『見つけ出した正義は』
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「お待たせ」
「あ――こんにちは、はじめまして」
「……やあ」
「お医者さんですか?」
「どうして?」
「白衣を着ていらっしゃったので」
「ああ、なるほど。素晴らしい観察眼だ。そう、実は医者なんだ」
「やっぱり。頭の良さそうな人に見えます」
「光栄だね。君は何しにきたの?」
「――分かりません。お墓にいたので、多分、このボールを埋めに来たんだと思うんですけど」
「そうか。じゃあ、僕が手伝おう」
「あの、私を誰かと間違えたんじゃないんですか? さっき、お待たせって……」
「ああ、そうみたいだけど……待ち合わせをすっぽかされたみたいだからね。暇になったんだよ」
「そうなんですか……悲しいですね」
「良かったら、これ、一本あげるよ」
「いいんですか?」
「うん。いいんだ。喉も渇くしね」
「この子を埋めたら、私、どうしたらいいんでしょう?」
「何も分からないの?」
「はい。なんだか、ぼーっとしていて……」
「……ねえ、僕が君の主治医だって言ったら、信じてくれる?」
「そうなんですか?」
「うん。君はね、ちょっといろいろなことを忘れてしまう病気なんだ。もし嫌じゃなければ、この子を弔ったら、僕と一緒に病院に行こう。どう?」
「それもいいですね。デートみたいで」
「だろう?」
「あの……お医者さんのお名前はなんて仰るんですか?」
「僕は――季時九夜」
「珍しい名前なんですね」
「よく言われるよ」
「きっと、忘れないと思います」
「それは嬉しいな」