しるし > しるし > 37 【三十七】ありがとう【了】 を読んだ感想 | ||
![]() |
投稿者:とらと 2021/04/11(日) 22:19 | |
[表示] 大変遅くなりましたが完結お疲れさまでした!!!!!直近で長くてしかも内容の濃い連載を二作も完結させていてすごいの極みですよね。本当に尊敬します。完結ってだけでも十二分に素晴らしいのに、それが面白いんだから凄いよな。しかも毎日更新て本当すごいです。そうそうやれることではないです。まずは本当にお疲れさまでした。 連載中にツイッターでお話されていたことのなかで一番気になっていたのは、今回はキャラクターを気に入っていると仰っていたことでした。わらびんは自分の作るキャラクタについては(愛着がないとはまったく思いませんが)結構ドライ……?ライト?フラット?な考え方をもっているタイプの作家さんだと思っていたので、その方が「キャラクターを気に入っている」とおっしゃるのだから、どういう心境の変化なんだろう(?)、キャラ作家ワイとしてもかなり気になっている&楽しみなところでした。読んでいたらどのキャラがわらびんの推しなのか分かるのかな?と思いながら読み進めてはいたのですが、確証に至るほど「これは今までのキャラとは全く違う!」というようなタイプのキャラは見当たらず(ちょっと年齢層が高いなと思ったくらい)、それはそれとして私はエンイさんが好きでした。なのでわらびんもエンイさんが好きなのではないかと思いました。(?)ヒーローが遅れてやってきた感じ!!ヒノテさんとエンイさんの関係性、若いころはギスギスしてて互いを意識するあまりいがみあってお互いを認められず、みたいなところが、歳を取って丸くなって互いにいろんな経験を経て、顔を突き合わせてあの頃は〜なんて一緒に酒を飲むことができる、この二人の関係性が気に入ってらっしゃったのではないかと推察します。というかそこがすごく私が好きでした。エンイさんは弟分思い(ヒナタさんの名前を呼ぶシーングッときました……)でマグマ団時代も仲間を作っていばってる感じで、対してヒノテさんは一匹狼タイプで互いに相容れなくて、でもそのエンイさんがここで裏切られて一人にされたときに、手を差し伸べるのがヒノテさんで、この関係性が、いいですよね。分かります。私もそう思いました。でも『僕は、ポケモンを燃やした』のときに一番好きなキャラはケーシィ(かわいいから)だと仰っていたので、もしかしたらラグラージとグラエナとヤミラミが好きだったのではないかともちょっと思っています(かわいいから)。 もちろんメグリちゃんもかわいかったです。冒頭は不思議っこかと思ったんですが、一生懸命で他人思いで、本当にかわいくて良い子でした。どうしてそこまで故郷のために頑張ろうと思えるのかおばさん分かんないなって思いました。町長の娘として故郷のために頑張らなければならないという呪縛が彼女の中にあるんでないか、だとしたらその呪縛から解いてあげることが彼女にとっての本当の幸せなんじゃないかとかちょっと考えてたんですが、彼女はきっと「フエンタウン」という町そのものではなく、フエンタウンを内包するこの自然そのものが好きなんだろうなと思いました。だとしたら、かつて危機に脅かされた彼女が愛するこの自然を守るため、町長を目指すってのも、応援したいなって思いました。かわいいです。前途が多難なのが心配ですが町の皆には彼女を応援してあげて欲しいなと思います。(父親(町長)って作中の扱いとしては普通に悪人だったんでしょうか……ドキドキ……) かつて悪人・それも一介のモブとして主人公に成敗され、倒した主人公の記憶にすら残らないような存在だったヒノテさん。この作品の主人公はヒノテさんだったんですが、大きい視点で見ると、本当の主人公の立ち位置はメグリちゃんであることは疑いようもありません。ただヒノテさんの立ち位置は、記憶にも残らない単なる下っ端から、メグリちゃんが次の物語の主人公になるためのプロローグに登場する最重要人物、になったんですよね。メグリちゃんが冒険に出て、彼女の物語の「悪の組織」としての立ち位置であるフエンタウン上層部(父親がラスボスか……熱いな……)と戦うとき、メグリちゃんがボス戦に辿り着くまでに蹴散らすモブたちの中に、かつてのヒノテさんがいるのだと思うのですよ。変な見方かもしれませんが、ヒノテさんはメグリちゃんの心に火を灯すことによって、間接的に過去の自分を清算することができるんですね(ヒノテさんが彼のこれまでの旅と今回の件で過去の行いにけじめをつけたのは前提として!)。そんなヒノテさんの立ち位置の渋さが、実にわらびんらしいなと感じました。 また私が好きだと思ったのは、ヒノテさんの手持ちポケモンたちの物語です。ゲーム原作の悪の組織が成敗されたあと、その構成員たちが更生したりする様子は見えますが、彼らとともに悪事を働いていたポケモンたちが何を考えているのかには、あまりスポットが当たってこなかったかもしれないと思いました。ポケモンはポケモンですから、本作のグラエナのように、トレーナーと同じようには罪の意識にさいなまれず、「ヒノテはいつまでウジウジしてるんだ(超訳)」と思っているポケモンもいれば、ヒノテさんと同じように罪の意識に苛まれるポケモンもいるだろうし、エンイさんやヒナタさんのようにそう簡単に悪事から足を洗えないポケモンもいるだろうし、自分たちが悪いことをしていたと理解してすらいないポケモンもいるだろうし。そして、彼らのトレーナーが罪を償って日常に戻ったあとも、ポケモン同士の中で偏見の目に悩まされることもあるかもしれない。この視点はすごく申請に思えて感心させられました。ヒノテさんが悪いことをしていた時にずっと一緒に居たグラエナと、自分を置いていったヒノテさんを否定せず受け入れたラグラージ、ヒノテさんに対しての役割が互いに互いの補えない部分があって、嫉妬してるような、めっちゃ互いに意識しあってる関係性がすごく良かった〜。めっちゃ互いに意識しあってる関係性が二組あるんですね!!違いは二者の間にヤミラミみたいな緩衝材?清涼剤?がいたかいなかったか、でしょうか。ヒノテさんとポケモンたちの送ってきた旅をもっと見てみたいなと感じました。 わらびんの作品にはどれも安定した面白さがあるの、めちゃくちゃ魅力だと思います。どれを読んでも面白いって分かってるからどんどん読めちゃう。また重い展開でもそこまでストレスに感じないのが不思議です。文体の影響なのかな? 世界に入り込んで感情移入してアワアワオロオロするよりは、一歩引いた目線で、彼らの物語を追いかけているような感じなんですよね。だから凄く安定感を感じます。せわしない日常に寄り添って心を豊かにする小説って感じです。偉大です。 これからも続いていく彼らの人生を感じさせるようなエンディングでした。この先の彼らの人生に、たくさんの幸せが訪れることを願ってやみません。本当に完結おめでとうございました!! [01]
|