※ネタバレ含みます。
『スケープゴートは夜に泣く』を読んでくださった方ありがとうございます。読んでいないのにあとがきを読もうとしている不届き者はこの世には存在しません。熱い想いをぶちまけたく管理人様に許可を得て、小説投稿場にて堂々と公式にあとがきを掲載しております。こんばんは、戯村影木です。
二次創作小説を書いてて思うことの一つに「おいおいこれポケモンでやる必要ねえんじゃねえの?」というものがあります。事実、僕が過去に書いてきた(Arc、六々新奇名義)ポケモン二次創作の中には、もはやこれはポケモンでやる必要はない、というようなものが多くあります。メインキャラクターが現実世界の男女であったり、そもそも世界観が現実世界に準拠していたり。あるいは、『ポケモン』ではなく、『ただの動物』であっても構わないような作品を多く書きました。自分の中では、『ポケモンでやりたいんだ!』という熱い想いがあったにもかかわらず、傍から見れば『オリジナルでやれ』と思うような作品を数多く書いてしまったと思います。
それもあってか、しばらくの間、僕はポケモン二次創作から離れ気味でありました。ポケモン二次創作、あるいは二次創作というものに手を出して早五年、気付けば遠くへ来たもんだ、という感じですが、その間に培った打鍵技術を鑑みるに、どうやら僕はいわゆる『王道』と分類される作品を書き上げるだけの熱意や夢がなくなってしまったのだなあ、と感じました。
そんな折、ふとした拍子に兼ねてから交流のあるポケモン二次創作家の方に、『ジュペッタを題材にした小説を書いてみてよ!』と言われました。久しく二次創作をしていなかった僕ですが、良い機会だし、と思い、書き始めてみました。『人形師の一人遊び』というタイトルの小説で、『逢阪了』という人形師を主人公にした小説です。未公開作品ですが、いずれどこかで公開されるかもしれません。
これを読んで頂いたところ、「面白い!」という評価を頂けました。ハッキリ言って、もう自分の作品が面白いかどうかという判断も出来なくなっていた時期だったので、ちゃんと『ポケモン』出来ているかどうかも分からない作品を面白いと言って頂き、僕は若干の自信を取り戻しました。そして、二次創作を書き始めた頃からの目標だった『ポケモンミステリ』を書いてみよう、と思い立ったのです。
ポケモンミステリ。
良い響きです。
二次創作を始めてすぐの頃、合同誌の執筆にお誘いしていただいて書いた短編の一節にも『ポケモンミステリ』という単語を出した記憶があります。あの頃から憧れていたジャンルだったので、どうにか書ききってやりたいという思いがありました。
それに加え、せっかく書くのならシリーズものにしたいと思い、第一作にあたるであろうこの作品は、「主人公と、その相棒になるポケモンとの出会い」を書こう、という気持ちだったわけです。
僕は小説を書く際に、一般的な書き方と大きく逸れた書き方をしている自覚があります。まず第一段階に『タイトルを決める』があり、第二段階に『キャラの名前を決める』です。まとめてみると名前ありきの小説です。もちろん最初に「ジュペッタを題材にしたミステリを書いてみよう」という漠然とした方向性はあるのですが、そのトリックや様々なプロットなどはすっ飛ばして、まずタイトルを考えました。当時(三ヶ月ほど前です)手帳に書き込んだメモ書きを見てみると、
主人公(探偵)。
ゴスロリ少女(ジュペッタ)。←内向的なジュペッタ。←常に抱かれている。
マニューラ(1.1m)。
頭の良い教師の女性。
ガラの悪い男(リザード)。
ジュペッタは囮。
こんなメモ書きが散乱しております。
本文を何度読み返しても主人公は探偵ではないし(探偵役ではありますが)、頭の良い女性教師は出てこないし(頭の悪い旅人は出て来ます)、ガラの悪い男も出て来ません(多分、荻野さんでしょう)。プロットなんて書いたところでなんの役にも立たないということがよく分かります。ですが、恐らく最後の一文、「ジュペッタは囮」の部分を見て、『スケープゴートは夜に泣く』というタイトルを思いついたのかと思います。タイトルを思い浮かべてしまえばあとは簡単です。登場人物の名前さえつければ、九割完成します。
主人公、立花戦。立花は語感、戦は「いっくんさん」とかそういう愛称で呼ばれたら可愛いだろうなという感じでつけましたが、ついぞ作品内で呼ばれることはありませんでした。次回作があれば、そう呼ぶ誰かが出てくるかもしれません。
ヒロイン、リーチェ。偽名で行こう、と考えて適当につけました。可愛い名前が良いな、と思って、語感で。書いている途中で「チェリー」のアナグラムであることに気付いたので作品内でネタにしようと思いましたが、時既に遅し、終章を書いている途中でした。尚、本名であるという「弥生」についても、その場でつけたので意味はありません。
旅人、夢見屋眠子。ゆめみやねむこ、と読みます。寝心地の良さそうな名前だなあ! と思ってどこかで使おうと思っていたので、つけました。とても可愛らしい名前だと思います。口調と相まって、育ちの良い、けれどちょっとおてんばなガールが出来たのではないかと思います。
荻野六。完全に語感で。「荻野さん!」という苗字の感じが、優しいお兄さんという感じでした。六という名前は、癖のある名前の多いキャラクター勢の中で、なんとか個性を出そうとした結果なのかもしれません。「りっくんさん」とか。呼ばれませんでしたけど。
そんな感じでタイトルと名前だけを思いついて、一章の一話を書き始めました。二十分くらいで書いた記憶があります。まだどんな事件が起こるか、人が死ぬのか、この屋敷はどんな屋敷なのか、何も考えていませんでしたが、とにかく四人を一つの屋敷に押し込めます。あとはキャラクターが好きに動いてくれるだろう……と期待して、しばらく寝かせていました。
それからしばらく経って、ふと時間が空いたので書きかけだった『スケープゴート』を書き始めてみたら、なんか知らんがリーチェさんが可愛い。ノリに乗っているうちに話の展開も定まってきました。どうやらここは『逢阪屋敷』という屋敷である。上記した『人形師の一人遊び』という作品に出てくる人形師の血筋です。ということは人形がある。リーチェさんは人形が好きそうだ。メモ書きにあった「マニューラ(1.1m)」を当時の僕がどういう考えの元で書き記したのかは分かりませんが、少なくとも入れ替わりトリックを使う予定はあったそうです。『ポケモン』というファンタジー色の強い作品で殺人事件はあまり綺麗ではない。でも、ゴーストであるジュペッタを殺すなら……そう考えて、話の核を練りつつ、作品を書き上げていきました。
一章五話分を書き終えたところで投稿し、これでしばらく書かなくていいやあ……と思っていたところ、思いの外高評価を頂いて(まだ事件も発覚していないのに)、前述した二次創作家のお知り合いにも「続きはよ!」と言われまくり、丁度休みも重なったところで、ガッツリと二章目を書きました。皆さんもお気づきかと思いますが、リーチェさんがものすごく可愛い。あまりに可愛いので話は勝手に進んで、気付けば二章も一日で書き終わっていました。
恐らく一章を書き終わった時に確信していたのですが、「これは本格ミステリになる」という感じがしていて、伏線として名前を出した「マニューラ」や「スケープゴート」を整理しているうちに、ふと「連載形式なんだから、読者の方にも推理をしてもらおう」と思い立ちました。本当は一週間くらい間を空けて投稿しようかなとも思ったんですが、その間にポケノベでの「スケープゴート熱」が冷めてしまうのも嫌だなあと思い、二日ほどの時間を空けて、解決編を投下しました。実際、推理出来た方、いらっしゃるのでしょうか。恐らく「ジュペッタの中に人形を入れてるんだろうな!」という推理に行き着く方は何名かいらっしゃるのだろうと思いますが、それだと癪なので、その可能性を潰す一コマも書きました。見事騙されていただけたなら、本望です。
三章からの流れは一気に書き終わりました。やはりミステリばかり読んでいるとミステリ独自の「種明かしは最後にみんなで」という展開が染みついているので、ほとんど手癖でがーっと書きました。でも、個人的に「トリックは分かったけど謎はまだ残ってて……最後にどんでん返しが!」という小説が好きなので、自分もそれに倣って、何かないかな? と書きながら考えてみました。思いついたのが「タイトルを伏線にしよう」というもの。僕の書き方は七割の確率でほとんどの要素が後付けです。まあ、『スケープゴートは夜に泣く』ってタイトルはそのまんまなんですけれど、それにもちゃんと意味を持たせてみようということで、そのタイトルの意味の解明を最後にもう一盛り上がり、という感じでくっつけました。本当は三章で終わる予定だったんですが、四章(終章)を書くに至った動機も、その辺が主です。
で、逢阪巴さんなんですが。
萌えキャラでした。
それを意図してつけた名前ではないのだが……。
当初予定していた逢阪巴さんは、高圧的で生意気で高飛車なお嬢様キャラだったんですが、主人公立花さんが玄関を開けた瞬間そこにいたのは萌えキャラでした。「ごめん戦」が口癖で、ネガティブで内向的。設定上『人払い』という特殊能力が入ってしまっているので、立花さんや他の血族としか仲良くなれない可哀想な少女。恐らく除霊の仕事も、依頼人と上手くやれずにやっていて、心を許せる相棒である立花さんと一週間離れて暮らしていたんだなと思うと胸が苦しくなってあんなキャラになっていました。リーチェさんも好きなんですが、最後の最後で作者の僕は巴さん萌えに陥りました。
怖ろしいキャラだ。
近づけないのでしょうけれど。
そんなこんなで終章を書き終わりました。
あのジュペッタがどういう意図で生まれたのかは分かりませんし、本当にリーチェさんと五年間行動を共にしていたのかは分かりません。本当はただの野生のジュペッタかもしれませんし、どこかで交換しただけかもしれません。それでも、彼は利用され、捨てられてしまいました。かわいそうなジュペッタ。ジュペッタは不憫でこそ映えるというのは某ジュペッタ好き様からの影響なのですが、その影響が露骨に出ています。
普通の小説ならこんなことは死んでも書かないのですが、二次創作ということで自由にあとがき書かせていただきます。今回の作品、最後の台詞は本来であれば、
「ねえ戦、その子、なんて名前にするの?」
「……リーチェ、だよ」
となるはずでした。
この終章を書いていたのは午前三時頃だったかと思われますが、寝不足でぼーっとした頭の中、作品の最後の一文を書いた時、それを最後とする意図はなかったのですが、何か頭に電流が走ったような衝撃を受けました。これ、読んでいる方も同じ思いをした方がいるかもしれません。とにかくなんかこう、
「ああああああああだからあのタイトルなのねえええええええ」
というような感じというか。
僕の記憶が確かならば、スケープゴート、という表現はしていなかったように思います。囮とか、そういう表現も。していたら恥ずかしいんですが……まあとにかく、最後の最後でタイトルに意味を与えるということに成功した僕は、もう少し続く予定だった巴さんとの会話劇もそこで終わりにして、作品をカットしました。終章が一話分だけなのは、そういう理由です。本当は終章も四話分くらい書ければ、バランス的には丁度良かったんですが……。
ともあれ、この作品はなんというか、リアルタイムで書けたことに意義があったなあという感じです。チャットにも顔を出させて頂いて(本当に名を売ることが目的だったんですが、楽しませていただきました)、読んだよ、とか、面白いよ、とかそういう評価をいただけて嬉しかったです。Twitterでも僕をフォローしてくださる方が多くて、本当にありがたい限りでした。そんな声を多く聞いていたおかげで、作品を書くこともノリノリで出来ましたし、良質なキャラも生まれたなあという感じでした。
ここ、ポケノベに作品を投稿したのは特に意味あることではなく、某黒い方が「ここにすれば」という軽いノリで仰ったのをそのまま真に受けてという感じなのですが、それでもサイトの扱いやすさとか、投稿小説の読みやすさとかを鑑みると、ここで良かったなあ、という感じでした。
もしかしたら戯村影木、あるいは六々新奇、最古ではArc、という筆名をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、誰がどう書いたということは関係なく、純粋に『スケープゴートは夜に泣く』という小説を楽しんでいただけたなら幸いです。
最後に、僕の敬愛するミステリ作家には『作品名だけ考える』という習性のある方が多いようで、僕もそれに倣って次回作(書く元気と頭があれば)の予告をしてこのあとがきを締めさせて頂きます。
『嘘が上手なマリオネット』
戯村影木でした。