始まり
昔々このポケモンだけが住む世界に一人の人間が迷い込んだ。その人間はかなりポケモンに対して暴虐な輩だった。多くの手下をつくり、何匹ものポケモン達の命を奪っていった。
そんなある時、今度は二人の人間がやってきた。ポケモン達はもう終わりだと思っていた。
だが、その二人の人間のうち一人は二つの切れ味の良い“鉄扇”と不思議な力を感じる一つの“錫杖”を持ち、暴虐な人間に立ち向かった。
結果な圧勝といっても過言ではない位だった。
見事暴虐な人間を倒し、ポケモン達はその人間のことを〈仙人〉と呼び、崇拝した。
その人間の本名は〈百目鬼 雅〉。
また、もう一人の人間は雅の恋人であり、雅を援護する魔術師でもある〈六道 咲霊奈〉。
ポケモン達はこの〈仙人〉達以外の人間は全て暴虐だと思い込み、この世界に迷い込んだ人間は見つけ次第、すぐに消すと言うきまりができた。
月日が経ち、ポケモン達が殺めた人間の数は五百人以上にもなった。
この物語は、そんな世界でのお話。
今宵満月。
風がいつもより強い。
そんななか、二匹のポケモンが佇んでいた。
???「........ついに奴らが動き出す。」
???「そう........じゃあ、行きましょうか。」
二匹のポケモンは一言ずつ残し、その場から消えた。
ーとあるトレジャータウン 広場ー
ボルト「....あのさぁ、もっとレベルの高いところに行こうぜ。」
ウォート「あんたさ、この前難しいところに行ってボロボロになったばかりじゃない。なんとか生きて帰れたから良かったけど。」
ボルト「............。」
そう、ボルトはこの前『紅の鬼門』で敵をおちょくったせいでぶち切れられた敵にボコボコされ、瀕死状態になったがチームメイトのお陰でなんとか助かった。
ボルト「あ、あれは偶々油断しただけであって、べ、別に俺が弱かった訳では....」
フィナ「....油断大敵」ボソッ
ボルト「うっせー!!」
ホムラ「お、落ち着いてボルト。ね?」
そのやりとりを広場を通る探検隊達が皆見ている。
クロウ「同じブイズとして恥ずかしいから騒ぐのは止めてくれ。」
チームブイズの協力チームであり、仲間チームのブイズ組のリーダー・クロウが気を静めにはいる。
クロウ「それと今度の依頼は共同で行わないか?」
ボルト「共同?」
クロウ「ああ。で、依頼がこれだ。」ピラッ
クロウが見せた依頼書の内容はポケモン助けだった。
『地底の監獄』という場所に挑戦したランクが〈橙〉の探検隊が少し危険な状態にあるという。
本来ならば、この場所に立ち入るならばランクが〈藍〉以上必要なのだが、その探検隊は本部には内緒で勝手に挑戦したらしい。
本部とは、探検する場所あるいは受ける依頼がそれぞれの探検隊のランクに相応しいか判断し、許可を得る場所である。
だけど最近は、許可を得ずに勝手に探検する探検隊が多い。今回危ない状態になっている探検隊もその内の一組だ。
ボルト「んぁ?あ〜あぁ、馬鹿はほっとけよ。一度痛い目みねーとわかんねーだろ。」
ウォート「確かにw。一度痛い目みないとわからないかもねww。」
ボルト「何で俺を見ていうんだよ。」
ウォート「さあね?w」
クロウ「こっちは既に準備は出来ている。遊んでないで準備しろ。」
チームブイズ「は〜い/はいはい。」
こうして、チームブイズとブイズ組は準備を整え、『地底の監獄』へ向かう。
が、その前に....
ー本部ー
サーナイト「うーん。ちょっと難しいわね。」
クロウ「そこをなんとかお願いします。」
サーナイト「でも、ねぇ。」
地底の監獄へ行く為に許可を得なければいけないのだが、ランクは“藍”以上。チームブイズとブイズ組のランクは“青”。後一歩足りなかったのだ。
そこへ一匹のポケモンが入ってきた。額に小さな傷があるジャノビーだ。
ジャノビー「別にいいんじゃないか?若いのは好奇心旺盛だからね。」
サーナイト「あなたは?」
ジャノビーはサーナイトに近づき、耳打ちをした。
サーナイト「....!あ、あなたは!」
ジャノビー「シー」
サーナイト「ほ、本物ですか!?」
ジャノビー「ああ。この傷が証拠だよ。」
サーナイト「か、感激です。あのサイン貰えますか?」
ジャノビー「勿論だよ。その代わり、あの子達を地底の監獄へ行かせてあげて。」
サーナイト「わかりました。許可します。」
クロウ「ありがとうございます。ジャノビーさんも。」
ジャノビー「どう致しまして。じゃ、頑張ってね。」
そう言って本部内にある待合室に向かい、待合席でコーヒーを飲んでいる。
クロウ「とにかく行こうか。」
そして地底の監獄へ向かう。
ー地底の監獄 入口ー
クロウ「大体十五分位進んだと情報があったから、油断はしないようにな。」
ボルト「はいはいわかったからとっとと行こうぜ!」
フィナ「待って。」
ボルト「あぁ?」
フィナ「地底の監獄は“じめん”、“いわ”、“ほのう”、“ゴースト”が中心のポケモンが多い。だからウォートとクロウが前線に立ち、他の私達が援護する形でいった方が無難よ。」
クロウ「あぁ。そうだな。」
ボルト「ったく、フィナの頭良いアピールはもう見飽きたよ。」
ユキナ「....普通のことだけど。」
ボルト「うっせー!」
リーフ「ほらほら〜。行くよ〜。」
そしてチームブイズとブイズ組は地底の監獄へ入っていく。
その様子を木の陰でずっと見ていたポケモンがいたとも知らずに。
ー地底の監獄ー
クロウ「ハァ....ハァ....さすがにきついな。」
ナギ「お疲れ様。はい、オボンの実とピーピーマックス。」
クロウ「あぁ。ありがとう。」
ボルト「なんだよ。もうバテたのか?」
フィナ「はいはい。余所見しない。」
ボルト「えっ?」
ボルトの頭上三メートルにはイワークの“たたきつける”攻撃がきていた。
ボルト「やばっ!」
リーフ「はっぱカッター!」
イワーク「うぐ!」
ユキナ「冷凍ビーム」
イワーク「あ....が....」
リーフの“はっぱカッター”でイワークを怯ませ、ユキナの“冷凍ビーム”でイワークを凍らせ、動きを封じた。
ボルト「わりぃ、助かった。....さてと、やられたらやり返す、倍返しだ!」
ホムラ「あの、威勢がいいのはわかるけど、ボルトの得意の電撃はあいつには全く効かないよ。」
ボルト「........。」
フィナ「ハァ、体当たり。」ドンッ
イワーク「うご!」
ノーマル技の“体当たり”はいわタイプのイワークには効果はいまひとつ....のはずなのだが、フィナの“体当たり”でイワークは十メートル程吹っ飛ばされ、更に“冷凍ビーム”の追加効果の氷も粉々に砕け散った。....めちゃくちゃつえぇ。
フィナ「ランクが“藍”以上なのに弱い。」
なんていうか....クールだ。
ボルト「流石、馬鹿力。」
フィナ「....ユキナ、とりあえず冷凍ビームでボルトを凍らせて。後で吹っ飛ばすから。」
ボルト「すんません、まじ勘弁して下さい。」
話を終え、更に奥へと進んで行く。
ー地底の監獄 中央部ー
ホムラ「そういえば一つ思ったんだけどさ、ここって中央部だよね?」
リーフ「当たり前だよ。それがどうかしたの?」
ホムラ「確か危険な状態になってるチームのランクは“橙”だよね?」
クロウ「そうだが?」
ホムラ「僕達八匹でもこんなに苦戦してるんだよ。なのにランク“黒”のチームがここまで来られると思う?」
ナギ「確かに変ね。」
そしてちょっと歩いたところで倒れてる三匹のポケモンを見つけた。
リーフ「あの子達かな?おーい!」
リーフが呼び掛けても倒れたままだ。恐らく気を失っているのだろう。
とりあえず近くまで行き、身体を揺すったり、顔色を伺ったりしてみた。
クロウ「見た限り外傷は殆どない。....いや、手首足首に何かで縛られたような後がある。ロープ....にしては太いな。一体何なんだ?」
フィナ「この形状からして............木の幹。木の幹、木の幹....“ハードプラント”。」
ナギ「そうなるとかなり限られてくるわね。」
すると突然奥の方から“ストーンエッジ”が飛んできた。
ナギ「“サイコキネシス”」
リーフ「“はっぱカッター”」
“ストーンエッジ”はナギの“サイコキネシス”でピタッと止まり、リーフの“はっぱカッター”で粉々にした。
ボスゴドラ「なかなかの実力だな。」
ナギ「ふふ、お褒めに預かりどうも♪」
ボルト「んで?あんたは?」
ボスゴドラ「ただの遊び好きのポケモンさ。」
ユキナ「遊び好き?」
ボスゴドラ「ああ。今日も“一緒に探検しよう”って優しく一声かけただけで、これっぽっちも怪しまずに信じた馬鹿な探検隊がいて、そこそこ楽しめたよ。」
ボルト「ッ!....て、テメー!!」
ボスゴドラ「ははは!無関係な探検隊のことをここまで想うなんて、傑作だな!」
フィナ「....許さない。」
ボスゴドラ「許さなくてけっこ........え?」
ボスゴドラの目の前にはブイズが七匹しかいなかった。フィナだけがいつの間にかボスゴドラの後ろに回り込んでいた。
ボスゴドラ「い、いつの間に!?」
気付いていても体が反応出来ないボスゴドラは、何も出来ずに....
フィナ「マジカルシャイン。」
フィナの“マジカルシャイン”は、ボスゴドラの体の隅々までに玉(?)が当たって、ボスゴドラはもうボロボロだ。....フィナ、恐ろしい子!
ボスゴドラ「あ....ぐ....」
クロウ「留め!」
と、その時!
ドゴォン シュルシュル
突然地面の中から何かが出てきて、ブイズの腹や四肢に巻きつき、動きを封じた。
ウォート「なっ!何よこれ!」
クロウ「あいつの技!?」
リーフ「いや、違うよ!?これ“ハードプラント”だよ!」
「御名答」
どこからか声がしたとおもったら、岩の陰からフシギバナが出てきた。よく見ると、左前足に赤い字で『N』と書いてある。
クロウ「....もしかして、最近仙降地を騒がせている“ナイトメア”か!?」
フシギバナ「その通り。」
ボスゴドラ「いてぇ。おい、約束通り奴らをお引き出してやったぞ。さっさと例のもんよこせ。」
フシギバナ「ほらよ。」
どさっという大きな音と、僅かにちゃりんと音がするパンパンの袋を地面に置いた。
フシギバナ「御苦労だったな。」
ボスゴドラ「おうおう、お疲れ〜。」
そう言ってボスゴドラは奥地へ進んでいった。
フシギバナ「さてと、こっちも片付けるか。あまり長くはいたくないんでね。」
ホムラ「かえんほうsy「甘い!」ぐあ!」
フシギバナはホムラに絡みついている木の幹を更に強く締め付けた。
フシギバナ「出来れば殺りたくはなかったが、抵抗するのなら仕方がない。」
そう言うと、フシギバナの大きな花の真ん中に光が集まっていく。
ナギ「なにあれ!?」
リーフ「“ソーラービーム”だよ!」
フシギバナ「何か言い残す事はあるか?」
ボルト「こんな馬鹿げたことしてるてめーらのボスは一体誰だ!」
フシギバナ「....企業秘密だ。」
クロウ「(くそっ!ここまでか!?)」
すると....
???「究極三刀流派弐ノ舞、“トキサメ”」
ヒュッ ザク!
全員「!?」
その場にいる誰もが驚いた。それもそのはずだ。ブイズを締め付けていた木の幹が一瞬にして木っ端微塵になった。まるで、時を止めてその間に切り刻んだかのように。それに、木の幹はほぼ粉状になっている。それ程細かく切り刻んであった。
フシギバナ「ど、どうなってんだ!」
皆が驚いている中、突然岩陰から白い玉が投げ出された。
全員その白い玉に釘付けになっていると
ピカッ!
フシギバナ「ぐわっ!」
ブイズ(♂)「うわっ!」
ブイズ(♀)「キャッ!」
白い玉は急に光り出した。どうやら閃光玉のようだ。
フシギバナ「くそっ!小賢しい真似を!ええーい、まどろっこしい!ソーラービームはっsy....ぐわああああああ!」
眩しくて誰も目が開けられない中、急にフシギバナの断末魔が聞こえ、その後にどさっと大きな音が聞こえた。恐らくフシギバナが倒れた音だろう。
クロウ「......くぅ......やっとか終わったか。....えっ?」
ナギ「どうしたの?あらっ。」
案の定、フシギバナが倒れていた。その近くに一枚の紙が落ちていた。
その紙にはこう書いてあった。
『この洞窟の中央部から入口までの安全は確保した。だからその倒れてる探検隊とフシギバナを連れて行け。万が一、フシギバナが重くて持てないっていうならこれを使え。』
紙と一緒に緑色でかなり怪しげな液体が入った瓶が置いてあった。
ボルト「いや、これぜってーあぶねーだろ。」
ユキナ「何か説明書みたいなものがあるよ。えーっと、『重いものを軽くする薬“軽体薬”』。」
ホムラ「まんまだね。」
クロウ「突っ込むとこそこじゃないだろ。」
ナギ「....クンクン....あっ、なんかいい匂い。」
フィナ「本当に?....あ、本当だ。」
ウォート「でも別にコイツに飲ませるんだからあたし達は関係なくない?」
リーフ「それでもしコイツが死んだらどうするの?飲ませた時点で私達も共犯だよ。」
クロウ「その前にこれが本当に毒か何かというのもわからないがな。」
ナギ「モモンの実ならあるわよ。」
フィナ「仮に状態異常になる薬だとして、毒になるとは限らないんじゃない?」
リーフ「そっか。やけどとかねむりとかあるもんね。」
ホムラ「既に気絶してるけどね。」
すると、どこらかともなく紙が飛んできた。(なんか怪盗からの予告みたいだ。)
紙にはこう書いてあった。
『疑うなら使わなければいい。』
ボルト「これ置いた奴まだこの近くにいるぞ!」
フィナ「ナギの“サイコキネシス”使えば良くない?」
ブイズ(フィナを除く)「あっ。」
皆ポカンとしている。本気で誰も気がつかなかったらしい。
クロウ「だが、それだとナギの負担が大きい。」
リーフ「じゃあちょっとでも負担を軽減するために、あの探検隊の子達はナギ以外の私達で協力して連れて行くってゆーのはどう?」
ユキナ「ついでにナギの為にも少しずつ休んで行ったらどう?」
ナギ「お願いするわ。」
クロウ「よし、行くぞ。」
ナギは“サイコキネシス”を使い、フシギバナを浮かせ、三匹のポケモンは〈ホムラ〉〈ボルト〉〈ユキナ〉が運ぶことに決定した。
そしてチームブイズとブイズ組は『地底の監獄』を後にした。