四話
目の前に、青い閃光が走った。
しゃがめ!
誰かの声がした。頭の中で、響くように。考える間もなくしゃがむ。
「よし、いい子だ――『サイケこうせん』」
今度は本物の人の声がした。どこかで悲鳴が上がる。顔を上に向けると、警備兵はすべて倒れていた。ゆっくりと視線を上げる。立っている者の足が見えた。どんどん翔に近づいてくる。
「行くぞ」
「え」
その者の顔を見る間もなく、手をひかれた。森の中に入る。左手の中では、ライチュウとガ―ディがまだ呆然としていた。
(助かったの?)
翔の頭も混乱する。木の根につまずいた。
「いたっ」
「足元気をつけろよー」
そう声をかけるのは、声からして若い男のようだ。必死に翔が前を向こうとすると、足がまたどこかにぶつかって、そっちに気を取られる。青年に右手を引っ張られ、左手には二匹を抱いているので歩きづらい。
「ちょっ……待って」
「もう少し、もう少し――うん、ここならいいだろ」
青年が止まる。振り返った。その姿を見た翔は息をのんだ。
(綺麗……)
木漏れ日にあたってキラキラと光るのは銀の髪だ。街にも、こんな髪の者はいなかった。
そして、青い目。初めて外に出た時に出会った空の色より深く、澄んでいて、この世の何もかもを映し出しているようにさえ見えた。
それに――
「耳と、尻尾?」
「へ?」
青年は素っ頓狂な声を出し、ぱっくりと口をあけた。
彼の頭と背には、薄紫色の耳と尻尾があった。ちょうど、『エーフィ』のような。
「お前……お前、『イーブイ』のエリトルだろ?」
「えりとるって……」
翔の茶色の『イーブイ』の尻尾が、風に揺れた。
「エリトルって、なに?」