかわす。
ウォート「ね、ねぇフィナ?アダムさんって何者なの?」
フィナ「いや、私が知ってるアダムさんはこんなに強くない。」
すると、アダムは煙草を咥え、火を付けた。
マニューラ「随分余裕だね。ってか歌手が煙草吸っていいもんなんかい?」
アダム「滅多に吸わないから大丈夫。」
マニューラ「そんなもんか、ね!」
マニューラの鋭い爪が振り下ろされる。
アダムはマニューラの手首を片手で押さえた。
アダム「じゃぁ、そろそろ。」
アダムはマニューラの手をぐいっと引っ張り、思いっきり蹴りをいれた。吹っ飛ばされたマニューラは空中に放り出されている。
アダムがマニューラを『愚者の谷 最奥部』に蹴り落とした。
そこには
マニューラ「ゲホッ!....ゲホッ!....なんだこれ!ゲホッ!」
アダム「なんだこれって、わかるでしょ?神様。」
マニューラ「くそっ!....あ、あれ?動けない。」
アダム「超強力接着液と超瞬間接着液を混ぜ合わせたものだからね。」
マニューラの周りには白い粉のようなものが舞っている。
マニューラ「まさか!?これは!」
アダム「大変だったんだよ〜。それ集めるの。」
イブ「こっちだって大変だったんだけどね。」
ブイズ達とは逆の崖っぷちにイブがいた。
アダム「本当にありがとう。助かったよ。」
イブ「報酬は?」
アダム「俺の笑顔。」ニコッ
イブ「じゃぁ、後でたっぷり貰うわね。物を。」
アダムは苦笑いする。
ボルト「で?」
ボルトが一言(一文字)で話を変える。
アダム「そろそろ終わらせるか。........スゥ、フゥ。」
アダムは煙草を吸って吐き、そのままマニューラに向けて煙草を放った。
マニューラ「やめろーーー!!」
アダム「....終焉だ。」
ドオォォォォォォォォォォン!!!!!
突然超大爆発を起こした。
一同「どうなってんだ!/どうなってんの!」
アダムが煙草を放った途端に大爆発を起こした。そんな不思議がことが目の前で起きて、驚かない方が凄い。
なんせ今の仙降地には、こんな技術は無いからだ。
アダム「おーいイブー!帰るぞー!」
ホムラ「あ、あのアダムさん。」
アダム「ん?」
ホムラ「どうしてさっき、突然大爆発を起こせたんですか?」
マジックのようなアダムの技(?)の正体は
アダム「“粉塵爆発”、化学反応の一つだよ。」
フィナ「ふんじんばくはつ?聞いたことないです。」
するとアダムは難しい単語を並べて、長々と喋った。
アダム「粉塵爆発ってのは、ある一定の濃度の可燃物の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象なんだ。その為には、粉塵雲、着火元、酸素の三条件が揃わなくちゃいけない。また、非常に微細な粉塵は体積に対する表面積の占める割合が大きい。そのため空気中で周りに十分な酸素が存在すれば、燃焼反応に敏感な状態になり、火気があれば爆発的に燃焼するんだ。それでさっき使用したのが小麦粉だよ。他にも、砂糖、コーンスターチとかの食品や、アルミニウム等の金属粉とかでも粉塵爆発は起こせるんだ。条件さえ揃っていればね。それにね、炭鉱とかで石炭粉末が起こす“炭塵爆発”なんてもんもあるけど、ようは粉塵爆発と同じ要領だよ。」
一同「はぁ....」
アダムは一生懸命説明したが、知らない奴が聞いても理解出来る訳ない。
皆の頭の上にはてなを大量に出していた。
アダム「じゃあね。」
アダムはイブと一緒に帰っていった。
セル「えっと、俺達も帰ろうか。」
ミザール「長居は無用。」
メラク「じゃあ、先に帰ってて。マニューラの回収をするから。」
アリオト「俺はガブリアス達に話をしてくる。」
セル「わかった。」
フィナだけが疑問を胸に抱えながら、皆トレジャータウンに戻る。