一章外伝─絶望の【世界】─
その【世界】には【光】が存在しない。
その【世界】には【闇】しか存在しない。
その【世界】には【暁】が存在しない。
その【世界】には【黄昏】しか存在しない。
その【世界】には【希望】が存在しない。
その【世界】には【絶望】しか存在しない。
その【世界】には【勇者】が存在しない。
その【世界】には【独裁者】しか存在しない。
その【世界】には【正義】が存在しない。
その【世界】には【悪】しか存在しない。
──その【世界】には【命】が存在しない──
──その【世界】には【死】しか存在しない──
かつてその【世界】に入り、発狂した吟遊詩人の詩である。
黄ばんだ詩集の最後のぺージには、ある言葉が綴られていた。
────【闇】という名の【檻】を切り裂く【光】を────
────【黄昏】という名の【悲しみ】を燃やし尽くす【暁】を──
────【絶望】という名の【鎖】を引きちぎる【希望】を───
────【独裁者】という名の【悪魔】に制裁を与える【勇者】を──
────【悪】という名の【猛獣】を静める【正義】を───
──【死】という名の【闇】【黄昏】【絶望】【独裁者】【悪】に制裁を与える──
───【命】という名の【光】を【暁】を【希望】を【勇者】を【正義】を───
─────我に与えよ────
その詩の次にも黄ばんで所々が読めなくなった文章が綴られている。
そして我を救いし■よ。古■時代に伝■りし■説の秘■を■殿■外にある伝■の扉の■にて■■せ。そ■す■ば我■囚わ■■■る■界への■が開き、我を含■そ■世■に囚わ■■者■が解■され、その■■は■裁の■を受け、一■の内に■滅する。こ■から■の世界に住■う者達に■ッセー■を■■える■法を教■■。
────その方法とは───
次の文章を見た私は思わずヒッと息を飲んだ。
ぺージ全体が、墨で塗りたくられて見れないのだ。
それも、市販の物と違う──水を掛けても落ちない墨だ。
まるで、私が見るのを予め知っていた様だ。
すると、私の背後で聞き間違う事なんて無い、忌まわしい声が聞こえた
『ユリアナ………何をしている……』
私の背筋が凍り付く。
ゆっくりと振り向くと、そこには【夫】の姿が有った。
『貴方………私は只……詩集を読んでいただけで………』
震える私の声を嘲笑う様に、【夫】は言う。
『この詩集だけは厳重に封印していたというのに………封印を解くとは……
見事だな……だが…………』
次の瞬間、【夫】は私が読んでいた詩集を暖炉に放り込んだ。
羊皮紙の詩集は、黄色から橙色、そして紅色を経由し、灰に成った。
炎の下に敷かれた薪の更に下………そこにある炭の一部に詩集は成った。
私のこの【世界】から逃れられる雄一の【希望】は表面上消えた。
けれど、私には一つの策が有る。
その策有る限り、私の【希望】は消えない。
息子に伝えるまでは、私はこの【世界】に屈しはしない。
詩集の作者と同じ末路等辿らない。
───【命を創りし者】に仕える一族の誇りの為に───
一章外伝終了。