まっしろな闇 > 続・キリにて > 18 Page 120 : ひとりじゃない を読んだ感想 | ||
投稿者:とらと 2020/04/25(土) 01:43 | ||
[表示] 『続・キリにて』完結お疲れさまでした!! うわ〜は、ハッピーエンド……ハッピーエンドと言ってもいいですよね!? エンディングと呼べる場面ではないここからまた物語が始まるというシーンですし、ハッピーエンドと形容するのはまったく的外れな気もしますが、すっごく久々に光を見たような、長い長いトンネルを脱したような、大きな感慨に包まれています。なんか前も似たようなことを言ったような気もするのですが、例えば逃走したブラッキーを見つけてラナちゃんが説得を試みるシーンで、普通ならブラッキー傍に戻ってきそうなものじゃないですか。でもしろ闇はそうはならない。なんで……と思わされるくらいどんどん追い詰められて、徹底的に沈んでいって、でもやっと、やっと安堵できるものを見られた……というか。アメモースが飛んできたとき本当に本当にグッときました。アメモースを奪うようにして首都を離れたラナちゃんの選択が決して間違いばかりではなかったことが証明されたんだと思いたいです。でもこのアメモースの飛翔、エーフィたちとの再会ブラッキーが戻ってきたこと、穏やかとまでは言わないけれど優しい食事のシーンと「会いたい」という言葉、これらから噛み締められる幸福さや希望に似たものは、決して『Page 120 : ひとりじゃない』単体で語られるものではなく、『続・キリにて』全編、ひいては『まっしろな闇』がこれまで丁寧に繊細に積み上げてきたすべてを通してこそ得られるものですよね。そのことは『Page 112 : 変移』の >「私、今、考えてた、」 という台詞の続きが『Page 120 : ひとりじゃない』で明かされた時に強く感じました、実に丁寧に積み上げられてきた作品なのだよなあと。この物語の長い長い旅路を思って胸が熱くなると同時に、これから先の彼らが力強く旅路を歩んでいくことへ思いを馳せたくなる極上の一話でした。 ラナちゃん、と書きましたが、未だに『アラン』という呼称に違和感を覚えながら読んでいます(そこは作者さんも織り込み済みだとは思うのですが)。アランという文字を見るたびにさっぱりと明るい顔で笑う少年の姿が思い浮かべられるし、描写のひとつひとつが女の子であるさまを見るたびにああそうだよなぁと思わされるし。彼女があのタイミングで出した偽名が『アラン』だった理由をまだ掴み切れずにいるのですが、代わりに生きようと思っているというのもどうだろうなんだか違うような気がするし、彼女が強くありたいと願ったから名前を借りたのかもしれないし。ザナトアさんの元から離れるまで彼女は『アラン』のままでしたね。キリを出たあとはどうするのだろう…… > 相手をできるだけ信用しないように。思い出も、弱い自分自身も上書きされるように。強くなれるように。そうして、多分、少しずつ上手くいっていたんです。 ザナトアさんやエクトルさん、あるいは水神さまの視点から語られるラナちゃんが子供として異様であること、そうやって生きていかなければいけないラナちゃんの心の変化やその過程がすごく緻密に描かれていて、キリの育て屋さんでの生活を追いかける描写と共に、ラナちゃんというキャラクタやこの物語そのものに血が通っている感じがして、何度も同じ言葉を使いますが、丁寧に紡がれた作品だなあと思います。こんな言い方をするのはどうなのかなと思うのですが、長年この作品を愛してこられた海さんの愛情のなせるわざだと思うのですよね。しみじみ良い作品だよなあと思います。 『Page 120 : ひとりじゃない』の展開が秋、冬をすっ飛ばして春だったこと、生命の誕生のシーンなども実に象徴的でしたが、ではその秋、冬の間、クロ(白)くんや圭くん、真弥さんたちはどうしているのかというのが気になりますね。ラナちゃんが彼らのもとを離れることでポケモンたちにスポットが当てられ、彼らの存在がラナちゃんの歩みの中でより大きなものになりました。『アラン』としての生活を経たラナちゃんが、クロくんたちとどう向き合うのか……そもそも容易に再会が叶うのか……あるいは空白の半年間が語られるのか。続きも楽しみにお待ちしております。ともあれ、ひとまずは『続・キリにて』本当にお疲れさまでした!! [34]
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投稿者:海 2020/04/27(月) 21:41 | ||
[表示] >とらとさん ご感想、ありがとうございます! ハッピーエンドです!この地点を目指して長い長い沼展開を書いていました。首都編といいその前のキリ編といいハッピーエンドから縁遠い章ばかり重ねていたので、実際この後味の良さは物凄く久しぶりです。懐かしき、圭のリコリスとの別れを果たしてハッピーととるかは微妙なラインですがリコリス編終わりから数えると話数にして70話近く跨いでいます。数値化すると恐ろしいものです。 >逃走したブラッキーを見つけてラナちゃんが説得を試みるシーンで、普通ならブラッキー傍に戻ってきそうなものじゃないですか。でもしろ闇はそうはならない。なんで……と思わされるくらいどんどん追い詰められて ブラッキーが傍に戻らなかったその時の理由というか具体的な彼の当時の心理状態は多分今後書かなくて、想像に任せる形にはなりますが、Side1-2で書いたようにブラッキーが錯乱状態に陥っていたことは確かです。 アメモースの飛翔、誰でもそのおうちそうなると予想のつく展開を、希望の象徴として自分の中にもプロットにも掲げて長ーーーーい沼展開を書いてきましたので、グッときてくださって良かったです。明るいキャラが失われたがために、誰に救われることもない、あまりに暗くて長くて覚束ない鬱展開を読ませるのはこちらとしても大変心苦しかったのでようやく許された気もします。 >アメモースを奪うようにして首都を離れたラナちゃんの選択が決して間違いばかりではなかったことが証明されたんだと思いたいです。 そうですね……やっぱり最初はアメモースも突然主人の元から引き離されて、そして翅を千切られた直後でもあり、アメモースの内心を直接描くことはなかったんですけど、混乱していて。ラナが誰にも言わず(そもそも本来の主人であるクロは不在なので言う先も何もないところありますが)アメモースを勝手に持ち出したことは手放しに正解ではないかもしれないけれど、結果的にはアメモースにとって悪い道では無かったと思います。彼にとってクロは勿論重要ですが、奪われて最も辛かったのは、きっと空でしたから。 >『続・キリにて』全編、ひいては『まっしろな闇』がこれまで丁寧に繊細に積み上げてきたすべてを通してこそ得られるものですよね。 あ〜ありがとうございます……。暗闇が長いと光は余計に輝く……。こういう、長く引っ張った末に展開していくのが長編の醍醐味ですよね。一度首都編で破壊し尽くしても、むしろその破壊も全体のストーリーという枠では積み重ねの一環で、そしてこの上にまた重なっていくものを考えると気が遠くもなるんですが、こうして言っていただければ、積み重ねてきた甲斐もあるし、またこれから頑張ろうと身が引き締まります。 >ラナちゃん、と書きましたが、未だに『アラン』という呼称に違和感を覚えながら読んでいます 時々言っていただけます。それはアランくんに思い入れを持ってくださっているためでしょうから、有難さと申し訳なさが混ざります。 『アラン』の理由は今後彼女の口からある程度話す時が恐らく来ます。理由は「これ」という一つではないですが、もしかしたらこうかもしれないというヒントは少しだけ散りばめてあります。いつかその時が来たら、読者様に納得されるかどうかはわかりませんが「ああそうだったん」くらいに思っていただければ。因みに理由と全く関係の無いところですが、彼女の通称表記と彼の表記は酷似していて、「Alan」のAを一番後ろに移すと「Lana」になるスペリングの美しさ(?)が隠されています。 >ラナちゃんの心の変化やその過程がすごく緻密に描かれていて 勿体ない言葉です、ありがとうございます。今回の話を書いていて変化を書くのは難しいと痛感しています。首都までの影響があるとはいえ、ちょうどいいのか、冗長なのか、それとも人間の変化ってそんな簡単に起こるものではないからむしろ急激なのか、書いていると匙加減がよくわからなくなりました。情けない話ですね。もう出して判断してもらおうくらいに思ってたので、少なくとも急ではなかったのかなと一つ答えを見つけたような次第です。人によってそれはいろんな受け取り方があるとは思います。 愛情と言ってくださるのなら、それは作品を愛してくださってる読者様がいるからこそです。それを信じられなければ続きを更新できていないので、有り難さを噛みしめています。 >その秋、冬の間、クロ(白)くんや圭くん、真弥さんたちはどうしているのかというのが気になりますね。 一貫して向こう側の動向を書かなかったのは拘りあってですが、お互いにこの短くはない空白を知り得ない状況が少し難しくて(殆ど身から出た錆)続キリを終えてまた本筋に戻っていくこれから、どう文に起こそうかという感じです。少しゆっくり考えながら、またいずれ続きを出した時、飽きずに付き合ってくだされば幸いです。 こちらこそ、辟易するような鬱展開を乗り越えて、丁寧に内容を汲み取ってくださったご感想、ありがとうございました!!(平伏) [36]
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