ポケモンダンジョン救助隊 ーその名は『レックス』ー
第一章 全ての始まり
一話 理解不能な出来事
「おーい…」
突然上からこう呼ぶ声が聞こえた。
「おーい。」
そんな事を考えているとまた声がかかった。先程の声よりは大きくはっきりと聞こえた。
「…生きてますかー?」
ああ、生きているよ。体がダルくて眠たい。頼むからもう少し寝かしてくれ…
しかし次の瞬間、腹の辺りに物凄い衝撃が走り、思わず目を見開いてむせかえった。どうやら腹を蹴られたらしい。
「あ、生きてた」
「あ、生きてた。じゃねぇよ!」
出会って早々に腹蹴り入れる馬鹿がどこにいるか。どうやらどこかの海岸らしい。しかし俺のその考えは次の瞬間にはどこかへ飛んでいってしまった。目の前にいる人…いや、生物をまじまじと見つめる。
「な…なんだよ?」「喋ってる…?」「はぁ…?」
その生物は意味がわからないと言った口調で返してきた。俺がもっとも意味不明に感じたのはそこだ。そう、"喋ってる"のだ。
「バクフーンが…ポケモンが喋ってる!?」
「いや、喋るのは当たり前だろ?」
当たり前じゃねぇよ!思わずそう突っ込みたかった。
何故だ?何故ポケモンが喋ってる?そして何故当たり前なんだ?
頭の中には何故という言葉が浮かんでは消えていく。
「…お前、そこの水溜まりで顔見てみろよ。面白い顔してるぜ」
バクフーンに言われるまま、そこにあった水溜まりに顔を写す。
写した瞬間目に物凄い黄色が飛び込んでくる。
写したその顔は、紛れもなくポケモンのピカチュウだった。
「…ピカチュウになってる!?」「頭がいかれちまったようだな」
さらに謎が増えた。なんで人である俺がポケモンになっているのだろうか?
「最悪だ…しかも、何にも覚えてねぇ…」「マジかよ…お前かなりの重症らしいな」
「…ひとつ質問しても良いか?何か思い出せるかも知れない」
「…何だよ?」
バクフーンは物凄く気だるそうな顔をしたが、質問には答えてくれるそうだった。
「ここはどこなんだ?」「ここはポケモンアイランド。人も動物もいない、ポケモンの楽園。どうだ?なんか思い出したか?」
「…いや、全然」
謎は増えるばかりだ。ポケモンアイランド?人も動物もいない?
「せめて名前くらい覚えて無いのか?」「…名前?」
思い出したように呟いた。そうだ、名前は…
「クロガネナオトだ」「ナオトか…まあ、名前まで忘れてなくて良かったんじゃねぇの「おーい!誰か助けてくれぇぇぇ!あ、そこのお二人さん!ちょっと助けてくれ!」
バクフーンの言葉を遮って向こうから声がかかってきた。そちらを見ると、ストライクが物凄く焦った顔で向かって来ていた。
「どうしたんだ?」「大変なんだ!俺の妹が、この先にある岬の洞窟でモンスターハウスに入ってしまったんだ!このままでは危険だ!助けてくれないか!」
「アンタが行けばいいだろ」
さらりと言い放つバクフーンに対してストライクはさらに顔を青くした。
「いや、無理だ!俺だって今入って返り討ちにあったところだ!」
「返り討ちにあったのかよ。…仕方ねぇ。俺は行くけど、ナオトは?」
バクフーンはどうやら救助に向かうらしい。
「俺も行く…なんかあるかも知れねぇ」
そして、俺たちは岬の洞窟に向かって走り出した。
「そういえば、お前の名前はなんて言うんだよ?」
「俺か?…レイジだ。名前くらい覚えてくれ」
「わかった!」

黒フードの狼 ( 2017/03/20(月) 09:24 )