イノセント・ビースト - 第一章 逃亡
第一話 逃亡
「はぁ、はぁ…」

とある建物の地下、暗闇の中で小さな息遣いが聞こえる。
全身の毛が茶色く、首回りの白い毛がチャームポイントの獣、イーブイである。
しかし、その美しい体毛には所々赤く血がついていて、とてもあのイーブイだとは思えなかった。
そのイーブイは疲れたようで、近くの壁にもたれこみ、休みを取っていた。
すると、遠くの方からかすかに足音が聞こえた。
イーブイはその大きな耳で足音を聞き取り、すぐさま走り始めた。

「いたぞ!」

背後から大きな声が聞こえた。
それと同時に銃声が発した。
イーブイは平均より小さい体を活かし銃弾を躱していく。

「気を付けて追いかけろ!」

彼らは銃を撃ちつつイーブイを追いかけていく。
暫くするとイーブイは壁に突き当たり、右に曲がっていく。
彼らもイーブイと少し距離を開けて曲がる。
すると先ほど前を走っていたイーブイが待ち構えていた。

「もう…追いかけてこないで!」

そう叫びイーブイが目を開くと彼女の眼は血のごとく赤に染まっていた。
同時にイーブイの周りにいくつも光の玉が現れる。

「しまった、下がれっ!」

彼らは逃げようとしたがそれも遅く、イーブイの放つ光に体を貫かれていった。
その攻撃が止むと、イーブイは返り血でさらに赤く染まっていた。

「はぁ、はぁ…も、もう来ないで。」

そう呟くとイーブイは再び駆けて行った。

暫く走り、追手が来ないまま階段にたどり着いた。

「あ、あった。」

するとイーブイは休むことなく階段を駆け上がって行った。

「おい、こっちだ!」

ある程度階段を駆け上がると、背後から声がした。
イーブイが知っている声の主のようで、声のする方に振り返った。

「こっちに皆いる。早く来い!」

イーブイは行き過ぎた階段を下り、声の主―サンダースの元に走って行った。
その時、イーブイは銃声を聞いた。
それと同時に背から腹部にかけて鋭い痛みがはしった。

「イヴァン!」

イヴァンと呼ばれたイーブイは、自分の名を遠のく意識の中に聞きながら、階段に倒れこんだ。



「イヴァン、イヴァン!!」

「あ…ライト。」

イヴァンはサンダース―ライトの声で目を覚ました。

「ようやく起きたか。わかっていると思うが、お前はさっき銃で撃たれた。何とか奴らはまいた。ここは安全なはずだ。」

イヴァンはライトの声を聴きながら、自分が隠れている場所を見ていた。
とはいえ暗くてほとんど何も見えないが。
せいぜい互いの顔が見える程度だ。
おそらくどこかの一室だと思われた。

「まったく…撃たれるならもう少し場所を考えろよ。なかなか止まらなかったぞ。」

声のする方を見るとそこにはシャワーズが立っていた。

「そ、そんな無茶言わないでよ、アナト!」

「そうだぜ。そんな冷静に言ってるけど、お前の方が慌ててただろ。」

「う、うるせぇ。」

アナトは顔を赤らめ、そっぽを向いてしまった。

「そういえばほかの皆は?」

イヴァンはライトに心配そうに聞いた。

「あぁ、ほかのやつらは先に上に行って安全な場所探してる。見つけたら連絡してくるさ。」

「そっか…」

そういうとイヴァンは虚空を見つめていた。
彼女はどこか思いつめている様子だった。

「…そう思いつめるな。確かに俺らを実験台にしたのはお前の父さんだが、彼も乗り気でなかったのは事実だし、それは俺らも理解している。お前が負い目を感じることじゃないさ。」

ライトの言葉を聞くとイヴァンは目を潤ませてライトを見た。

「それにさ、こんな力を得たんだ。逆に感謝したいぐらいだぜ。」

ライトはイヴァンに優しく微笑みかけた。
イヴァンは心の枷が外れたように気持ちが軽くなったような気がした。
そんな和やかなムードを壊すように、奴らの声が聞こえてきた。

「おい、あいつらはこっちの方に来ているはずだ。ここらの部屋を虱潰しに探せ!」

そんな叫び声と多数の足音が聞こえてきた。

「…まずいな。まだこの部屋に入られてはいないがここにずっとはいられないな。」

ライトは光が差し込む場所を見た。
隠れているのはどうやら一室の奥の小部屋のようだ。
ここはせいぜいカイリキー2匹(?)分の狭さである。
ここで見つかってはひとたまりもない。

「まだこの部屋まで入ってきてないようだ。タイミングを見て逃げ出そう。」

ライトを先頭に彼らは小部屋を抜け出した。


■筆者メッセージ
このような作品ですがこれからよろしくお願いします。
あおいぬ ( 2015/05/04(月) 18:19 )