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最悪だ。
今日は厄日だ、さっさと旅の続きに戻りたい。
あたしはそんなことを考えつつ、ついさっき起きたことを整理する。
その1、スタイリッシュになるために、ミアレであれこれしていた。そしたら空が曇り色になってきて、間もなくザーザーと雨が降ってきた。カサなんて、もちろん持っていない。
その2、あたしが偶然フラダリカフェの前にいたので、そこで雨宿りをさせてもらっていた。濡れなくて済んで助かったわ。
――…中に?入るわけないでしょうが。風はなかなかに湿り気を含んでいて、正直なところ寒い。すごく嫌な風だった、でも入りたくはない。
その3、手前にいたフレア団したっぱの女性が一緒に入らないかと尋ねてきた。これを機会に、エスプレッソにチャレンジしてみてはどうかと言われたが断った。
――…どう見たってあたし子供でしょ。子供にエスプレッソ勧めないでほしい。というかあんたらの勧めには絶対にノらない。
その4、オーナーのフラダリさんまでやって来た。カフェの様子を見に来たらしい……ウソかホントかわからないけど。
予想通り過ぎる真っ赤なカサをさしていて、よろしければ貸しましょうか?と言ってきたけど丁重にお断りした。――…この人に借りを作りたくない、カサなんて返さなきゃいけないし。
その5、そしたら今度はカフェに入るよう進言してきた。肌寒いし、ココアを淹れてあげようと。
いいです結構です恐れ多いですと断ろうとしたが、ちょうどわたしもキミとお話したかったのでと、いつもの真顔で押し切られてしまった。
今日は寒い日だ。風邪を引いてしまっては、ご家族やお友達、博士を心配させてしまいますよと言われちゃ反論できない。
その6。そしてあたしはフラダリさんを前にテーブルについている。何のバツゲームだよ、これ。
一応顔や口には出していないが、あたしはこの人が大の苦手だ。
カフェまで運営し、ホロキャスターを開発した成功者、王の弟の子孫だか何だかで生まれまでロイヤル、そのくせ驕らず謙虚で優しくて、利益をトレーナーに還元までする驚きの人格者――…実際、プラターヌ博士やカルムくんはこの人を大変評価している。あたしも実際に会ったこともなく、話したこともなければ「こんな超人が世の中に実在しているなんて」と良いおどろきを持っていただけだっただろう。
けれど、この人はそれだけでは済まない。端的にいうと、確実にヤバイ人だ。
言葉の節々に狂気が見え隠れ――…というか隠そうとしてすらいない。研究所でも話かけられて、会話の内容に違和感はあったけど、カルネさんとの会話で確信した。
「世界を一瞬で終わらせ、あらゆる美しさを永遠のものとするかもしれない」とかなんとか――…うっわぁ、関わりたくないという確信だ。
だというのにホロキャスターから連絡が来たり、博士との交友関係にあるからか呼び出しくらって一緒にいたりした。居心地は良くなかったけれど、別に2人きりで話したりするワケでもないから気にしないでおいた。
ただ。わかりやすい赤色の執着やら、世界がどうのこうの言ってたり、言動がとっても宜しくない赤スーツ集団、通称フレア団のしたっぱがホロキャスターの開発者を褒めていたり、カフェの様子があからさまにおかしかったり、ぶっちゃけ客にフレア団が今入ってるし!!
今までのことを考えるに、おそらくはフレア団関係者だと思われる。
うん、フラダリさんの発言と相まって、めちゃくちゃ関わりたくない。カンベンしてください。