出会い
ー地底の監獄 入口ー
無事に戻って来られたチームブイズとブイズ組。戻ってくる道には本当に敵は出てこなかった。因みに例の危ない薬は一応トレジャーバッグに入れて持ってきた。使う用途はまだ分からないままだが。
クロウ「何とか戻れたな。しかし、どうするか、これ。」
『これ』とは勿論薬である。持っていてもどうしようもないけど、もしかしたら戦闘で役に立つんじゃないかと思い、どうしても捨てられない。よくある、捨てたいけどもしかしたら何かの役に立つかもしれないからとっておく、という感じだ。
ボルト「とりあえずトレジャータウンに戻ろうぜ。」
ナギ「そうね。この子達のこともあるし。行きましょう。」
トレジャータウンに戻る道中に何やら綺麗な歌声が聞こえてきた。
ユキナ「あっ....」
ホムラ「ん?どうしたの?」
リーフ「この歌声....」
フィナ「もしかして....」
ユキナ・リーフ・フィナ「イブさんの歌声!」
三匹が急に声を揃えて言った。
リーフ「皆急いでトレジャータウンに戻るよ!」
そういうとリーフは急に走り出した。その後に続くようにユキナとフィナも走り出した。
クロウ「あっ、ちょ、おい!」
ナギ「ふふっ、元気でいいじゃない。」
クロウ「いや、背負われてるあの子が....」
ナギ「あっ....。」
なんやかんやあって、トレジャータウンに到着したブイズ。
ナイトメアの一員のフシギバナを本部に届ける時、誰もがブイズ達の方を見ていた。
本部の警察がきたので、ナギは“サイコキネシス”を解き、フシギバナを降ろした。というより、落とした。
そのついでに助けた探検隊の子達も預けた。
警察の話によると、先に行ったリーフ達が背負っていた探検隊の子は既に引き取ったという。
それで、そのリーフ達はというと....
リーフ「遅いよー!」
待合室で待っていた。
ボルト「いや、遅いじゃねーよ。大体なんで急にはしr「よし、じゃー行こー!」聞けやおい!」
ホムラ「えっと、何処に行くの?」
リーフ「何処って、決まってるでしょ。」
ユキナ・フィナ「イブさんのライブよ!」
普段物静かでクールな二匹が目をキラキラさせている。
ボルト達には、何が凄いんだか分からない。
ただ今凄いと言えるのは、さっきも言ったが、普段物静かでクールであまり笑わない二匹のテンションが高いことだ。
クロウ「わかったからとりあえず落ち着け。」
リーフ「これが落ち着いていられるかってんだい!」
ナギ「ホントに落ち着こう。キャラが可笑しくなってるから。」
ユキナ「普段はテレビでしか見られないイブさんのライブ。」
フィナ「それが今、『森の駅』でライブをしてた。」
ホムラ「....つまりこんなチャンス滅多にないってこと?」
リーフ「そういうこと!」
ボルト「それで、なんでそんなに急ぐ必要があるんだ?」
ユキナ「早く行かないと終わっちゃうから。」
そう言ってユキナ達は走り出した。『森の駅』に向かって。
クロウ「ったく、行くぞ。」
ボルト「ほ〜い。」
そしてチームブイズとブイズ組は『森の駅』に向けて出発した。
『森の駅』はとても広い草原で色んなお店があり、時にはお祭り、時には何かの大会、そしてある時にはライブを行ったりしている場所だ。
トレジャータウンから森の駅までは大体歩いて十分位のところにある。ダンジョンではないので、敵は一切出てこない。
ー森の駅ー
リーフ・フィナ・ユキナ「........。」
リーフ・フィナ・ユキナの三匹はかなりガッカリしていた。
イブのライブに間に合わなかったからだ。
まるでこの世が終わる直前のような顔をしている。かなり大袈裟の気が....。
ナギ「ま、まぁ。二度とここへはこない訳じゃないんだから、そんなに落ち込まないで。」
ホムラ「そうそう。」
ウォート「大丈夫よ。その内いいことあるって。さ、帰りましょ。」
リーフ達「は〜い....」
元気のかけらすらない声で返事をし、トレジャータウンに戻る。
トレジャータウンに戻る道中、むかって左側から何か言い争っている声が聞こえた。しかも、片方の声はどこかで聞いたことがある。
とりあえず行ってみることにした。
三分後・・・
「ですから私は知りません。」
「嘘を付け!お前が食ったんだろ!」
争っているのは、四匹のヤンチャムを引き連れているゴロンダと、もう片方は....
リーフ・ユキナ・フィナ「!!!!!」
この三匹が物凄く驚いた。それもそのはず。強面のゴロンダと言い争っている相手は、リーフ達が今超大ファンになっている歌手、イブだからだ。イブはローブを着ているツタージャだ。こんな時でも本気で怒っていない。優しいポケモンだ。
とりあえず二匹の仲介に入った。
ボルト「ほらほら、喧嘩は良くないよー(棒)。」
ウォート「真面目にやんなさい。」バシッ
ボルト「痛。」
クロウ「....何があったんですか?」
ゴロンダ「コイツが俺達の木の実を全部食いやがったんだ。苦労して山になるまで集めたっていうのによぅ!」
イブ「ですから、私は偶々ここを通りかかっただけで、その時丁度ゴロンダさん達が帰って来たということなんですが。どうも私の話を聞く気が無いみたいで。」
ホムラ「失礼ですが、あなたはそのぉ....大食いですか?」
フィナ「そんなわけないでしょ!」ヒュッ ドンッ
ホムラ「ほぐわぁ!」ドサッ
フィナの強烈なチョップがホムラの首の後ろに振り下ろされた。
当然、ホムラは倒れた(気絶した)。
イブ「いえ。どちらかと言うと小食です。」
ボルト「んじゃ、この子には犯行は不可能だな。」
ゴロンダ「........。」
リーフ「謝って!」
ゴロンダ「....えよ。」
クロウ「?なんだ。」
ゴロンダ「うるせーよてめーら!ゴチャゴチャ抜かしてんじゃねーぞ!俺はコイツだけに文句があんだよ!」
そういうとゴロンダはイブのローブごと掴み上げた。
その時に見えた。ゴロンダの右手首のあたりに赤い字で『N』と書かれていた。だが、フシギバナのときと何か違う。Nの上に黒い一本線が書かれている。
クロウ「!そのマークは!」
ゴロンダ「ふっ、今更気付いたか。そうだ、俺は元ナイトメア。俺は幹部クラスの実力を持っているっていうのによぉ、ボスはそれを理解しないで俺をナイトメアから外したんだ。」
ユキナ「そんなことはどうでもいいわよ!イブさんに手を出さないで!」
ゴロンダ「ど、どうでもいいだと!?」
ヤンチャム「兄貴!ここは俺達が、食らえ!あくのはどう!」
ユキナ「きゃあ!」
リーフ「ユキナ!」
イブ「....ねぇ。」
ゴロンダ「あぁん?」
イブ「そろそろ私を放した方がいいかと....」
ゴロンダ「ふっ、逃げようったってそうはいかねーぜ!」
イブ「いえ。逃げるんじゃなくて、放さないと私の彼氏が黙ってないから。」
フィナ「イブさんの彼氏....まさか!」
と、その時
ガサガサ ヒュッ
何かが草村の中から出てきた。
ローブを着ていてフードも被って正直誰だか分からないが、恐らくリオルだろう。
リオル「てめー....俺の彼女にてーだしてんじゃねーよ!」
そういうと近くにあった大きな岩(リオルの約二十倍の大きさ)を軽々と持ち上げ、ゴロンダに向かって投げつけた。
ゴロンダは、イブを放し....
ゴロンダ「うぉおりゃあ!メガトンパンチ!」
バコーンと大きな音を立て、大岩は粉々に砕け散った。
そしていつの間にか、リオルはゴロンダの足下に来ていた。
ゴロンダ「何!?」
リオルのパンチがゴロンダの胸あたりに入った。ギリギリのところで体を倒し、腹部は避けた。
ゴロンダは受け身をとり、完全な戦闘体勢にはいった。
ゴロンダ「うおぉぉぉぉぉ!メガトンパンチ!」
ゴロンダの“メガトンパンチ”は、リオルの片手で止められた。だが、地面が少しくぼんだ。そのくらい威力が高かった。
リオルはゴロンダの“メガトンパンチ”を防いだ後、スルリとその場から抜け出し、クロウのもとに走っていく。
クロウ「えっ?」
当然、クロウは突然のことで身動きがとれずにいた。
そしてリオルはクロウのバッグの中から『あるもの』を取り出し、追ってきたゴロンダに向かって投げつけた。
ゴロンダ「んぐっ!?」
『あるもの』は見事ゴロンダの口に瓶の先が入り、更に投げつけた勢いで中にある液体を飲んでいく。
その『あるもの』とは、例の怪しげな『薬』のことである。
リオル「終わりだ。」
リオルはゴロンダを蹴り飛ばした。アニメのポケモンのロケット団も驚く位派手に吹っ飛んだ。
勿論、イブを除く他のポケモン達は唖然としている。
ヤンチャム「ひ、ひぃぃぃぃぃ!兄貴ー!」
ヤンチャム達はゴロンダを追いに........というより逃げた。
リオル「大丈夫か?」
イブ「ええ、大丈夫よ。ありがとう。」
リーフ「す、凄い!本物だ!」
ホムラ「いてて....何が本物なんだ?」
ユキナ「アダムさん!」
ボルト「マダム?」
ユキナ「アダム!」
ボルト「ガ○ダム?」
ユキナ「........死にたいの?(怒)」
ボルト「ごごごごめんなさい。(汗・半泣き)」
イブ「あなた達もありがとうね。」
ウォート「....あなた達ってそんなに有名なの?」
リーフ達「何言ってんの!」
ウォート「ええ!?」
フィナ「........いいわ、教えてあげる。まずは」
リーフ「喉の調節で千以上の声を出すことができ、『無限の歌声〈インフィニット・シンギングボイス〉』と謳われた歌声の女神、イブさんと」
ユキナ「一つの楽器で五百以上の曲を作ることが出来て、尚且つ今までのライブで一度もミスを犯したことがなく、『音楽の創造神〈サウンドクリエーター〉』と謳われた音楽界の仙人、アダムさんよ。」
フィナ「........(私が説明したかったのに。)」
ボルト「ふ〜ん。知らねーわ。....でもちょっとタイプだな。」
イブ「あら、ありがとう。でも、私には....」チラッ
アダム「そういうことだ。」
そう言いながらフードをとる。やはりリオルだった。他のリオルとは違い、少しつり目気味で結構かっこいい。
リーフ「わぁ〜!生のアダムさんはやっぱりかっこいいなぁ〜。」
イブ「でしょ?私も第一印象をそう思ったの。」
クロウ「....盛り上がっているところ申し訳ないんだが、質問がいくつかあるんですけど....いいか?」
イブ「ええ、いいわよ。」
クロウ「いや、正確にはアダムさんに。」
アダム「?」
クロウ「まずその首飾り。」
イブ「あぁ、これはアダムが作ってくれたのよ。」
ウォート「良く見たら凄く綺麗。でも、その鎖は?」
アダムとイブの首飾りは(単三電池二本分の大きさの)エメラルドグリーンの六角水晶だった。濁りや汚れがなく、透き通っていてとても綺麗だ。だが、それを邪魔するかのようにとても小さな鎖が纏わりついている。まるで何かをその水晶に閉じ込めているかのように。
クロウ「俺も鎖について聞こうと思ってたところだ。」
イブ「ああ、これ?これは....」
アダム「これはちょっと特殊でね、水晶に圧力をかけると鮮やかな色になるんだ。本当はもう少し濁っているんだ。」
少し戸惑って答えたようにみえる。何となく、苦し紛れに答えたようにもみえた。だけど、アダムが〈特殊〉という単語を出したらあまり疑わなかった。もしかしたら世の中にはそんなものもあるんだと皆が思っていた。
クロウ「じゃあ、次。あなた達の関係は?」
ユキナ「お互いに愛し合ってるのよ。」
ナギ「恋人関係ってことね。」
ホムラ「いいなぁ〜、そういうの。」
クロウ「それでは最後。アダムさんに質問です。」
アダム「ああ、いいぞ。」
クロウ「さっきのゴロンダ戦の時なんだが。」
リーフ「あれは凄かったよね。」
クロウ「確かに凄かったが、疑問に思ったことがある。」
クロウはゴロンダ戦の時、アダムがとった行動の中に最も気になる点があった。それは
クロウ「アダムさん、何故あなたは“俺のバッグ”から効力不明の“薬”を使ったんですか?」
ブイズ(クロウを除く)「!?」
クロウが質問を言った瞬間、他のブイズは驚き、アダムとイブの顔は急に真剣な表情になった。
クロウ「どうなんですか。」
一、二分経った後、イブが口を開いた。
イブ「ごめんなさいね。私達、そろそろ行かなくちゃいけないから。」
クロウ「えっ?いや、まだ....」
アダム「悪いな。じゃあな。」
そう言った後、二匹は森の奥の方へと走って行った。
クロウ「何か引っ掛かる。」
フィナ「まぁ、カリスマミュージシャンの二匹でも、謎の一つや二つ位あるわよ。」
ウォート「いや、謎がある時点でおかしいよ。」
なんだか気まずい空気が漂い始めてきた。
ナギ「とりあえず、トレジャータウンに戻りましょう。」
リーフ「あー!!」
ボルト「うっせーなあ!何だよ!」
リーフ「サイン貰うの忘れた....」
ユキナ「でも、生のアダムさんとイブさんを見れたんだからいいじゃない。」
リーフ「........それもそっか。」
ホムラ「立ち直り早。」
そしてブイズはトレジャータウンへ戻るのだった。