『月曜日は嘆きたい』
1
「おはようございます、先生」
「おはよう」
「寝癖ついてますよ?」
「いや、これは髪の毛だよ。寝癖は現象だから、付着はしていない」
「慣用句ですよ。それとも、寝癖が発生しています、の方が良いですか?」
「局地的な台風ですか? がベストかな」
「先生、面白くありません」
「それは僕の方が先に気付いていたんだよ」
2
季時九夜はいつものように研究室でコーヒーを淹れていた。いや、その文章は不誠実だ。コーヒーを淹れているのはコーヒーメーカーであって、季時ではない。彼は自分の推察に満足して、魔法の液体が作られる過程を耳で観察していた。
幸いにも、一時間目の授業はない。しかしながら、職員会議という無駄なやりとりがあったために、いつも通りの出勤が課せられていた。もちろん職員会議は、無駄に終わる。それは分かっているが、それに抗議するというのは無駄なエネルギーの消費だ。どちらが得か。このくらいの計算は、起き抜けの頭でも簡単に出来た。
コーヒーが出来上がり、それをカップに注いでから、ようやくやるべきことに取りかかる。問題なのは一通の葉書だ。これは家のポストに入っていたものだ。朝起きて、学校に持ってきて、それを眺める。差出人は不明だった。しかし、宛名は確実に季時だった。
「つまらない葉書だなあ」
わざと声に出してみる。それによって何か面白いことが起きないかという期待があった。もちろんそんなことは起きない。わかりきっていることだ。ただ、確かめるように、口に出した。結果として、面白いことは何も起こらない。季時は葉書を裏返した。内容はいつも、裏に書かれているものだ。
『季時九夜様。
こんにちは。私は、この学校に通う、生徒の一人です。
突然のお手紙で申し訳ありません。
私は、学校に退屈しています。日常に、退屈しています。
私は、どうか毎日が素敵なことになるように祈っています。
なので、季時先生。私を助けてください。
この学校を、面白くするお手伝いをしてください。
先生ならやっていただけると思います。
それでは』
つまらない予告状だった。
破いて捨てるのは簡単だ。けれど、それを復元するのは難しい。どちらが得か。このくらいの計算は、コーヒーで冴えた頭では簡単にできる。季時はその葉書を、引き出しの中にしまい込んだ。
一体、どんな生徒だろう。
手は込んでいない。
けれど面倒ないたずらだ。
切手はない。
季時の家のポストに直接入れた。
それはつまり、季時の家を知っているということ。
コーヒーの色が黒い。
それは何故だろう。いや、これも不誠実だ。コーヒーは茶色い。けれど黒く見える。黒いコーヒーは、白いコーヒーカップの中で映える。では黒いカップではどうだろう。季時は考える。この世には色違いのポケモンというものが存在していて、その存在を人間は特別視する。何故色違いを。色が違うだけだ。特別優れているわけではない。希少価値だ。そもそも希少価値とは。レアリティが幅を利かせるのはどの時代でも同じことだ。この少女――私、という呼称はいつだって少女を連想させる。あるいは、世界に退屈し、世界を壊そうとする行為は、少女にこそ似つかわしい――が季時を選んだのも、そうではないだろうか。季時には、自分が平均から逸脱した人間であるという自覚がある。だからこそ、巻き込まれる。
「つまらない葉書だ」
季時は窓の外を眺める。
空。
雲。
何の変哲もない。すぐに思考を訂正する。常に流動している。過去と同じものは一つとして存在しない。変化が微細であれば、その変化を、不変と同視する。成長は行われ、劣化は進む。それでも尚、人間は不変であることに執着する。死への畏怖か、あるいは成長への抵抗か。不思議なものだ。
「毎日は素敵になんかならない」
季時はわざと声に出してみる。それが季時の人生の中で、一際重要な答えだった。
3
「季時先生」
季時に声を掛ける女子生徒がいた。珍しいことではない。彼は学校では有名な教師だった。変人としても、優秀な教師としても。もっとも、前者の季時に声を掛ける生徒の方が、圧倒的に多数だ。
「僕?」
「そうですよ。季時先生は一人しかいませんから」
「あ、そう。世界単位で?」
「学校単位です」
「二十秒なら立ち話に付き合うよ」
「歩きながらなら?」
「どうだろう。そういう質問に対する答えは用意していなかった」季時は歩き出す。「城に着くまでにしよう」
「城? どういう比喩ですか?」
「僕の研究室」
「十分な時間ですね」女子生徒は言う。「私の名前、分かりますか?」
「知っているとしても、答えたくはない」
「姫川です。姫川彩香」
「字は?」
「Princess.River.Paint.Perfume.です。ちょっとニュアンスが違うものがあるかも」
「惜しいなあ」
「え?」
「惜しい。姫皮じゃだめなの? Pelt。Peelでもいいけど」
「どうしてですか?」
「Pが四つになる」
「何か嬉しいんですか?」
「生物学教師だからね。Pは頭文字だ」季時は真面目な顔で言う。「しかし、彩をColorと表現しない辺りに美しさを感じるかな。話そうか」
「今のは試験ですか?」
「何が?」
「ようやく会話の許可が下りた感じがします」
「そういうの、気のせいって言うんだ。あるいは悲観的。ネガティブがベターかな」
「なんて言うのがベストですか?」
「局地的な台風ですか? だよ」季時はようやく姫川を見た。「思い出した。今朝、校門の辺りで挨拶をしてくれた子だね」
「やっぱり忘れていたんですね?」
「印象に残らない子だったからね」
「はっきりと言うんですね」
「言葉は常に判然としてるよ。ただ、解釈の余地があるかどうか。真意は常に一つだけだ。言葉と言葉の間にある隙とか、余裕だね。そこにどう自分の感情を差し込めるか、という話」
「つまり?」
「いや、今は思いついたことを適当に並べただけだから、意味はないよ」
「先生ってそういう方だったんですね」
「そうだよ」
「普段から生徒をからかっているんですか?」
「いや、生徒だけに限定はしていない。基本的には平等だから」
「思っていた以上に変な人みたい」
「まるで僕を今まで知らなかったみたいな口ぶりだけど」季時はまた姫川を見る。「転校生?」
「いえ、一年生です」
「ふうん。ああ、新学期だっけ」
「今は春ですよ、先生」
「昔は海外にいたから、新学期と言えば夏なんだよ」
「海外にいらしたんですか?」
「嘘だよ」
「どうしてかしら、年上の、しかも教師相手に、なにかこう、憤りみたいなものを感じています」
「それはよくないな。保健室に行きなさい。季時先生からの指示だと言って」
「叩いてもいいですか?」
「軽くならね」
姫川は季時の腰に、軽く拳を入れた。少しだけ体勢が崩れたが、すぐに修正出来る程度の揺れだった。
「こっちの棟に来て良いのかい?」
「どういう質問ですか」
「つまり、お昼は他のみんなと食べないのか、という疑問さ」
「私、いじめられてるんです」
「刺激的な自己紹介だね。僕が受け持ってるクラスだったら一年間分の単位をあげたいくらいだ」
「私が学校に来なくて良いように、ですか?」
「うーん」季時は返答に窮する。「そういう意味までは考えていなかった。君の気分を害したようなら謝るよ」
「……意外と繊細なんですね、先生」
「季時という姓の人間は大体そうだよ。九夜という名前なら尚更ね」
「先生の研究室にお邪魔しても良いですか?」
「あまり歓迎は出来ない」
「物理的なお話ですか?」
「感情的なら、断っているよ」
季時は自分の部屋に戻り、姫川を招き入れる。いつものように、資料や教科書、手紙の類が散らばっていた。
「座れそうなところに座って」
「先生の椅子ですか? それとも、先生のお膝ですか?」
「僕から職を奪いたいなら」
「冗談です。これ、どかしますね」書類を椅子からどけて、その上に腰を下ろす。「すごい、コーヒーの匂い。美味しそう」
「コーヒーは不味いよ。真実を知って騙される最初の概念だね。期待を裏切られるということの、最初の関門だ」
「他には?」
「煙草と、女性」
「高校生もありますよ」
「そうなの? 僕はそう思ったことはないな」
「いじめられなかったからですか?」
「いや、最初から期待なんてしていなかった」
「女性に期待をしていた時期があったんですか?」
「もちろんあったよ。もっと口数が少ないんじゃないかってね」
「……」
「コーヒー飲む?」
季時は引き出しの中からおもむろにカレーパンを取り出して言った。
4
「君ねえ、図々しいよ」
二分割されたカレーパンの一切れを食べながら、季時は言う。もう半分は、姫川の手に握られていた。しかも、カレーパンが入っていた袋は、姫川の方にある。純粋な物的価値であれば、半分ではなく、六対四が妥当だ。
「すみません、クラスメートにお弁当箱を捨てられてしまったので」
「コンビニで買ってくると良い。あそこは今日、ポケモンパンが安い」
「お財布を持って来ると盗まれるんです」
「君、なあ……君、不憫すぎるよ。どうしてそんなにいじめられるんだ? 君、不躾で悪いけど、見た目もそこまで悪いわけじゃないだろう」
「そこまで?」
「いや、かなり悪くないよ」
「悪くない?」
「……うん、そうだね、ああ、白状するよ、結構ね、いい線いってると思うよ。うん。スタイルも良さそうだ。あのねえ、こういうことを言うと贔屓されているとか言う子も出るからあまり言いたくはないんだけど、僕が高校教師になってからこの学校で出逢った生徒の中で、三番目くらいには美人だ」
「一番は誰ですか?」
「今年、卒業してしまったね」
「二番目は?」
「これは口にしたくないな」
「秘密なんですか?」
「いや、教えてもいいんだけどね、口にしたくないんだ。つまり、言葉として外に出すのが嫌なんだ。生理的に受け付けない」
「そんなことがあるんですか?」
「現にあり得ている」
季時はカレーパンの体積を半分にする。その半分はさらに壊され、季時の体内に吸収されていく。
「で、何でいじめられているわけ?」
「季時先生の仰る通りです」
「美人だから?」
「はい」
「ふうん」季時はつまらなそうに呟く。「妬みとかそういうものかな」
「いえ、三年生の先輩に告白されて」
「ああ、嫉みというやつか」
「振ったんです」
「ああ、そうなの。まあ恋愛は個人の自由だからね」
「そうしたら、三年生の先輩たちから目をつけられて」
「うんうん」
「そのまま一年生に飛び火したんです」
「なるほどね。今、何月?」
「まだ四月ですよ、先生」
「だよねえ。だと思ったんだよ。入学してから、まだ一月経ってないんだろう? そんなに世界は流動的なわけ?」
「告白って早いですよ。早くしないと誰かに取られちゃう、って思いますから」
「ふうん。僕には分からないな。基本的にね、時限的な制限のあるものは欲しがらないことにしてるんだ。心が焦るからね」
「良い判断だと思います」
「それで、君はこんな葉書を寄越したわけ?」
季時は引き出しから、今朝ポストに入っていた葉書を取り出す。
「はい」
「即答なんだね。潔い」
「本当はもっとミステリアスに近づこうと思ったんですけど、先生に気付かれなかったらと思ったし、先生は気付いても、私に話しかけてくれそうになかったので」
「それはそうだね。無駄なエネルギーは使いたくないんだ」
「その葉書を読んで、どう思いました?」
「つまらない、と思ったよ」
季時は即答する。
「つまらない、ですか」
「君の筋書きはこうかな。今朝、ポストに不思議な葉書が入っている。僕はまずその異常性について触れる。切手も貼られていない。ならば誰かが個人的にポストに入れたのだろう。事件の香りがするね。朝、学校に来ると、一年生のネクタイをした生徒が挨拶してくる。初めて見る顔だ。しかも美人だ。僕の回りくどい会話に付き合って見せたりしてね。そして僕は葉書を見る。日々の異常性や退屈さを示唆する内容だ。大抵の人間なら、もちろん男に限定されるだろうけど、君みたいにね、悪くない若い女の子が積極的に声を掛けてきたら、何か面白いことが始まるんじゃないかとわくわくするだろう」
「で、ですよね? そうですよね?」
「だけどね、つまらないんだ」
季時は葉書をひらひらと揺らした。
「面白いことはね、向こうからやってくる」
季時は断定的な口調で言う。
「自分から世界を変えようなんて、つまらないよ。ああ、退屈だね。まったく、怖ろしいよ。怯えるくらいだ。君が? 僕みたいな変人を捕まえて? しばらくちょっと面白そうな学校生活を楽しもうとでも思ったのかな」
「そんな……つもりじゃ」
「待っていても始まらない、なんて言う人もいるだろうけど、ナンセンスだよ。大抵、良い巡り合わせってのは、向こうから来る。僕の人生がそうなんだから、大体そうに違いない。それまでに僕たちに出来ることをは、ナイフを研いでおくことぐらいだ」
季時は葉書を姫川に向けて、滑らせる。
「自分から日常を打破しようなんて滑稽な精神論じゃあ、いつまでたっても面白くなんてならないよ。どうして分からないの? あのねえ、毎日がつまらないなんて思っている人間が何かしたところで、そのキャパシティは超えられない。面白くなんてならないんだよ」
姫川はその言葉で、ようやく季時の真意に触れることが出来た。何を言われているのか、あるいは、何を説かれているのか。
「君、面白そうじゃないか。いじめられるなんて経験、なかなか出来るものじゃない。それこそ君が望んでいる世界だ」
「こんな世界……!」
「望んでないの? あっそう。ふうん。さっきも言ったけど、刺激的だよ、いじめられるなんて。それがいやなら、退屈なんて手紙を書くべきじゃない。回りくどい装飾なんていらないだろう。ただ助けてくださいと誰かに泣きつけば良いだけだ」
「……」
「……面倒だなあ」季時は本心から呟いた。「なんで図書館とか、保健室の先生に話しに行かないわけ? 僕に話されても、ポケモンの話くらいしか出来ないんだよ。生物教師だからね」
「……あの」
姫川は涙を堪えるように、痙攣したように話す。
「ポケモンが」
「うん?」
「私の飼ってるポケモンが、あの、ヒメグマなんですけど、いなくなって」
「迷子?」
「いじめが、はじまって、それからすぐ、いなくなって……探しても、いないから、誰かに、助けて欲しくて……」
途中から、姫川は泣き出していた。けれど、季時は変化を認めない。そうすることが、対する相手の平穏を乱さない方法だと知っていた。
「私、本当に、ひどいいじめられ方をしてるんです。本当に、ひどくて……先生は分からないと思いますけど、本当に。誰かに相談したら、もっとひどいことになる……」
「僕のところには来ても良いわけ?」
「先生は、誰とも、つるまないから。だから、誰にも、迷惑をかけないで済むから……」
嗚咽混じりに姫川は言う。不思議だな、と季時は思う。彼女はまったく、朝の挨拶から、活発で、元気な女の子だった。それが、一度崩れてしまえば、こうも変わってしまう。
こんなに美しい生き物なのに、と季時は思う。恋愛感情や、性的感情を抜きにして、季時は美しいものが好きだ。造形として。ただ美しい女性や、ただ美しい姿が好きだ。姫川は、季時の中で許容出来る美しさを持っている。その許容とは、リスクとリターンの問題だ。面倒事に巻き込まれるだけのリターンが得られるか。つまり、その美しい存在と行動を共にすることで自分が得られるカタルシスであったりするものだ。どちらが得か、どちらが面白そうかと言えば、断然、彼女の手助けをすることだ。
コーヒーカップに視線を落とした。レアリティ。彼女こそそれに相応しい。自然界に発生する色違いと同等に美しい存在。周りが劣っているから彼女が美しいのか。あるいは単なる希少価値か。それとも、絶対的価値観なのか。それを判断することは難しい。
「姫川君、仕方ない、そのヒメグマを助けるところまでは、手を貸そう」
「……本当ですか」
「ああ。君の言う通りね、僕が君に手を貸しても、誰かにやっかまれることはない。やっかまれても、まあ気にしないからね。ただ、僕もタダ働きというのは気に入らない」
「……何をすればいいですか」
姫川は少し落ち着いていた。
嘘泣きではない。泣くこと自体イレギュラーだったはずだ。
「体で払ってもらおうかな」
「……分かりました」
姫川はすっと立ち上がり、季時のすぐ目の前に来る。そしてブラウスのボタンを外しはじめた。
「いやいやいや、ちょっと待とう。うん、だめだ。君はね、そういう、少し冷静になろう」季時は慌てて姫川の手を掴んだ。「君ねえ、ジョークが通じないの? 犯罪だよ、君に手を出したら」
「結婚してください」
「落ち着こう。分かった、もう二度とジョークは口にしない。誓おう。誓約書を書いてもいい」
「学校なんてもういいんです。楽しい学園生活なんてもう過ごせない。助けてくれるんですよね、先生。私、私のことを助けてくれる人、好きです」
「定義が曖昧になっている。悪い兆候だよ。悪いけど、僕にはカゲボウズっていう、大事なパートナーがいてね。彼女の成長に悪影響が出るから、こういうのはやめてくれるかな」
「私本気です」
姫川は下着が見えてしまうくらいにブラウスが開いた状態で、季時に迫っている。季時は視線を入り口の方に向けて、逸らしていた。
「僕も本気だ。ここは年上の言うことを聞こう」
「助けてくれますか?」
「そう言ったはずだ。限定条件付きで」
「何をすれば助けてくれますか?」
「無償で良い。分かった。勘弁してくれ。そうだ、今後僕にさわらないという条件にしよう。それなら尽力する」
季時は必死に、自分の地位を守ろうとしていた。しかし、手荒な真似をして刺激するのも良くない。どうするのがベストかを考えあぐねる。
「きゅーやーん、ポケモンパンが安かったから買って来……」
ドアが勢い良く開き、常川という女子生徒が元気良く喋っていた。季時をよく知る人物であり、恐らくこの校内では、彼との付き合いが一番長い。現在は二年生である。
「………………えっと、何してるの?」
「いや……」季時は椅子から少し腰を浮かせた状態で、姫川の両手を押さえている状態だった。「……局地的な台風」
「……さいてー」
常川は開いた時以上の勢いでドアを閉めた。人生が終わる時よりも深い痛みに襲われながら、季時は溜息をついた。
「……あの子にこの状況を説明して誤解を解いてくれるなら、君の力になるよ」
「本当ですか!」
「ああ、もう……好きにしてくれ」季時は椅子に思い切り落下する。「どうしてくれるんだ、君は一体。ええ? 本当……勘弁してくれよ。僕が何をしたって言うんだ……」
「あ、あの……ご、ごめんなさい先生。あの、先生がそんなに狼狽えるなんて……」
「別にいいさ。他の生徒なら、まあ、そこまでひどいことにはならない。けどね、常川君……常川君って言うんだけどね、彼女だけはダメなんだよ。彼女だけは、こういうのは良くない。君と会った時に、最初に言っておくべきだった。常川君だけはいけない」
「……あの、常川先輩? って、先生の何なんですか?」
季時は机に突っ伏したまま、十秒近く考えてから、「……彼女が二位だよ」と答えた。